第366回 「春日恭介15歳、青春してます」
365回で終わるかとも思っていた「アニメ様365日」ではあるけれど、今回は第366回だ。前回(第365回 365回目はあっさりと)も書いたけれど、これからは、ちょっと気楽な感じで書いていく。皆さま、よろしくお願いします。しばらくは『きまぐれ オレンジ☆ロード』の話が続く。ただでも長くなりそうな話題であるのに、気楽に書いていったら、何回かかるか分からないなあ、とちょっと心配しつつ始める事にする。
『オレンジ☆ロード』を青春ものだと思うのは、単に爽やかだったり、楽しいだけでなく、若者らしいモヤモヤした想いや、切なさを描いているからだ。作り手は、大人の目線で青春時代を振り返るようにして、恭介達の物語を描いているのだろう。毎回、ラストカットは静止画となり、周りに白い縁取りがつく。つまりは写真のイメージだ。ひとつひとつのエピソードが、アルバムに貼られた若きの日々の写真のようなもの。青春の1ページといった意味だろう。
1話から19話までのアバンタイトルでは、恭介が、まどか、ひかると一緒に写真を撮る様子が、描写されていた。恭介はカメラのタイマーをかけ、まどかとひかるの間に座ろうとするが、慌てていたため、背後の池に落ちてしまう。毎回のラストカットと同じように、驚いたまどかのひかるの写真、スプ濡れになりながらもVサインをしている恭介の写真になる。そのアバンタイトルにかぶさる恭介のナレーションは「ひとつの出逢いが、ふたつの恋に進み、みっつの震える心が、優しい音色を奏でた。春日恭介15歳、青春してます」というものだった。
このアバンタイトルは、TVシリーズ『オレンジ☆ロード』が何を描く作品かを雄弁に語っている。恭介が池に落ちた次の瞬間に「青春してます」というセリフが入る。かっこいいだけじゃない。むしろ、失敗したり、みっともなかったりするのが青春なのだ。そういったメッセージが、このアバンタイトルで表現されている。そもそも本当に青春の渦中にいる人間は、自分が「青春している」なんてあまり思わないものだ。かっこよくない青春を送っている若者なら、なおさらそうだろう。恭介に「青春してます」と言わせたのも、大人目線で物語っているからかもしれない。
第361回 『きまぐれ オレンジ☆ロード』の回でも触れたが、本シリーズの恭介のナレーションは、後になって過去を振り返ってコメントしている体のものがある。大人になった恭介が、青春時代を思い出してナレーションをしているわけではないだろうが、自分の状況や感情を、後になって客観的に言葉にする感じは、やはり大人目線の作劇だ。
本放映時に「このシリーズは、青春ものなんだな」と思ったのが、11話「鳴らさないで! ウエディングベル」だった。それについては次回で。
第367回へつづく
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(10.05.17)