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『レイラ・ハミルトン物語』アフレコ取材
[後編]池田東陽&佐藤順一編


●池田東陽(アソシエイトプロデューサー)

―― 今回の『レイラ・ハミルトン物語』は『カレイドスター』シリーズの中で、どういう位置づけになるんでしょうか。
池田 これで本当に終わるかどうかは分かりませんが、今までTVシリーズで描けなかった事を描こうというところから始まったものですから、一応、これがシリーズの決着という位置づけにはなるかと思います。
―― そらのドラマはシリーズで描き切って、もうひとりの主人公とも言えるレイラのドラマが完結。きれいにまとまるわけですね。
池田 そうは言ってもまだ(そらもレイラも)10代なんで(笑)、これからも(キャラクターの将来には)色々あると思いますけどね。
―― レイラが主役という事で、他のキャラクターは出ないのか、と心配している人もいるかと思いますが。
池田 それはご心配なく。キャシーとかサラさんまで含めて、フルキャストでお送りします。今回、レイラさんが自分を見つける旅に出てしまうんですけれども、そらとかメイとか、レイラを慕う後輩達がガンガンに追い駆けますんで。
―― プロデューサーとして、手応えはどうですか。
池田 僕が当初想像していたよりも、青春ムービーとして、しっかりとしたものが作れたと思います。そういった意味でも、今まで51本とOVA1本でやってきたものと違っていないし、「これが『カレイドスター』です」と胸を張って言えるものになってます。正直言うと、始める前にはどうなるか分からない部分もあったんですけど、チームワークの力で『レイラ・ハミルトン物語』も『カレイドスター』として完成しました。
―― それは佐藤(順一)さんが直接、絵コンテを担当したという事も関係してる?
池田 確かにそれはありますね。一度解散したチームのメンバーが、もう一度集まるというのは難しいんですけど、今回は1人も欠けずに全員が集まって「もう1回作ろう」というかたちになったんです。そういった士気のせいでもあると思います。
―― なるほど。余談ですが、富沢美智恵さんは出ているんでしょうか。
池田 もう、お帰りになりました。
―― !? 出たんだ! 冗談で言ったのに(笑)。池田さん、これでいつ死んでもいいね!
池田 (笑)。
―― 富沢さんの役は、何なんですか?
池田 レイラが旅の途中に出会う人物で……。
―― 霊感少女!
池田 違います(苦笑)。ゲストなんですけども、重要な役どころで。レイラが迷っているところで助言を与えるいいキャラクターです。
―― 余談ついでに、さらに突っ込んでいいですか。“これ”はいつくらいからのプロジェクトだったんですか。
池田 “これ”ってコンプリートの話ですか。
―― うん。
池田 ええっと……(汗)。
―― すごい汗をかいているよ。
池田 煙草を吸ってもいいですか(笑)。(煙草を取りだして火を点けながら)……この記事、いつぐらいに載りますかね。
―― DVD発売前には掲載したいですね。
池田 いちばん初めに指名したのは(サラ役の)久川(綾)さんなんですよ。次は(そらの義母役の)篠原(恵美)さんですね。新シリーズに入って、三石さんがキャシー役になった。その3人の全部を僕が指名したわけではないんですが、その時点で「これは、もう行けるな」という確信が持てました。でも、これをやったらあからさまだなと思ったんですよ。そうしたら、音響さんが気を遣って、ドナ・ウォーカーに深見梨加さんをキャスティングしてくれた。うわ、やばい。リーチ!(笑) でも、その段階で40数話だったんで、もう出すところがなかったんですね。
―― ないですね。
池田 OVA52話でもやろうと思えばできたんですが、そういう事を優先してフィルムを作ってもつまらないので、機会があればやろうくらいに思っていたんです。出したい気持ち自体は、ずっとありましたけど、「意地でも狙ってやろう」というつもりではなかったです。
―― なるほど。太陽系には、水星とか金星とかあるんですけど、どれがいちばん好きなんですか。
池田 僕は月です。
―― あ、月なんだ。
池田 でも、いつだったか全然知らないところから電話がかかってきたんです。「もしもし」「水野です」「誰?」「水野亜美です、うぃーっす」という電話があったんですね。その時には鳥肌立ちました。俺はただのファンだ。プロじゃないと思いましたね(笑)。
―― なるほどねえ(笑)。
池田 僕はずっと月です!
―― いや、ご立派です。今回、佐藤監督の仕事ぶりはいかがでした。
池田 今回はですね、佐藤さんに音響監督もやっていただいているんですよ。
―― あ、そうなんですか。だから、今日は佐藤さんが、ブースから出たり入ったりしていたんだ。
池田 はい。脚本の段階では産みの苦しみがあったんですけれども、コンテ自体は凄い勢いで進んだんですよ。もう1回『カレイド』をできるのが嬉しいという気持ちが、佐藤さんからひしひしと伝わってきました。以前、小黒さんが某雑誌でインタビューされた時に「俺、スランプなんだ」と言っていたじゃないですか。あれを乗り越えられた理由として、またレイラが描ける、そらが描けるというのがあったと思いますよ。きっと僕とか周りのスタッフだけじゃなく、広橋さん、大原さんの存在が、佐藤さんの今回の仕事のやる気に繋がっていると思います。
―― では、最後に総まとめ的な質問を。今の池田さんにとって『カレイドスター』とはどういうものなんでしょうか。
池田 うーん。本編の言葉を引用させていただくと「新しい夢のスタート」ですかね。
―― おお、格好いい〜!
池田 私達のラストステージはまだよ……というところです!
―― ありがとうございました!

●佐藤順一(監督)

―― このOVAは、いつぐらいから話があったんですか。
佐藤 いつだっけなあ。去年だっけ。
―― 他の人は、TVシリーズ終了直後からだと言ってましたよ(笑)。
佐藤 本当? そんな昔じゃないだろ。
―― 池田さんが、秘密裏に進めていたんですかね。
佐藤 ああ、そうだった。俺より先に大原さんに相談していて、後から聞かされたんです。気持ちは分かるけど、後で聞かされるのはちょっと寂しいよね。難儀するかと思ったら、コンテは結構さっさと進んだんです。GONZOのスタジオに部屋を借りてやったんだけど、がーっと進んで。レイラさんがシナリオと違う事をどんどん喋るし、みたいな。
―― コンテを描いている時に、自然に手が動いていったんですね。。
佐藤 そうそう。「ああ、『カレイドスター』ってこういう感じだった。こんな風にキャラクターが勝手に動いていく作品だった」と思いながらやりました。
―― 佐藤さんは、52話(『笑わない すごい お姫様』)は、あまり関わってなかったんですよね。
佐藤 うん。52話は「和田(高明)さんスペシャル」のつもりだったので。和田さんがやりたい事を全力でやってもらおうというプランニングだったから。
―― じゃあ、映像の『カレイド』に関わったのは久々ですね。
佐藤 そうですね。久々です。
―― 佐藤さんとしては、レイラさんのドラマを描き足りなかった、という思いはあったんですか。
佐藤 まあね。本編の中でも相当端折ったりとか、入れられない事とかあったし。今回やっている絶食とか減量も、本来は(シリーズの)シナリオにあったんですね。それを是非やりたいというのもあった。そもそも過去まで遡ろうという気持ちは、あんまり俺にはなかったんですけど、やっているうちに「ああ、そうかもそうかも」と思って。『カレイド』って、やってるうちに色々な事が符合してくる事が多くて、今回の場合もそうなんです。そのせいで、シナリオと内容が変わってしまったかもしれないけど(笑)。今回は、本当にコンテを描いている時のノリがよかったからね。でき上がりが楽しみですよ。
―― 池田プロデューサー的には、アニメ『カレイド』はこれでひと区切りだそうですが。
佐藤 そうですね。これが終わりのつもりでやってます。池田にもそう言っていましたし。
―― もう思い残す事はないですか。
佐藤 『カレイド』に関してはそうですね。やれと言われれば、いくらでもできますけど。むしろ、みんなで、次の作品に行きたいですね。「また何かやろうぜ」という感じが強いかな。
―― なるほど。
佐藤 そう言えば、音響を自分でやったのも久々だったんですよ。先に『ARIA(The ANIMATION)』で、ちょっと自分で音響をやっていたので助かったけど……いきなりだったらできなかったかも(笑)。
―― 『ARIA』での音響は、どういうかたちになっているんですか。
佐藤 『ARIA』は音響監督にあたる事を自分でやっているんです。
―― そうなんですか。『カレイド』で音響演出をやったのは、これが初めてなんですね。
佐藤 初めてですね。「指示が分かりにくくてごめんなさい」みたいな。鶴岡(陽太)さんは、さっくりと分かりやすくやるじゃないですか。自分でやると、意外とそうはならなくて「何をわけの分からない事を言ってるんだよ、俺」みたいな。それで(演技を)やれるんだから、みんな、凄いねえ。
―― 佐藤さんが、自分で声の演出もやりたいと思って、やられたわけなんですよね。
佐藤 そうですよ。音響監督さんを通しての伝言になると、なかなか指示が届かないとこもあるじゃないですか。自分にしか伝えられないような微妙な事は伝わらない。普通はベーシックなところをきちんと抑えておいて、あとは音響監督さんに判断して録ってもらえばいいんだけど、自分で音響監督までやれば、もう少し細かなところまで突っ込めるかな、みたいな。
―― やってみて、手応えはいかがでしたか。
佐藤 仕上がりは完成しないと分からないですけど。「こうしたい」と思ったところまで、みんな(の演技が)届くのは凄いなあと思いました。勿論、今までずっとやってきた『カレイド』だから、そこまでできたんだろうとは思うけど。
―― 今回、池田プロデューサーの野望を達成されたらしいですが、それに関して佐藤さん的にはいかがなんでしょうか。
佐藤 あ、知っているんだ(笑)。いやもう、全面協力しましたよ!
―― (笑)。全面協力ですか。
佐藤 コンテを描きながら、なんとなく富沢さんっぽいキャラ作りをしてみたり! 大体こういう感じにしておけば(富沢さんが)合うんじゃないかとか。
―― 素晴らしい。アニメの歴史の中に、たまにはこういう美しい話があってもいいですよね。
佐藤 そうだよね。夢が叶った。いいじゃないですか。
―― 願い続ければ夢が叶うんだ。
佐藤 叶うんですよ(笑)。
―― 全国のアニメファンは好きな事やりたかったら、プロデューサーになれ。
佐藤 そうそう。
一同 (笑)。
佐藤 そういった事を含めて『カレイド』はやっていて、楽しいよね。



●DVD『カレイドスター Legend of phoenix 〜レイラ・ハミルトン物語〜』
※ネット先行版DVDは、2005年12月22日に発売。通常のDVDは、2006年1月27日にリリース。
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●公式サイト
(最新OVA『カレイドスター Legend of phoenix 〜レイラ・ハミルトン物語〜』の情報もこちらで)
http://www.kaleidostar.jp/

●過去の関連記事
「池Pの すごい? カレイドスター回想録」 第2.5回 「レイラ・ハミルトン物語」完成


(05.11.28)

 
 
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