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COLUMN
板垣伸のいきあたりバッタリ! 第103回
また竜雄さんの事(2)

(前回からの続き)以下は『バスカッシュ!』のシリーズ構成・脚本を佐藤竜雄さんに依頼した時の電話での会話。

板垣(以下、)「なんか〜、河森正治原作の監督やる事になったんですが、竜雄さん、シリーズ構成・脚本のみをやってもらえませんか?」
竜雄さん(以下、)「は?」
「ま、河森さんだからロボットものはロボットものなんですけど……。ちょっと変わったモン目指してるんですよね。なんてゆーか、ジグザグで立体的なドラマをやりたいって河森さんが言っててですね〜」
「……はあはあ(チンプンカンプン)」
「で、俺ねえ〜、主人公女の子にしたいって言ったら河森さんが“女の子をロボットに乗せるとお客さん(視聴者)の層が変わる!”って言うんですよ。ま。それも分からんでもないし、天才・河森データに基づいた見解だろうから納得したから主人公は男なんですが……」
「まあ、そうだろうね〜(チンプンカンプンだけど、とりあえずアイヅチ……)」
「そもそも、ロボットでスポーツやるって、どー思います〜?」
「あ、何? スポーツものなんだ……!(まだよく分からない……)」
「そーなんですよ! ロボットでスポ根ですよ! だから俺、個人的に“スポ根だけだとツラい!”と言って“じゃ、どーしたい?”と返してきたから“月にダンクシュートをキメたい!”ってデッチあげたら“それイイですね〜”だって」
「なんだバスケかよ!(やっと見えてきた!)」
「だけど、俺も河森さんも“お祭り”って意識の方が強いと思うんです」
「あ〜あ〜……(また分かんなくなってきたぞ)」
「んで、俺は基本的にはロボもスポーツもSFも恋愛も……つまり、ジャンル分け不可能なモンにしたいんですよ」
「ほーほお……。(ここらでこっちから訊くか……)それは何、河森さんが総監督なの?」
「いや、そんなんなら俺やりませんよ。河森さんは原作兼スーパーバイザーで、あくまで監督は俺です!
「あ、そーなんだ」
「もう、今回の話を人にすると必ず言いますね、皆様! そもそも俺、『マクロス』みたいなロボットもの作れないし、『マクロス』にしてほしいなら河森さんも俺にゃ頼まないでしょ? 俺はむしろ“河森さんの名前をタテに好き勝手作る”気なんですよ! いくら河森さんの意見でも、原作者としての注文以外は聞く耳持つわけない!」
「……はは〜ん(笑)」
「そんなわけでですね、河森正治原作に佐藤竜雄脚本となれば、俺が少々変な事をやったり言わせたりしても世間的には河森さんと竜雄さんの仕業だと思うでしょ! 一般のお客さんたちは作品における監督の影響力なんて信じてませんから(笑)」
「なんだそりゃ、そこが目的かよ!(笑)」
「ははははは……(笑)! いやいやもちろん『ムリョウ』も『ステルヴィア』もよかったからですよ〜」
「ついでかよ!(苦笑)」
「でもまあ、逆に面白いモンができた時も、河森正治と佐藤竜雄の手柄って解釈がなされるわけだし……。手柄は持ってっていーですから(笑)」
「で、それは何、河森さんの原作ってどこまで決まってんの?」
「自分がもらった企画書には、なーんとなくの大雑把なキャラの設定(……でも絵はないんですが)と、ロマンさんの描いたメカと美術ボードくらいで……。つまり、河森さん的には“シリーズ構成の人が決まったら板垣さんと一緒に話を考えていきたい”って言ってまして、これからどーにでもなりそうなんで俺も受けたんですよね〜」

 と、話の途中ですが、この河森さんの方針は現在のホン読みでも絶賛実行中(?)で、最終的には河森原作に佐藤竜雄のテイストを加えて板垣がかき混ぜたモンになるのかな〜と。

「なるほどね〜」
「で、今暇ですよね?」
「え? 暇じゃねーよ!」
「あ、『シゴフミ』(2008年1月〜3月)か! でも『バスカッシュ!』の方はシリーズ構成・脚本のみだし……」
「ま、とりあえず資料とか読ませてもらって考えるかな……」
「じゃあ、制作さんに資料とか届けさせますんでよろしく! と言うわけで〜」
「あ、はいはい(やっと切ってくれるのか、ホッ……)」
「よい返事期待してますから(笑)」
「はいはい」

 と電話を切ってから数日後、本当によい返事のメールが届きました!

「このあいだの河森原作の話、前向きに考えさせてもらいます ――サトウタツオ」

 というわけで『バスカッシュ!』のシリーズ構成・脚本は皆様ご存知の佐藤竜雄さんに決まったんです。そこで遅ればせながら――。


板垣的・アニメの偉い人(7)

佐藤竜雄監督

 ご本人が『がきデカ』似だからというだけで初監督はOVA『がきデカ』。
 他の代表作は公式サイト(?)サトウタツオ通信でどーぞ!



 竜雄さんに初めて会った時の事はこのコラム第6回で書いたとおり、『獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇』で、その後『十兵衛ちゃん2 ―シベリア柳生の逆襲―』、『この醜くも美しい世界』に一緒に参加しました。なんの因果か両作品とも板垣が7話で竜雄さんが9話。ちなみに竜雄さんを『この醜』の脚本に誘ったのは板垣だったのでした。

「今度、ガイナックスの『この醜』ってシリーズに脚本で参加するんですけど、竜雄さんも1本やりません? 佐伯監督も喜びますよ〜」
「あー、そーだね〜」

 って感じで……。佐藤竜雄さんは本当に面白い人ですよ!



(09.01.29)

 
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