井上 うーん……活躍かなあ? ただ、当初はあまり張り切っていたわけでは、実はない。その前に、何回か原画をやって、意外に思うようにいかないという気持ちが強かった。ほら、すぐにでも、友永さんみたいに描けるようなつもりでいたから(笑)。何かが足りないと感じてたんだけど、その足りない何かが分からなくて、「単に自分に才能が足りないんだ」って思いかけていた。どこか冷めていて、外との交流もあまりなかったし、特定の誰かに見せてやるとか、「これを誰かが観るんだ」っていう意識もなくて――ひどい話だよね。実際には、視聴者が観ているんだけど(笑)――手応えみたいなものが薄かったな。北久保(弘之)との出会いがあるまでは(注13)。
小黒 北久保さんと知り合ったのはいつ頃なんですか。
井上 彼は、当時、ネオメディアにいたか、それともスタジオMINをみんなと始めた頃だったかと思うんだけど。ネオメディアに、俺と専門学校で同期だった伊藤浩二がいて、彼を介して知り合ったんだ(注14)。「君に会いたがっている男がいる。『ガンモ』の1話を観て感激してる」って聞かされて凄く意外だった。「え? 俺の仕事を観てる人がいるの?」という新鮮な驚きがあったな。それが嬉しくて、「じゃあ、次は、もっとびっくりさせてやろう」とか、「こんなのを描いたら、北久保はびっくりするかな」とか、意識しながら描くようになるんだよ。
『ガンモ』の1話の時は、「変じゃなければいいや」ぐらいの、冷めた気持ちだったから、ひょっとしたら、北久保達に出会わなければ、かなりテンションが下がったまま過ごしたかもしれない。
小黒 テンションが上がったのはいつ頃からなんですか。 |
(注13) 北久保弘之
劇場『老人Z』や、劇場『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の監督として知られる演出家。当時は、『うる星やつら』等の作品で、若手のアニメーターとして大活躍していた。
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(注14)伊藤浩二
主にメカ作画監督として活躍。近年の作品に『マクロス7』、『銀装騎攻オーディアン』、『魔装機神サイバスター』等。
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