第356回 『CITY HUNTER』主題歌とキャスト
『CITY HUNTER』では、よく主題歌が話題になる。オープニング、エンディングに、小比類巻かほる、TM NETWORK、FENCE OF DEFENSEといった人気アーティストを起用。『CITY HUNTER』『CITY HUNTER 2』ではシリーズ中にオープニングの楽曲を、『CITY HUNTER 2』ではシリーズ中にエンディングの楽曲も変更している。
エンディング曲は、本編Bパートのラストにイントロがはじまり、そのままエンディングに突入するという洒落た形式だった。諏訪道彦プロデューサーによれば、このフォーマットは、日本テレビの実写ドラマ「火曜サスペンス劇場」に倣ったもので、彼は「聖母たちのララバイ方式」と呼んでいた。「聖母たちのララバイ」とは、「火曜サスペンス劇場」の初代エンディングテーマの事だ。
オープニング、エンディングのメジャーな楽曲と、「聖母たちのララバイ方式」のお陰で、『CITY HUNTER』はより華やいだ印象の番組となった。また、番組フォーマットに対する諏訪プロデューサーのこだわりはその後も続き、『名探偵コナン』でさらに凝ったフォーマットを完成させる。
冴羽僚のキャスティングに関しては、放映開始時には、ちょっと不満だった。神谷明は、すでに同じジャンプアニメの『北斗の拳』と『キン肉マン』で主役を演じており、「また、神谷明かよ!」と思ったわけだ。同時期に始まったギャグアニメ『げらげらブース物語』でも、神谷が主人公を演じており、そんな事を気にしなくてもいいのだけれど、キャラがかぶっているように感じて、気になった。だが、気になったのは初期だけだった。硬軟合わせ持つ僚のキャラクターは、ヒーローとギャグキャラクターの両方を演じてきた彼に相応しい役であり、すぐにアニメの冴羽僚は、彼以外では考えられないようになった。『CITY HUNTER』における神谷の芝居は過剰なものであり、それが原作の僚とも少し違った、アニメ版の僚を作っていた。神谷にとっても、『CITY HUNTER』は愛着のある作品になったのだろう。彼は、自身の事務所に「冴羽商事」という名前をつけている。
忘れてはいけないのが、槇村香役の伊倉一恵だ。香は活発ではあるけれど、不器用なところのある女性で、そんな彼女を見事に演じていた。いや、演じていたというのは正確ではない。ご本人のパーソナリティとキャラクターが一体化している感じだったと思う。お芝居以上のものが感じられたし、愛すべきキャラクターになっていた。僕は一度だけ、彼女に取材している。角川書店から出た「キャラクターボイス コレクション」という声優インタビュー本だ。当時、彼女は伊倉一寿の名前で活動していた。気さくな方で、まるで目の前に、本当に香がいるようだった。取材でも彼女は、香は普段の自分の声で演じている、性格も近いと語っていた。
饒舌過ぎるくらいの神谷明の芝居と、一所懸命な感じの伊倉一恵の芝居のコントラストがよかった。2人の芝居の違いが、僚と香の関係を表現していた。僕にとっては、ドツキマンザイを含めた2人のかけあいこそが、『CITY HUNTER』最大の魅力だった。
せっかくなので、もう少し声優の話を続ける。レギュラーキャラの野上冴子を演じていたのは、麻上洋子。冴子は、色っぽい美人刑事だ。麻上洋子は、甘ったるい芝居の女の子の印象が強かったので、セクシーな役にキャスティングされたのが意外だった。海坊主役は、マッチョをやらせたら日本一の玄田哲章。こちらのキャンティングはイメージどおりで、意外性はなかったが、海坊主が女性関係の話題で照れた芝居、僚にからかわれた時の芝居が猛烈におかしかった。半分はキャストの話ではないが、海坊主がレギュラーになってから『CITY HUNTER』は、面白さが安定した印象だ。
僕は声優に濃いわけではないので、本放映当時はあまり気にしなかったが、当時の女性声優を全制覇しそうな勢いで、各話のゲスト美女役で様々な声優を起用している点も、本作のチェックポイントだ。また、新人だった山寺宏一が、毎回のようにチンピラや下っ端役で出演しているのも、よく話題になる逸話だ。観直してみると確かによく出ている。
第357回へつづく
(10.04.27)