アニメ様365日[小黒祐一郎]

第215回 『GU-GUガンモ』その1

 1984年のTVアニメで、僕が『とんがり帽子のメモル』の次に熱中したシリーズが『GU-GUガンモ』だった。ただし、『メモル』と違って『GU-GUガンモ』を支持していたのは、アニメファンの中では少数派だったはずだ。僕がどのくらい『GU-GUガンモ』が好きだったかというと、資料を集めて、スタッフにインタビューして同人誌を作ってしまうくらい好きだった。その同人誌を作る過程で、井上俊之、志田正博、摩砂雪といった方々に初めて会った。特に、井上俊之との出逢いは、僕に大きな影響を与えるのだけれど、それはまた別の話。
 『GU-GUガンモ』は『さすがの猿飛』の後番組で、原作は『さすがの猿飛』と同じ細野不二彦。アニメーション制作は東映動画(現・東映アニメーション)だった。放映されたのは、1984年3月18日から1985年3月17日。タイトルになっているガンモとは、人語を解するスニーカーを履いた鳥だ。佃半平太の家に、ガンモが転がり込んできた事からはじまるドタバタを描いたホームコメディである。原作は「週刊少年サンデー」に連載されたもので、細野自身も語っているように(最近では「少年サンデー1983」というムックでコメントしていた)『オバケのQ太郎』路線を狙った作品だった。
 『オバQ』のオバケ達が、『GU-GUガンモ』では珍妙な鳥達になったわけだ。キャラクター配置も踏襲している。『オバQ』の大原正太とその兄の伸一が、『GU-GUガンモ』では佃半平太と姉のつくね。『オバQ』のゴジラ(本名は西郷強)が、『GU-GUガンモ』では西郷としみつ。ヒロインの美子があゆみ。ハカセとキザオを合体させたキャラクターがカシオであり、アメリカ出身でQ太郎のライバルであるドロンパを1人と1羽に分けて、アメリカからやってきた元気少女リンダ、カラスのデジャブーにしたのだろう。僕はリンダが好きだったので、「リンダの立ち位置って、ドロンパじゃん」と気づいた時は、ちょっとショックだった。
 原作の話を続ける。勿論『オバQ』そのままではなく、色々とヒネってあった。たとえば、可愛らしいお嬢様のあゆみはブリっ子で、しかも腹黒いところがあり、ガキ大将の西郷は極端な潔癖性だった。そういったところは、小さい頃に『オバQ』を観ていた僕には、『オバQ』のパロディに思えた。主人公格の半平太が頼りない男の子で、あゆみやリンダといった活発な女の子達に振り回されるのも現代的だと思った。オナラや電器アンマ(玉潰し)といった下品なネタ、ラブコメ要素があるのも、本家である『オバQ』や『ドラえもん』との違いだった。
 アニメ版は、基本的には原作に沿った内容だった。放映が始まった頃に驚いたのが、キャスティングだった。半平太の田中真弓、リンダの三田ゆう子はぴったりだった。ガンモの杉山佳寿子はちょっと意外だったが、面白い芝居になっていた。妙なのは無口で太めの西郷を演じていたのが、細面の美形キャラで知られる塩沢兼人、ガリ勉のカシオが、アニメでは二枚目ばかり演じていた水島裕だった事だ。水島裕は、後に洋画の吹き替えでコミカルな役が増える(ひょっとしたら、この当時、すでに吹き替えではそういう仕事があったかもしれない)ので、観返すとそんなには違和感がないけれど、塩沢兼人の方は、今でも「何で?」と思う。水島や塩沢に、新境地に挑戦させようという意図があったのだろうか。
 ここで最初の話に戻る。『GU-GUガンモ』はファミリー向けの作品であり、例えば前番組の『さすがの猿飛』の方が対象年齢が高く、アニメファン向きだった。また、シリーズ全体として観ると『GU-GUガンモ』は垢抜けないところも多く、その意味ではアニメファンにアピールするような仕上がりではなかった。だけど、たまにある作画や演出が充実した回が、素晴らしかった。その見応えのあるエピソードのために、僕は『GU-GUガンモ』に執着していた。

第216回へつづく

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(09.09.24)