第214回 『CAT'S EYE』(第2期)
『CAT'S EYE』第1期は、1984年3月に終了。半年の休みを挟んでスタートしたのが、今回取り上げる続編シリーズだ。放映されたのは、1984年10月8日から1985年7月8日。全37話。シリーズディレクターは、こだま兼嗣に交代。これが、後に『CITY HUNTER』や『名探偵コナン』を手がける彼の初監督作品である。第1期は杉野昭夫がキャラクターデザインで、平山智が作画監督だったが、第2期は平山智がキャラデザインも兼任。メインキャラの造形も大きく変わっており、目が大きくなり、シャープな印象のデザインとなった。
オープニングとエンディングは、今回も凝った作りで、オープニングはセクシーさが倍増。特に瞳がエクスタシーを感じているイメージの破壊力は凄まじいものだった。友達と笑いながら「いくらなんでも、今回はやりすぎだろう!」と話したのを覚えている(僕が構成を担当した『CAT'S EYE』第2期のバラ売りDVDでも、全巻のパッケージで、オープニングのカットをメインビジュアルに使用した)。エンディングでは、踊っている三姉妹のシルエットの映像が使われている。シルエットが、実写なのかどうかずっと気になっていたが、『CAT'S EYE』DVD関連の仕事で平山智に話をうかがったところ、あれは実写で撮った映像をアニメーターがトレスしたものだそうだ。おそらく第1期のエンディングも同じ手法だったのだろう。
第1期と第2期を細かく比較した事はないが、第2期のストーリーは、コメディ色が強くなった印象だ。「この人に話を聞きたい」で、こだま兼嗣に登場してもらった事があり、その時に『CAT'S EYE』第2期についてもうかがっている。こだま兼嗣は『CAT'S EYE』について、思うように作品をコントロールできず、「監督として、ほとんど何もできなかったという記憶しかないんです」と語っているが、第2期の明るいタッチは、彼のカラーが反映されたものだろうと思う。
演出的な事で言うと、第2期は、構図の取り方が洗練されたものになっている。ごく普通の会話シーンでも、妙に構図が決まっているのだ。前述の「この人に話を聞きたい」では、絵コンテについても聞いている。こだま兼嗣は、自身の絵コンテについての考え方として「基本的に見せたいものは真ん中で見せる。分かりやすい画面。カメラは人間の目の高さとか肩の位置に揃える」と語っていた。それは演出を始めた頃から変わらないスタンスなのだそうだ。つまり、ケレンミを排したスタンダードな画作りだ。第2期はそういった正攻法の作り方で、きっちりと作ったのがよかったのだろう。
傑作エピソードも、こだま兼嗣が演出を担当し、彼が所属していたスタジオイルカが作画を担当した回に多い。僕が好きなのは7話「おいしい生活」と25話「気まぐれスクランブル」だ。「おいしい生活」では前回から俊夫が、瞳達の家に居候しており、このままでは怪盗としての活動に支障をきたす。一計を案じた三姉妹は、俊夫を追い出すために、彼に対してお色気攻撃を開始するのだった。粗筋だけ見ると、ベタベタな話と思われるだろうが、都会的でスマートなコメディに仕上がっている。泪のお色気シーンも見どころだ。「気まぐれスクランブル」ではゲストキャラクターの新米婦警が、俊夫に片想いをする。その婦警に俊夫達が振り回される様子を描いたエピソードで、彼女の奔放なキャラクターが楽しい。
こだま兼嗣演出回以外だと、課長と浅谷からコンピュータのパスワードを聞き出すために、泪と愛が悪戦苦闘する19話「犬鳴署三重奏」や、浅谷や不良少女が、男装した瞳に一目惚れしてしまう33話「キャッツにハートブレイク」等が印象的。最終回「愛のカーテンコール」も、いいエピソードだった。愛の文化祭で、俊夫達がそれぞれが自分の役を演じる事になる。その劇で、俊夫は瞳にプロボーズをし、さらに、彼はキャッツの正体が瞳である事を知ってしまうが……。俊夫が秘密を知ってしまった場面はドラマチックで、かなりの盛り上がり。おそらくは本編ではできなかった「2人のドラマのクライマックス」を、劇中劇のかたちでやったのたろう。粋な最終回だった。
僕は『CAT'S EYE』で関しては、第1期よりも第2期の方が好きだ。明るいところと、全体の垢抜けた感じがいい。
第215回へつづく
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(09.09.18)