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放映直前『TIDE-LINE BLUE』(後編)
妊婦のヒロイン。そして、飯田監督+テレコム
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■キールとティーン。双子の主人公
60億の生命と90%の陸地が、海に飲み込まれた大惨事「ハンマー・オブ・エデン」から14年。生き残った人々は、世界を立て直すために努力を続けてきた。物語の最初の舞台となるのは、津波が山頂に原子力空母を押し上げた町、ヤビツだ。主人公のキールは14歳。快活だが、サイコロを使ったイカサマが得意という、ひと癖ある少年だ。キールは、イスラという彫金師の少女に思いを寄せており、今日はバクチで儲けた金でイスラを食事に誘っていた。
その頃、ヤビツの原子力空母の中では、世界の代表者を集めて、新国連を結成するための会議が行われていた。だが、それぞれの国は、自国の権利を強行に主張して対立。会議の途中、米海軍戦略原潜ユリシーズの使者として、ティーンという名の少年が現れ、全世界に宣戦布告する。ユリシーズはヤビツに攻撃を開始し、街は炎に包まれてしまう。そんな中、キールとイスラの前に、ティーンが現れる。彼は離れ離れになっていたキールの双子の兄であった。と、いうのが『TIDE-LINE BLUE(タイドライン・ブルー)』のイントロダクションだ。
■妊婦のヒロイン
1話を観て、最も驚かされたのが、ヒロインのイスラが初登場時に妊婦であるという事だ。同じ1話の中で彼女の出産シーンもある。彼女はキールよりも2つ年上の16歳。荒廃した未来世界が舞台とはいえ、ショッキングな設定だ。これは、よくある「男に都合のいい女性像」から外したヒロインを作りたかったからだと、飯田監督が公式サイトでコメントしている。イスラが産む子供の父親は、キールではない。父親がいったい誰なのか、他人の子供を宿している彼女にどうして、キールが好意を持っているのか、それは1話の段階では、まだ分からない。
やがて、キールとイスラもユリシーズに乗り込む事になり、キールとティーンの兄弟を中心にして、物語は展開していく。「ドラマ重視で、個々のキャラクターを掘り下げていく話になる」とも飯田監督は語っている。どこまできっちりと「ドラマ」をやってくれるのか、期待したい。
また、ドラマと言えば、1話から3話まで観て気になったのが、毎回、ある描写が挿入されている事だった。「?」と思う部分なのだが、おそらく、後の展開で生きてくるのだろう。それがどんな描写かは、本編を観てからのお楽しみだ。
■飯田監督とテレコム・アニメーションフィルム
『TIDE-LINE BLUE』のアニメーション制作を担当するのは、テレコム・アニメーションフィルム。年かさのアニメマニアなら知らぬもののない、老舗のプロダクションだ。かつては『ルパン三世 カリオストロの城』『名探偵ホームズ』等の傑作を生みだし、その後、海外との合作の時期があり、近年になって『パタパタ飛行船の冒険』『双恋』『無人惑星サヴァイヴ』といった、国内TVシリーズを手がけるようになっている。
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(C)小澤さとる・飯田馬之介・バンダイビジュアル
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飯田監督は、おそらくはキッチリと画面を作り込むタイプの監督で、また、代表作の『おいら宇宙の探鉱夫』には懐かしのまんが映画テイストが漂っていた。その意味で、飯田監督とテレコムは親和性が高いのではないかと思われる。そして、ファンとしては飯田監督と組む事で、テレコムの新たな魅力が引き出される事にも期待したいところだ。
今回観た1話から3話については、ビジュアル面はなかなかの健闘。特にベテランの友永和秀が絵コンテを担当した2話が好印象だ。1話や2話に、セルフパロディのようなドタバタアクションがある。これはスタッフのお遊びか、あるいはオールドファンへのサービスか。勿論、キャラクターデザインや個々の描写は、古典的なまんが映画的であるばかりではなく、今風のテイストが入っている。
『TIDE-LINE BLUE』は、スケジュール的には、かなり余裕を持って制作を進めているそうだ。今後のさらなる充実に期待したい。
(文/アニメスタイル編集部)
■各話スタッフ(第1話〜第3話)
第1話「vol.01 Spirit 浮上する亡霊」
脚本/山田由香
絵コンテ/飯田馬之介
演出/小山田桂子
作画監督/滝口禎一
第2話「vol.02 Traitor 裏切り者」
脚本/山田由香
絵コンテ/友永和秀
演出/小山田桂子
作画監督/八崎健二
第3話「vol.03 Dhola Vira ドゥーラ ビィーラ」
脚本/山田由香
絵コンテ/矢野雄一郎
演出/小山田桂子
作画監督/中路景子
●公式HP
http://www.tlblue.com/
(05.07.06)
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