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第3回 
井上・今石・小黒座談会(3)


今石 次は、『彈劾凰』。もしかすると、作品的には否定的な方もいらっしゃるかもしれませんが、大張正巳にハマってしまった世代としては挙げざるを得ない。当時、金田系の新しい形だと思っていたんです。
井上 それはルーツは知った上で観てたの? 『彈劾凰』から入ったというわけではない?
今石 ええ、知った上で観てましたね。子供の頃、『鉄人』とか『ゴッドマーズ』とかを観ていて。それで高校生ぐらいが『彈劾凰』。多少、庵野さんや板野さんのラインも入った描き込み系でもありますし。レトロものを最初にやったのも『彈劾凰』だったんですよね。『トップをねらえ!』より半年ぐらい早かった。それを考えると、自分の中では結構大きい。『アベノ橋』でも、無意識にパクっていたかもしれん、というところもあったりして。ロボットアニメの歴史の中では、すでに外せないのではないかと思っているんです。
―― 次が『ロボットカーニバル』。
今石 これはさっきアニメ様が喋ったので、大体いいんですけど。
井上 特にどれなの?
今石 個人的な好みで言えば北久保さんのやつです。
井上 北久保の計算どおりという感じだったよね。他にないものを盛り込んでいる。
今石 そうなんですよ。あの中で1人そういう違う事をやってるのが凄い、というのもある。1人だけ、そうした事を計算しているんですよ。
井上 作画的にも十分楽しませるし。
今石 他の作品もいいんですよね。森本さんとか。でも、これ以前のものは僕は逆に分からないんですよ。出崎作品やってる時の森本さんって。
井上 そこは俺に任して(笑)。
小黒 じゃあ、そこは井上さんに後で語ってもらうとして。次は『迷宮物語』ですか。特にどれなんでしょう。ちなみに僕は「ラビリンス*ラビリントス」がいいんだけど。
今石 僕は申し訳ないけど「工事中止命令」ですね。
小黒 それはどうして?
今石 『AKIRA』より大友克洋さんっぽい。
井上 大友さんの画風が一番上手く形になったのが「工事中止命令」だろうね。
今石 作画的にも、なかむらさんとか森本さんの密度が濃いんじゃないかなと思うんですよ。
井上 そうだね。大友アニメとしては一番いい形だろうね。俺からすると、森本アニメとしてはポイントが低いんだけど。なかむらさんの作画が素晴らしい。
小黒 あのロボットがカタカタするところも、なかむらさんがやってるんですか。
井上 うん、確か。全原画に近いのかな。動画が上がった後で、なかむらさんがブレを足したって聞いたよ。具体的にどうやったのかまでは聞いてないけど。担当としては、大友さんのシーンなんだけどね。
今石 あ、そうなんですか。
小黒 大友さんがやったのって、数カットでしょ?
井上 いやいや、もっとやってるよ。確か40カットぐらいって聞いたよ。確認はしていないんだけど、工場で煙を噴くカットがあるんだけど、タッチの違う煙があって、なかむらさんでもないし森本さんでもない。おそらく、大友さんだよね。他にも、食事してネジを吐き出すところは大友さんだし。これは生の原画を見たんだけど、崩した顔とか、転がるナットとかの粘り方が新鮮だった。
小黒 ああ、粘っこいですよね。ちょっとディズニー的で。
井上 大友キャラって柔らかく動かしていいんだ、って驚いた。大友キャラって、骨格が変わらないという印象があるんだけれど、そうじゃないんだ、って。
小黒 あと、「工事中止命令」は背景がいいですよね。
井上 スチールで見ると弱いんだけど、フィルム映えするように計算されてる。
今石 フィルムだと、えらい密度が高く見えますよね。
井上 色彩の設定も、大友さんらしさを一番理解していたように思うよ。
―― 次が『トップをねらえ!』。
小黒 これは僕も選んでもよかったと思う。
今石 『トップをねらえ!』は言わずもがなですね。マニア向けに作っておきながら……
井上 そこに留まっていない。
今石 ええ、ちゃんと映像として面白くなってる。
小黒 いや、その言い方は、間違ってる。
今石 は?
小黒 アニメオタクを極めた、が適切では?
井上 極めれば、ここまでなるっていうね。
今石 アニメおたくとしても極めてるんだけど、映像おたくとしても極まってるから、映像として観てて気持ちいい。
井上 おたく的なものって、よくないものの代表みたいに言われるけど、本当におたくが楽しめれば、かなり多くの人が楽しめるものになるはずなんだよね。
今石 それを『トップ』が示してくれたという。実はね、『彈劾凰』を観てうかれていた僕は、『トップをねらえ!』を観て凄いショックだった。『彈劾凰』は好きな作品なんですけど、『彈劾凰』を観て、なんとなく物足りなく感じていたところもあるんです。それが、全部『トップをねらえ!』にはあったんですよ。
小黒 なるほど。GAINAXに入れてよかったわけだ。
今石 でも、初めはスタジオG1にスケッチブックもって行こうかな、と思っていたぐらいですよ。そういう意味で、『彈劾凰』と『トップをねらえ!』は、僕の中では2大アニメなんです。
―― ちょうど、マニア向けのアニメが絶滅しかけていた時期ですからね。
小黒 今、「スーパーロボット大戦」で遊んでいる人には分からないかもしれないけど、あのロボット枯れの時代にね、『彈劾凰』が出た喜びというのは確実にあったわけだよね。さて、次は『ブライガー』OP。
今石 これも言うまでもないですね。
小黒 まあ作画の密度だけで言ったら、最近の『とっても!ラッキーマン』OPの方が上なんでしょうけど……。
今石 でも、当時の勢いというものも含めてね。
小黒 金田さんの仕事の中でも一番芸術に近いものですよ。
井上 音楽とのマッチングもよかったよね。
小黒 あの、人間が人間の形じゃなくなるというのが大事な事ですね。
今石 あとは、全てをエフェクトで描くっていうのがまたよくて。
小黒 そうそう!
井上 金田さんって、変な画を描く人と思われているかもしれないけど、ちゃんとしたクロッキーも巧い人だよね。あのOPは、そういう巧い部分、体のラインの柔らかさなんかが上手くでている。金田さんの一番いい時期というか、俺が好きな時期だよね。
今石 『ブライガー』のOPを観ると、山下さんはここから影響受けたんだろうな、ってしみじみ感じますよ。
小黒 と、今石君が遡ったような事を今のファンにもやってほしいよね。
井上 今、担当が細分化されてるから、個人の仕事が見えてこないのが残念なんだよね。昔は、誰がどこをやっている、というのは分かりやすかった。
―― 次が『機甲戦記ドラグナー』のOP。これは大張さんですね。
今石 ええ。『ブライガー』からの流れという意味で。『ブライガー』を観てアニメーターになった大張さんが、『ドラグナー』で『ブライガー』のような仕事をした。
小黒 なるほど。で、『県立地球防衛軍』のOP。これはどうして?
今石 これは今では話題になる事が少ない田村英樹さんを取り上げたいからなんです。
小黒 ここで説明しておくと、今石君は田村“萌え”なんですよ。
井上 田村英樹さんなら、もっといいのがあるんじゃないの?
今石 一番まとまってるのはこれなんじゃないかな、と思うんです。個人的には、『(幻夢戦記)レダ』の原画が一番好きなんですけど。一原画としてやってるんで。
小黒 田村さんのどういうところがいいの? 金田系だからいいの? 華があるところがいいの?
今石 華がありつつ金田系であるところがいいんです。山下さんだと、可愛い女の子が出てこないですよね(笑)。金田系と美少女がくっついたものなんですよ。最近当たり前になってる、“おたく絵”の発祥は田村さんではないかという気がしているんですよ。
―― 『剛Q超児イッキマン』のOP。
今石 これはもう、上妻さんですね。
小黒 あの指パチンがいいよね。
今石 『イッキマン』は上妻作画の数少ない代表作だと思うんですよ。ちゃんと気持ちよさがある。
井上 変な意味で浮いてないよね。感覚的なタイミングだから、オープニングに合うのかもしれないね。俺、上妻さんだと、『レダ』も好きなんだよね。鎌振り上げて襲いかかってくるやつから逃げて、花か何かになったところから始まって、量的にもボリュームがある。
小黒 どんどん行こう。『ガンダム0080』。いきなり普通だね。
今石 普通ですか? 磯光雄パートのみ。
井上 私もそこしか観ていません。
小黒 1話は冒頭の戦闘シーンだけど、4話はどこなの?
今石 4話の後半で、ケンプファーをガンダムがバルカン撃って倒すところです。その頃、僕は浪人生か大学生で、ややアニメ離れをしていたんですよ。で、「最初の『ガンダム』」以外は『ガンダム』じゃない、「富野ガンダム」じゃない『ガンダム』なんて観るか、と思っていた時に、TVCMで、1話のあのハイゴッグがズシャアアアアっていうのが流れて。エライこっちゃ、これは観なければ、と思って観たんですね。その頃は、誰がやっているか分からないんですけどね。
井上 磯君が露出し始めた最初だよね。あのインパクトは凄かった。ただ、不思議なのは、後に色んな人に勧めたんだけど、反応がまちまちなんだよね。「どこがいいのか分からなかった」って言う人もいるんだよ。「本当に井上さんはそれをいいと思ってますか」って訊かれた事もある。なぜこんなに評価が分かれるのか、いまだに謎なんだ。
今石 微妙にリミテッドだからですかね。僕はずーっと誰がやってるか分からなくて。
井上 いつ分かったの?
今石 GAINAXに入って、『エヴァ』の1話を観た時に、「1話のここ、誰ですか」って会社の人に訊いたら、「『0080』のあのシーンの人だ!!」って。
井上 その時期まで謎だったんだ。『ガンダム』から『エヴァ』の間に、「磯アニメ」って観ていないの?
今石 ちょうどその頃は、「作画で観る」というのは、ちょっと休んでいた頃で。
井上 あなたほどの人が?
今石 時代的にも作画アニメが沈んでるっていうか、世間的にも金田アニメの頃ほど作画フィーバーってわけじゃなかったでしょう。アニメ雑誌がアニメーターを取り上げるような事もなかったし。それで、劇場版『パトレイバー』なんかを観て、「やっぱり演出がよくなければアニメは駄目なんだ」って思い始めていた頃だから。だから、例えば『AKIRA』の井上さんだとか、あのぐらいじゃないと、別にもう観てもなんともない、なんて思い始めていた。そんな時だった。ところが、磯さんのシーンはほとばしってましたよね。
井上 久々に見た大物だって感じだね。
今石 いくらコマ送りしても飽きたらんという感じでしたからね。
小黒 磯さんのアニメってコマ送りして分かるの?
今石 そもそもパっと見て「あれ」って思うわけじゃないですか。
小黒 うん、それは思う。
今石 それでコマ送りして、「ああそうだろうな」って納得するわけです。コマの使い方とか。オバケがスっと一瞬入る絵の密度とか、立体感の取り方とか。
井上 衝撃だったね。
今石 衝撃でしたね。僕の中のアニメ冬の時代に、作画だけでレンタルせねばと思った希少な作品なんですよ。
井上 俺はうつのみやに「これ、凄いのがいるよ」って言われて見せられたんだよ。その後『ガンダム』の原画を見せてもらった事があるんだけど、その描き方がそれまで知っていたどの描き方とも違ってた。
小黒 違うと言うと?
井上 ポイントを上手く押さえるような描き方ではない。動きを全部絵にするっていう描き方。それまでみた原画の描き方はどれも、どんなにいいポイントをつくか、ポイントでどんなにいいポーズを描くかっていうものだったんだよね。
今石 とにかく1話の磯パートはもう、失神するぐらい凄かった。
井上 それまで、ロボットアニメで巨大感を演出しようなんていう人はかつていなかった。金田さんは天然でやってるけど、計算で、自覚しながらそういう事をやった人って、びっくりするぐらい少なかったんじゃないかな。あの巨大さは凄いよね。
小黒 次が『ビスマルク』。沖浦さんとアニメアールですね。
今石 ええ。
井上 これは若い世代ならではですね。
小黒 オーガニックフォーメーションのバンクって、アニメアールなの?
今石 最初は普通だったんですけど、その後アールの回でバンクを全部描き直しちゃって、それを使ったり使わなかったりしてるんだと思います。
小黒 なるほど。
今石 まあ沖浦さんという意味では『レイズナー』もあるんですけど。
井上 でも、沖浦登場って感じでは『ビスマルク』だよね。
今石 最終回が初作監ですからね。
井上 若いよね。18歳ぐらいでしょ、きっと。
今石 やっぱり沖浦さんは『人狼』だけではない(笑)。……と言うと、怒られるかもしれないけれど。『ビスマルク』って「80年代の『ガイキング』」と言うか、お話のどうでもいい感じと、作画の暴走とがあって、かなり好きだったんです。最終回も、敵の首領が実はロボットだったとか(笑)。あのマントつけた格好悪い主役ロボットが沖浦さんの回だと格好よく見えるところもいいですね。
小黒 次が『ポップチェイサー』。
井上 『ポップチェイサー』!? 入るんだ……。
小黒 やっぱり摩砂雪さんの回り込みですか?
今石 摩砂雪さんの回り込みもいいでしょうし……。
小黒 じゃあ、庵野さんのミサイル?
今石 庵野さんは、自分はミサイルじゃないって言ってましたよ。
井上 朝、宿がドッカーンと爆発するところだよ。引いたショットで宿がドッカーン。そこが庵野さんだったと思うけど。
今石 マニアとしては避けて通れない作品ではないかと思うんですよ。
―― スタッフ的にも『Gu−Guガンモ』からの流れですよね。北久保さんが、『Gu−Guガンモ』の巧いスタッフを集めたわけですよね。
井上 時期的にはそうだよね。全くダブってるから。『ガンモ』やりつつ、ひいひい言いながら夜中描いてたよ。
小黒 まあ裏『ロボットカーニバル』みたいな形だね。
今石 北久保さんの最初の監督作品という意味でも、僕は好きなんです。
―― 『マシンロボ クロノスの大逆襲』。
今石 これはもう、羽原(信義)さんも、大張さんも、松尾(慎)さんも、佐野(浩敏)さんも、田村(英樹)さんも、合田(浩章)さんもいて、さらに大平(晋也)さんもやってるんですよ。
井上 ああ、大平君まで山下さんっぽいの描いてるね。
今石 これもまた無責任なアニメで。これ以上無責任なロボットアニメはないだろうという。80年代にもなって、もう回を追うごとにディテールが変わっていくんですよね。そこがいい。もう葦プロ大好き人間ですから、僕は。
小黒 で、次は「DAICONIV OPアニメ」。これはまあ見る機会はないだろうけど。
今石 商品化は難しいでしょうね。という事で、ここから番外ですね。
井上 剣の乱舞する部分は庵野さんだって聞いたけど。
今石 正にそうでしょう。
小黒 上手に板野サーカスを消化しててね。
井上 あ、そうなんだ。庵野さんも、板野さんがルーツになってるの?
今石 ああ、そうだと思いますよ。
井上 そうなんだ。俺は全く同時なのかと思ってた。
今石 いや、同時じゃんないんですよ。『イデオン』観て、「DAICONIII OPアニメ」を作って、それから「DAICONIV OPアニメ」を作るために、プロの技術学ぼうという事で、『マクロス』に参加したって聞きましたよ。
小黒 庵野さんは板野さんから遠近を学んだ、と聞いた事があります。
井上 そうだったんだ。俺は影響なくああいう事をやって動かしたのかと思ってた。
―― 自主制作アニメの『じょうぶなタイヤ』の頃は確かにああいう遠近はないですよね。
小黒 友永系だよね。
今石 ドアが開いて水が出てくるところなんかは、宮崎駿ですね。
井上 じゃあ、例の核爆発のルーツもあるのかな?
今石 あれのルーツは実際の映像だと思いますよ。
井上 ああいうのを、上手くアニメにした最初で最後じゃないかな。
今石 あれが最初で……ああ、最後かもしれませんね。
井上 完成されていると言うか、完成されすぎているからね。あれより上は……。
今石 確かに、全部同じタイミングにして同じ枚数の原画を描いても駄目なんですね。
井上 まあ本人ももう描けないかもしれないし。
今石 そういうのは、技術じゃないですね。本人のその時の気分というか。高まりという、そういうものですからね。
―― 番外のふたつめは『北斗の拳』ですね。
小黒 どの回ですか。
今石 まずはカナメプロの回。
井上 あったねえ。森本さんもやってるでしょ。
小黒 やってますね。クレジットはないけど。
今石 ああ、そうなんですか。あとは梅津さんの回。
井上 その回でやってるんだよ。「あたたた」が梅津さんで、歯剥き出した奴がはじけるのが森本さん。
今石 あの回は、佐野浩敏さんの回想シーンもよかったですね。他にも、田村英樹さんとか合田さんとか。いのまた(むつみ)さんとかがやってる回があって。
井上 板野一郎回もあった。
今石 ええ。なんと言っても板野回の結城信輝パート。今までで最も原哲夫っぽく見える影が入っていて、なおかつアニメであんなに筋肉を描いたのも初めて。それもタッチじゃなくて、立体的に描いてみせた。
小黒 合作に参加した成果でもあるんだろうね。その回って、確か先週までのあらすじ部分も全部描き直していたよね。やる気満々な感じもいい。
今石 やっとラオウと戦って決着がつくって回だったから、気合いの入り方が凄かった。あと、桜井美知代さんが作監したスタジオジャイアンツの回があって。
小黒 Aパートの原画がジャイアンツでBパートが桜井さんだったよね。桜井さんの修正がまた濃いんだ、これが。
今石 桜井さんがこんな画も描けるんだ、ってショックだった。
小黒 この時の『北斗の拳』の制作担当は一体どんなつもりだったのか、気になるよね。ポイントの回で、一度しか参加しないような人が入ってくる。一種のスターアニメーターシステムをとっていた。
今石 で、次が『ガイキング』。
小黒 『ガイキング』はね、日本のアニメ史の中でも一番パワフルかつ、いい加減なロボットアニメじゃないかと思うんだけど。同じプロットが連続するとかね(笑)。
今石 アニメはこのくらい大らかでもいいのかもしれないと思いますね。
井上 今石君的にはやっぱ金田さんなんでしょ?
今石 勿論、それもあるんですけど。全体としてもよいと思いますよ。その大らかなところにも惹かれます。
小黒 『ガイキング』を観た後に『マジンガーZ』とか『ゲッターロボ』とかを観ると、なんて真面目に作ってるんだろうと思うよね。
今石 真面目なんですよね。『ガイキング』は今だったら一所懸命作る“隙間”みたいなものが天然で作られてる。
小黒 今石君がやった『アベノ橋魔法☆商店街』3話が目指してたのって、例えば『ガイキング』でしょ。
今石 まあ『ガイキング』ですよね。
小黒 常に『ファイトだ!! ピュー太』と『ガイキング』を目指してる。
今石 それが基本ですね。
井上 はあ……。
―― あ、溜息が井上さんから(笑)。
井上 いや、これを読んでいる人が何か誤解しなければいいと思って(苦笑)。
今石 そこは番外、という事で。で、次が『AKIRA』の井上パート。
井上 これは外しませんか?
今石 いえいえ。『AKIRA』の中で、僕が原作を読んだ時のイメージが再現されてたのが、井上さんが原画やってたパートだったんですよ。大友さんのシャープな感じとか、疾走感のリアリティとか、殴った時の痛そうな感じとか、地面に転がった時の痛そうな感じが唯一と言っていいぐらい再現されていた。勿論、『AKIRA』は全体としてクオリティは高いんだけど、僕にとっての『AKIRA』は井上パートなんです。僕にとってのリアル作画の幕開けっていうのは、ここなんです。それに、『Gu−Guガンモ』でああいう絵を描いてた井上さんが、大友さんのこういう絵を描けるっていうのもまたショックだった。しかも絵柄が変わってるのに、井上さんだって事が分かるわけですよ。シャープさというか、きっちりした感じがちゃんとつながっている。
小黒 で、『マクロス』から「パイン・サラダ」。
今石 板野さんの『マクロス』の中の仕事としてはやっぱり一番凄かったのではないかと。
小黒 まあ、確かに板野さんの仕事でどれかを選ぶとなると「パイン・サラダ」だろうね。
今石 ですよね。壮大なアクションはやはり青空の下でやるのが一番気持ちいいのではないかと思うんですよ。
小黒 宇宙じゃダメなの?
今石 いや、やっぱり、青空ですよ。板野サーカスが最初に極まった瞬間だった。ミサイルや飛行機をカメラが追っていく……という、ああいうイメージが固まったのがこれだったんじゃないかって感じですね。
井上 原点になる表現を見つけた時って、やっぱり力があるんだよ。それは今から観返しても、想像力働かせて観れば、それが感じられるはずだけどな。
今石 当時はやっぱり『マクロス』全体が好きだったわけだけど、観返してみると、ここが一番凄いじゃん、格好いいじゃんって思えるんですよ。「愛は流れる」の方が密度は凄い気がするんだけど、純粋に板野サーカスとして純度が高いのはこれかなと思う。
―― というところで、今石さんの20本は終了です。
 

■「第4回 井上・今石・小黒座談会(4)」へ続く

(02.07.05)

 
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編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
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