アニメ様365日[小黒祐一郎]

第305回 1986年はTVアニメ冬の時代

 今日から1986年のTVアニメについての話だ。ここまでに何度か触れたが、1986年にTVアニメにおいて、アニメファンが喜ぶようなタイプの作品が激減した。アニメファンやアニメ雑誌にとっては「TVアニメ冬の時代」だった。
 実際にタイトルを見てもらうのが、てっとりばやいだろう。以下が、1986年に始まった新番組一覧だ。


1986年にスタートしたTVシリーズ

  1. (1)『愛少女ポリアンナ物語』
  2. (2)『ロボタン(新)』
  3. (3)『宇宙船サジタリウス』
  4. (4)『メイプルタウン物語』
  5. (5)『DRAGON BALL』
  6. (6)『機動戦士ガンダムZZ』
  7. (7)『魔法のアイドル パステルユーミ』
  8. (8)『めぞん一刻』
  9. (9)『六三四の剣 青春編』
  10. (10)『まんがなるほど物語』
  11. (11)『銀牙 流れ星銀』
  12. (12)『剛Q超児イッキマン』
  13. (13)『ウルトラマンキッズのことわざ物語』
  14. (14)『ワンダービートS』
  15. (15)『青春アニメ全集』
  16. (16)『光の伝説』
  17. (17)『マシンロボ クロノスの大逆襲』
  18. (18)『地上最強のエキスパートチーム G.I.ジョー』
  19. (19)『Bugってハニー』
  20. (20)『たばこ1本のストーリー ハートカクテル』
  21. (21)『あんみつ姫』
  22. (22)『ボスコアドベンチャー』
  23. (23)『オズの魔法使い』
  24. (24)『Oh!ファミリー』
  25. (25)『聖闘士星矢』
  26. (26)『ドテラマン』
  27. (27)『ドリモグだァ!!』
  28. (28)『がんばれ!キッカーズ』
  29. (29)『戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマー2010』

※『G.I.ジョー』『トランスフォーマー2010』は
海外作品(国内プロダクションが制作で参加)。


 見事なくらいに、ファミリー向け、子供向けの作品ばかりだ。『DRAGON BALL』は後に、高年齢のファンに支持されるようになるが、それは成長した悟空がピッコロ(マジュニア)と戦うあたりからだ。コミカルな作品であった序盤は、アニメファンの注目度は低かった。
 難解ですらあった『機動戦士Zガンダム』の後番組が、ロボットアニメへの原点回帰を狙って、明るいテイストにした『機動戦士ガンダムZZ』であったり、大人びたタッチだった『魔法のスター マジカルエミ』の後番組が、ぐっと対象年齢が下がった『魔法のアイドル パステルユーミ』であったのも象徴的だ。話の本筋から外れるが、僕達の世代のアニメファンの多くが、『ZZ』に対して醒めた気持ちで接したはずだ。放映開始時のアニメ雑誌に「(主人公ロボのダブルゼータの)頭に波動砲をつけました」といった内容のスタッフコメントが掲載された。それを目にした時に、僕はひどく情けない気持ちになった。「ふざけるな!」とも思った。
 多くのファンが期待した作品は、高橋留美子原作の『めぞん一刻』くらいだったはずだ。他には、荒木伸吾のキャラクターデザインの力もあり、ヒロイックなアクションものの『聖闘士星矢』が人気作となった。『マシンロボ クロノスの大逆襲』は子ども向けのロボットアニメだったが、ヒロインのレイナに注目が集まった。この作品で暴走気味の作画を楽しんでいたアニメマニアもいた。
 高年齢のアニメファン向きの作品は、OVAのかたちで展開されるようになり、TVアニメは子供向けばかりになった。子供向けが増えたのは、アニメブーム以降に、TVアニメの対象年齢が上がりすぎた事の反作用でもあるばすだ。当時のアニメージュは、こういった傾向を「チルドの時代」と呼び、特集を組んでいた。
 アニメファンにとっては、実はアニメブーム以前よりも寂しい状況だった。アニメブームが起きる前のTVアニメは、子供向きの作品でも、この時期のタイトルより上の年齢を意識したところがあった。
 この頃、アニメから離れていったファンも少なくないだろう。
 それでも僕や、友達の数人は、TVアニメを見続け、面白い部分や凝ったところを探した。この年の名作劇場は『愛少女ポリアンナ物語』で、劇中で主人公がやっていた「よかった探し」が話題になった。僕達もTVの前で「よかった探し」をやっていた。

第306回へつづく

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(10.02.12)