アニメ様365日[小黒祐一郎]

第408回 『うろつき童子』について書く前に

 読者の器さんから、ちょっと嬉しいメールをいただいたので紹介する。一昨日の第406回「やたらと働いた1987年の夏」についての感想だ。


小黒編集長、アニメスタイルの皆さん、こんばんは! いつも楽しく記事読ませていただいてます。そしてすみません、時間がないので単刀直入に書きますね。
今日の記事は衝撃でした。編集長の記事です。
『この頃が一番仕事が楽しかった』ってマジですか!!!!
正直言ってびっくりしました。私はまだ学生の身分なのでよく分かりませんが、ええええ、そんなものですか! 沢山アニメをご覧になり、記事もうまく書けるようになられて、仕事がどんどん楽しくなっていくんだろうな、と勝手に思っていたので、非常に驚きました。
編集長、今、お仕事つまらないんでしょうか……あの記事を書いているその瞬間も、昔仕事したあのときめきにはかなわないと、そう仰るのですか……!!!
こんな感想を抱いた人間は私だけではないはずです。よかったらぜひぜひお答えくださいませ!


 スタンダードな感想メールもありがたいけれど、こんなふうに突っこんでくれるお便りも嬉しい。ありがとうございます。追伸にも面白い事が書いてあったのだけれど、そちらは割愛する。で、質問ですね。答えます。
 今も仕事は楽しいけれど、仕事を始めた頃は、悩みがなかった。記事のまとめ方を思いついたら、すぐにそれをかたちにしていた。原稿を書くのも、ほとんど悩まなかった。仕事に慣れていくと、同じ原稿を書くにしても「もっと上手い書き方があるのではないか」と思うようになる。作品に対するアプローチにしても、色々なかたちがある事が分かる。それ自体はいいのだけれど、選択肢が増える事で、どのアプローチもを選ぶかで悩むようになる。そういった事について話をした事はあまりないので、他のライターさんや編集者がどうなのかは分からないけど、仕事に慣れる事で、かえって悩みが増える人は多いだろうと思う。
 今は、自分で作りたい本を作る事もできるし、若い頃にはできないかったような突っこんだ取材もできるようになった。仕事を始めた頃にはできなかった事ができるようになったわけであり、それで満足度が上がっているというのは、確実にあるのだけれど、大きな仕事をやれるようになっただけ、悩みも増えた。仕事を始めた頃は、勢いよくイケイケでやっていた。何も考えずに仕事を楽しんでいた。あの頃の事を思い出すと、楽しかったなあと思う。要するに、話題にした1987年頃は、気楽に仕事をやっていたのだ。
 メールをくれた器さんは、学生らしい。若い人に読んでもらうものとしては、正直過ぎる回答かもしれないけれど、そういう事です。

 さて、以下が今日の本題。明日の「アニメ様365日」は『超神伝説 うろつき童子』初期三部作について書く。『うろつき童子』は成人向け作品であり、大ヒット作。後続のタイトルにも多大な影響を与えている。この作品について書くのがずっと楽しみだった。どんなふうに書こうかと、ずっと考えていた。
 僕はアダルトアニメについて詳しくない。『うろつき童子』はいくつものシリーズが作られているが、初期三部作と、その次の『魔胎伝』くらいしか観ていない。だから、明日の原稿も淡白なものになってしまうかもしれないけれど、とにかくあの作品が、自分達にとって、衝撃的なものだったという事を書いておきたい(今の若い人達が観ても、当時の僕達ほどのインパクトは受けないだろうと思うが、それはまた別の問題だ)。大袈裟に言っているわけではなく、本当に衝撃的だったのだ。

第409回へつづく

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(10.07.14)