うつのみや いっぱいいますね。順番なんてつけられないんですけど、森本さん、梅津さん、井上(俊之)君――リアルタイムで画を見て影響を受けたのは、この3人が大きいですね(注5)。 あと、フィルムを見て影響を受けた方と言うと、宮崎(駿)さんとか、大塚さんとか、木村(圭市郎)さん、金田(伊功)さん、なかむら(たかし)さん、友永(和秀)さん――やっぱり、名のある方っていうのは、どこか得るところがありますよね。……あ、そうだそうだ、影響を受けたと言うと、月岡(貞夫)さんもそうですね。あと、田中敦子さん。これはもう、実際に原画を見て「敵わないなあ」と思ったんですけど。
小黒 月岡さん、ですか。実際に、描いているところを直接ご覧になった事はあるんですか。
うつのみや 見た事はないですね。ただ……パラパラ漫画を見たんですよ。
小黒 パラパラ漫画、ですか?
うつのみや ええ。あれが、凄いショックでしたね。アニメーターになってすぐの頃だったんですけど、『わんぱく王子』のパラパラ漫画を見たんですよ(注6)。あれは東映動画の商品だったのかな。多分、そうだと思うんですけど。王子が熊か何かを投げ飛ばすカットの動きを、パラパラとめくって見られるようになっていたんですよ。それが、伸び縮みは入っているんだけれども、「お化け」を使った奇を衒った動きはひとつもなくて。見ていくと、「この画の次はこの画がきますか。あ、今度は、こんな画がくるのか。これがくるとは想像できなかったけれど、確かにこれですよね」という感じでね。こちらの想像の範囲を越えているんだけど、確かに正解だと思えるような、完成度の高い、それでいて、かなり面白いものだったんです。あのスタイルとしては、ちょっと見た事がないくらいの完成度でしたね。
小黒 完成度と言いますと?
うつのみや あの当時、東映長編はまだ、伸び縮みがあるスタイルで、その中でも『わんぱく王子』は伸び縮みの多い作品だったんです。でも、そうしたクラシックなスタイルを使いながらも、どこかリアルだったんです。正に、「未知との遭遇」と言うか。カルチャーショックって、ああいう事のような気がします。
小黒 なるほど。
うつのみや それと同じような感動を受けたのは――って、話が逸れちゃいますけど――その後、うめだりゅうじ君の作品を見た時ぐらいかな。
|
(注5)森本さん、梅津さん、井上君
森本晃司はかつてはトリッキーなアクションを得意とするアニメーターとして知られ、近年では監督としてミュージッククリップ等を手がけている。アニメーターとしての代表作は、『スペースコブラ』等。梅津泰臣はリアルかつ美麗な作画でファンを魅了したアニメーター。代表作は『ロボットカーニバル』、『機動戦士Zガンダム』等。近年の作品に『MEZZO FORTE』がある。井上俊之に関しては前回の「animator
interview」 を参照。 |
(注6)『わんぱく王子』のパラパラ漫画
『わんぱく王子の 大蛇退治』は、東映動画の長編黄金期を代表する作品。63 年公開。
|
|