第216回 『GU-GUガンモ』その2 7話B
前回書いたように、僕は放映当時に『GU-GUガンモ』の同人誌を作っていて、アニメーターインタビューもやっている。今回からの数回は、その同人誌を読み返して、この原稿を書こうと思ったのだが、なんとその同人誌が見つからなかった。ガーン。この日のために作ったような本だったのに。そんなわけで、記憶を頼りに原稿を書く。もしも同人誌に書いた事と矛盾があったら、申しわけない。
『GU-GUガンモ』で、僕が注目していたのは、やはり作画だった。他の作画プロダクションの活躍もあったが、光っていたのは井上俊之、梶島正樹をメインとしたスタジオジュニオ回と、志田正博をメインにしたスタジオジャイアンツ回だった。まず、スタジオジュニオ回について触れたい。
「アニメの作画を語ろう」の「animator interview 井上俊之(2)」でも話題になっているように、『GU-GUガンモ』のキャラクターデザインはジュニオの香西隆男がクレジットされているが、実際には20代前半の若手だった井上俊之、梶島正樹が担当。同スタジオの他のメンバーも参加しているが、『GU-GUガンモ』のジュニオ回は、この2人がメインになっていたようだ。現在、井上俊之はリアル系劇場作品になくてならないカリスマアニメーターであり、梶島正樹は『天地無用!』シリーズ等の美少女ものを手がけているが、『GU-GUガンモ』では、2人の得意分野が逆だった。井上俊之が、主に人物を描き、特に美少女作画に力を入れていた。梶島正樹はメカアクションの見せ場を描く事が多かった。『GU-GUガンモ』のどこにメカアクションがあるんだ、と疑問を持たれるかもしれないが、どういうわけか、宇宙を飛ぶヒーローや、パワードスーツ等が登場していた。
1話も井上、梶島が参加しているのだが「背景動画が凝っているなあ」と思ったくらいで、それほど作画が印象に残る感じではなかった。僕が夢中になったきっかけは、7話のBパート「なんと!! リンダのいとこは 金髪グラマー」(作画監督/井上俊之、演出/永丘昭典)だった。作画監督は井上俊之で、原画も相当な量を描いているはずだ。
この話では、リンダの従姉妹のドロシーが初登場。今日はリンダの誕生日なのに、両親は旅行に行ってしまい、半平太達もドロシーに夢中になっていた。それにヘソを曲げたリンダは、工事中の危険な高速道路(だと思う。ジェットコースターのような形状のムチャクチャな道路だ)を、ローラースケートで走ってみせると、半平太達に宣言するのだった。リンダが、高速道路をローラースケートで疾走するクライマックスは、よく動いているし、無闇にポーズが格好いいカットがあった。リンダの健康的な太ももが眩しかった。停まらなくなったリンダを、ガンモと共に駆けつけたドロシーが助けるのだが、勢いあまって、彼女を道路の脇の水たまりに投げ出してしまう。原作のコマ割りを活かしたかたちだったと記憶しているが、ここはカット割りも巧い。
ラストシーンで、ドロシーが誕生日を覚えていた事が分かり、リンダは彼女からバースデープレゼントをもらうのだが、ここは表情が素晴らしい。圧巻だった。「えー、なんでこんなに巧いの!」と驚くくらい巧かった。可愛く描いているだけでなく、キャラクターの気持ちを充分以上に表現しているのが、また素晴らしい。井上俊之自身も、相当に感情移入して描いたのだろう。当時は「萌え」という言葉はなかったけれど、この場面には萌えた。この話を観るまで、まさか『GU-GUガンモ』でこんなに感銘を受けるとは思わなかった。実は、今観返しても、ちょっとニヤニヤしてしまう。
7話Bを初めて観た時には、そこまでは分からなかったが、井上俊之は、なかむらたかし的、森本晃司的なリアル系作画を取り入れ、同時に『うる星やつら』の森山ゆうじ的な美少女作画のタッチも駆使していた。リアル系作画と、アニメ美少女作画を共存させ、センスよくまとめていたのだ。さらにこの後の話数で、Aプロダクション的なリミテッドアクションの気持ちよさまでも、手中にしようとする。7話Bのアクションカットは、数としては少ないのだが、それもこの後、どんどん増えていく。
7話Bは『GU-GUガンモ』にしては珍しく、少しばかりシリアスな話だ。リンダの感情をきちんと追っているし、男勝りの彼女に、実はバースデーを祝ってもらえないのを寂しがるような、可愛いところがあるところを描写しているのもいい。感情の拾い方については、演出の永丘昭典の力が大きいのだろう。
第217回へつづく
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(09.09.25)