アニメ様365日[小黒祐一郎]

第209回 『魔法の妖精 ペルシャ』

 『魔法の妖精 ペルシャ』は、『魔法の天使 クリィミーマミ』に続くスタジオぴえろ(現・ぴえろ)の魔法少女シリーズ第2弾。主人公のペルシャは、アフリカで育ったターザンみたいな女の子だ。演じたのは冨永み〜なで、これは彼女の代表作だろう。『クリィミーマミ』の俊夫にあたる男の子は2人いて、学と力。彼らは双子だ。放映されたのは1984年7月6日から1985年5月31日。メインスタッフは前シリーズから一新されており、シリーズディレクターは、これが初監督となる安濃高志、構成は富田祐弘、キャラクターデザインは岸義之。主人公ペルシャのキャラの立て方についても、富田祐弘らしさが出ていたと思う。この作品はオリジナルではなく、青沼貴子の「ペルシャがすき!」という少女漫画が原案になっている。ただし、その漫画は魔法ものではない。アフリカからやってきたペルシャを主人公にしたコメディだ。アニメではそれに魔法の設定を付け足して、魔法少女ものにしてしまったのだ。
 前作『クリィミーマミ』に比べると、対象年齢は少し下がった感じだった。僕は毎週観ていたし、それなりに楽しんではいたけれど、個々のエピソードは、ほとんど記憶に残っていない。オタク的な引っかかりがあまりなかったためだろう。ペルシャは「やーの、やーの」「……ですの」「うっすらぱー」といった独特の言葉づかいをするのだが、放映開始時は、その喋り方にちょっと馴染めなかった。
 DVD BOX 1の解説書には、魔法に関わる設定の大部分が富田祐弘のプランニングであり、安濃高志の演出志向は「ペルシャ自身の日常描写や心理表現に重きを置いたもの」で、富田の構想とは相反していたとある。そして、シリーズ前半の富田カラーから後半の安濃カラーに移行した事で「主人公・ペルシャの精神的成長が、絶妙の機微をもって描かれていったことは間違いない」と書かれている。ちなみにこの解説書を編集したのは、編集プロダクションたるかすの高橋和光だ。「TVアニメ25年史」の解説には「また後半では、ペルシャの少女としての心の揺れが繊細に描かれており、次作『マジカルエミ』で完成される安濃高志演出の萌芽が見られる」とある。確かに言われてみれば、シリーズ後半は内容が落ちついた印象があるし、終盤の雰囲気は『マジカルエミ』に近いかもしれない。だけど、それを富田カラーから安濃カラーへの移行と考えた事はなかった。自分はそこまでディープな目線で『ペルシャ』を観ていなかった。
 さっぱりとした感じの口当たりのいい作品だったという印象はあった。この原稿を書くにあたって、DVDで10数話分を観直してみたのが、その印象は変わらなかった。特に最終回の終わり方が気持ちいい。だけど、お目付役だったカッパのゲラゲラ、プリプリ、メソメソが、最終回で人間の姿になるのは、すっかり忘れていた(人間になった3匹のルックスが凄まじいインパクトだ)。
 忘れていたと言えば、力のガールフレンドの御友小夜は、『クリィミーマミ』のめぐみから引き続き、島津冴子が演じている。小夜が、めぐみと同じように力を殴ったり、平手打ちしたりしているのも覚えていなかった。同じキャラクターが引き続き登場しているようで可笑しい。声優で言えば、『クリィミーマミ』で俊夫を演じた水島裕が、力役にキャスティングされている。彼はこの後の『魔法のスター マジカルエミ』『魔法のアイドル パステルユーミ』でも主人公の相手役を演じ、同シリーズになくてはならない存在となる。僕にとっては、スタジオぴえろの魔法少女シリーズでは、亀山助清の名バイプレイヤーぶりも印象的だ。『クリィミーマミ』で木所を演じた彼は、『ペルシャ』ではカッパのメソメソ役だった。そのように、連続して同じ役者が似た役をやった事で「シリーズ感」が出ていたというのもあったのだろう。
 『ペルシャ』の作画に関しては、高倉佳彦、洞沢由美子といった若手作画監督の活躍が印象的。特に、高倉が所属していたじゃんぐるじむが担当していたエピソードは、デフォルメが効いたポーズと元気いっぱいのアクションで目立っていた。魔法少女ものとしてはアクが強い作画ではあるが、主人公がアクティブな『ペルシャ』には合っていた。

第210回へつづく

魔法の妖精 ペルシャ
DVD COLLECTION BOX 1

カラー/567分/ドルビーデジタル(モノラル・一部ステレオ)/片面2層×4枚/スタンダード
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(09.09.11)