アニメ様365日[小黒祐一郎]

第110回 あの頃の日本サンライズ

 1982年には『戦闘メカ ザブングル』の放送が始まっているが、『ザブングル』に触れる前に、この作品を制作した日本サンライズ(現・サンライズ)について書いておきたい。この頃の日本サンライズは、アニメファンにとって、ワクワクする存在だった。1970年代からロボットアニメを多く手がけ、傑作、意欲作を手がけてきた同社が、より充実した作品を連発するようになっていた。『機動戦士ガンダム』のヒットの後で、会社として勢いづいていたのだろう。
 他社にも人気作はあったが、当時の日本サンライズは別格だった。今のアニメファンにとってのGAINAXや京都アニメーションに近いだろうか。今でも、僕と同世代のアニメファンにとって、この会社は特別な存在だろうと思う。同社が特別な存在になった理由のひとつが、この時期の作品群だ。具体的に、1982年と1983年のタイトルを並べてみよう。『クラッシャージョウ』以外は、全てロボットアニメだ。

1982年〜1983年の日本サンライズ作品
1982年
  • TV『戦闘メカ ザブングル』
  • TV『太陽の牙ダグラム』(放映開始は1981年)
  • 劇場『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』
  • 劇場『伝説巨神イデオン 接触篇』
  • 劇場『同 発動篇』
1983年
  • TV『聖戦士ダンバイン』
  • TV『装甲騎兵ボトムズ』
  • TV『銀河漂流バイファム』
  • 劇場『クラッシャージョウ』
  • 劇場『ザブングル グラフィティ』
  • 劇場『ドキュメント 太陽の牙ダグラム』

 1982年に関しては、TVでは、西部劇的な世界を舞台に、エネルギッシュなキャラクター達がぶつかり合う『戦闘メカ ザブングル』があり、シブ好みのタイトルとして『太陽の牙ダグラム』があった。劇場作品では、映像美を堪能できた『めぐりあい宇宙編』があり、インパクト抜群の『発動篇』があった。
 1983年にはTVで『聖戦士ダンバイン』『装甲騎兵ボトムズ』『銀河漂流バイファム』が始まる。この3本の並びが素晴らしい。『ダンバイン』はヒロイックファンタジー的な世界観のリアルロボット、『装甲騎兵ボトムズ』はミリタリー系統のロボットアニメの最高峰、『バイファム』は宇宙を舞台に子供達の日常的なドラマを展開させたロボット版「十五少年漂流記」だ。見よ、このバラエティに富んだラインナップを。
 他社作品に目を向ければ、アニメファンの嗜好に合った作品という事なら『六神合体ゴッドマーズ』や「J9シリーズ」があったし、『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』の後継作品としては『超時空要塞マクロス』があった。しかし、それでも、日本サンライズの作品には、日本サンライズの作品にしかない魅力があった。
 その魅力を言葉にするのは難しいが、この時期の日本サンライズが、ロボットアニメとして成熟した作品を作っていたという事なのだろう。マニアックな方向での成熟である。また、それぞれのタイトルが、それまでになかったコンセプトで作られており、しかも、そのコンセプトがシリーズ通じて貫かれているのが素晴らしい。ここまでオリジナル作品を作り続けてきた日本サンライズだからこそ、できた事だ。世界観の構築や、各話のゲストメカにいたるまでの凝ったデザイン等、細部の作り込みも観ていて楽しかった。
 この時期の日本サンライズの作品は、主題歌も充実している。名曲揃いだ。会社や作品に勢いがあると、歌もよいものが生まれるのだろう。

第111回へつづく

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(09.04.20)