アニメ様365日[小黒祐一郎]

第227回 「THE MOTION COMIC」

 『BIRTH』について書いているうちに、この連載で「THE MOTION COMIC」に触れていない事に気がついた。「THE MOTION COMIC」は徳間書店から刊行されていたマンガ雑誌だ。創刊号が1983年1月20日、最終号になったvol.11が1985年2月1日に発売(以上は、奥付に記載された日付)。だいたい2年間で、11冊が出たわけだ。
 表紙に「アニメ感覚の新しいコミック」というキャッチコピーがある。ふくやまけいこや早坂未紀といったマンガ家も執筆しているが、描き手の大半はアニメーターか、キャラクターデザイナーであり、ほぼ「アニメーターによるマンガ」の専門誌だった。徳間書店は、別のマンガ雑誌「リュウ」で、安彦良和の「アリオン」と金田伊功の「バース」を、「アニメージュ」で、宮崎駿の「風の谷のナウシカ」を連載しており、それらの人気を受けての創刊だったのだろう。なお、金田伊功の「バース」は途中で、「リュウ」から「THE MOTION COMIC」に移籍している。
 「THE MOTION COMIC」には、とにかくアニメ関係者の作品が山盛りだった。バックナンバーを並べて、目についた執筆者の名前を並べると、いのまたむつみ、美樹本晴彦、金田伊功、なかむらたかし、湖川友謙、上條修、芦田豊雄、越智一裕、平野俊弘、北爪宏幸、出渕裕、天野喜孝等々。マンガではなくイラストのみだが、小田部羊一、杉野昭夫、金山明博、小松原一男といったベテランも参加している。
 印象的な連載は、いのまたむつみの「GBボンバー」。これはゲートボールをモチーフにした作品で、美少女、美形もあり。金田伊功がモデルになった、サイボーク戦士のグレートキンタ(金田が『幻魔大戦』のベガ風のコスチュームを着たキャラクター)というキャラクターの凄まじい楽屋オチに笑った。サイボーグアクション「無敵少女ラミー」は原作が石川賢で、作画が平野俊弘という謎のコンビによる作品。当時も「どうして石川賢が原作なんだ?」と思ったけれど、今でもそう思う。ちなみに「無敵少女ラミー」は企画的に、後の『破邪大星 彈劾凰』に繋がる作品でもあるようだ。越智一裕の「ひらきなおってマイヒーロー」は、当時の「宇宙刑事」シリーズの人気を反映したアクションもの。こちらのヒーローの名前は、宇宙戦士ギャリバンだった。
 なかむらたかしは、全5回の中編「夢の中へ」と2本の短編を執筆。いずれも『幻魔大戦』や『未来警察ウラシマン』に通じるリアルなキャラクターと、彼の抜群の画力を堪能できる作品だった(以下は宣伝。彼が「THE MOTION COMIC」に発表した作品は、いずれもアニメスタイルが発行した彼の作品集「TWILIGHT」に収録。Amazonやアニメスタイルのイベントで発売中!)。画力と言えば、天野喜孝の「アモンサーガ」シリーズも、見応えがあった。これは夢枕獏が原作。
 傑作だったのが、芦田豊雄の短編ギャグマンガ「ウンガラの太鼓」だ。場所は南方の村か。2人の男が木の上に作られた舞台で、おかしな言語で叫び続けながら、競い合って太鼓を叩く。シンプルな内容だが、テンションは高いし、センスが独特だった。インパクトもあったし、笑えた。今の読者が読んでどう思うかは分からないけれど、当時としては斬新な作品だった。芦田豊雄の代表作のひとつだろう。彼は、他の号では業界マンガを描いており、これも面白かった。第1号の原稿では「なぜアニメファンには 女は『ブス!!』 男は『イモ!!』というタイプが多いのであろう」と発言して物議を醸し、その後もアニメーターのファッションセンス等をネタにしていた。
 「THE MOTION COMIC」に掲載された作品は、完成度が高いものばかりではなく、習作的なもの、同人誌的なものも多かった。だけど、僕はあまり気にならなかった。アニメーターの画が沢山観られるだけで満足だった。アニメの楽しさがたっぷり詰まった雑誌だと思っていた。
 1980年代中盤のアニメ界には、一種のクリエイター主義があった。アニメスタッフには才能があり、それは現行のTV作品では発揮されていない。その才能をかたちにする方法はないだろうか? そういったクリエイターに対する期待が、OVAの時代が始まるきっかけになっていた。「THE MOTION COMIC」はそういったクリエイター主義の象徴だ。時代の徒花と呼ぶ人もいるだろうけど、そうは呼びたくない。

第228回へつづく

TWILIGHT

株式会社スタイル/B5/1680円
ISBN : 9784902948035
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(09.10.13)