第245回 『機動戦士Zガンダム』とそれ以降
本放映から数年間は『機動戦士Zガンダム』をエキセントリックな作品だと思っていた。今観ると意外とそうでもないのだが、とにかく当時はそういった印象だった。『Zガンダム』は難解な作品でもあった。難解なのは、狙いで難しくしているところと、作劇の拙さのために分かりづらくなっているところがあったのだろう。エンターテインメント性も高いとは言えなかった。『Zガンダム』がそういう作品だったから、後番組として作られたシリーズ第3作『機動戦士ガンダムZZ』を娯楽性の高い作品にしようとしたわけだ。
『ガンダムZZ』は「明るいガンダム」がセールスポイントだったが、実際には明るいばかりのシリーズにはならなかった。その次に劇場作品として制作された『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』は『Zガンダム』の延長線上にある作品だった。前にも書いたように、僕は、後に『逆襲のシャア』の大ファンになるのだが、初見時の印象は、やはり「エキセントリックで、難解なロボットアニメ」だった。
気がついたら『ガンダム』というタイトルには「エキセントリックで、難解なロボットアニメ」というイメージがついてまわるようになった。確かに『機動戦士ガンダム』第1作もエキセントリックなところがあったし、分かりやすくもなかった。それにしても、ずいぶんと遠くに来てしまった。『逆襲のシャア』の頃にそう思った。
富野由悠季以外の監督が手がけた初めての『ガンダム』が、1989年にリリースされたOVAシリーズ『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』だった。この作品はエキセントリックでもなく、難解でもなかった。ある意味、安心して観られたのだけれど、物足りなさも感じた。僕が「『ガンダム』とは何なのだろう?」という疑問を抱くようになったのは、『Zガンダム』ではなく、この『ポケットの中の戦争』だった。その疑問についての答えはまだ出ていない。
『ガンダム』の新作は作り続けられ、「エキセントリックで、難解」という作品イメージに、個々の作品が振り回される事になった。いや、厳密に言えば『ガンダム』シリーズを振り回しているのは、作り手やファンの思い入れも含んだ『ガンダム』というタイトルそのものなのだが、『Zガンダム』以降のそういった作品傾向が、混乱の一因になっていた。どのように振り回されたのかは、この連載の『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』や『機動戦士ガンダムF91』といった作品についての原稿で、触れる事になるだろう。
別の話になるが、『ガンダム』というタイトルに振り回されているのは、作品自体や作り手だけではない。僕は『Zガンダム』以降、複雑な気持ちで新作を追いかける事になった。同じようなスタンスでいるファンは、少なくないのではないか。つまり、作品として面白いかどうかとか、よくできているかどうか、という事とは別に「この作品は『ガンダム』としてはどうなんだ」と考えて観るようになった。つまり「『Gガンダム』は面白いけど『ガンダム』じゃないよ」「『∀ガンダム』は富野監督らしい作品だけど、僕の好きな『ガンダム』とは違う」などと思いながら、観るようになった。
『宇宙戦艦ヤマト』シリーズほど深く失望をする事もなかったが、『ガンダム』シリーズに対する気持ちはやたらと複雑になっていった。
第246回へつづく
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(09.11.09)