(前回からの続き)
で、朝8時半くらいから仕事開始。動画の仕事はひたすら孤独……。原画と違って演出や作監の人たちと作打ちする事も当然ないし、動画の先生の手から離れると1日誰とも話さない日がちょくちょくあるくらい孤独で、鉛筆の削り具合のみを気にしてひたすら線を引っぱり続けるだけ。こーなると、誰よりもいち早く原画になりたい! ってのが普通なところでしょうが、自分の場合
前述(コラム#12)な感じ……たぶん他の人より比較的楽しくやってたという記憶しかないです。そー言えば、その頃の印象的な先輩A(もちろん原画)さんとの会話――
先輩A「(新人を見かけたら声をかけてあげないとね♡……て感じで)板垣君、動画どお?」
板垣「はあ、面白いですね〜。でも、なんか枚数が上がらなくて……。やっぱ向いてないのかなあ?」
先輩A「まあねえ。早く原画になっちゃえば動画なんて関係なくなるからねえ」
板垣「いや、でも動画も楽しいし、とりあえず動画って基本でしょ?」
先輩A「いやいや、もうねえ、原画になったらねえ……(以下略)」
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この時自分が聞きたかったのは、どんなにくだらないテクでも“こうしたら早く描けるよ”とか“鉛筆何使ってんの?”とか……っていう同じ目線に立ったアドバイスであったはずなのに、先輩Aさんの話って、もの凄く上から目線で“早く原画になれ!”の連呼でした。ご本人に悪気はなく“後輩に対してフランクな先輩”と自他共に認める先輩Aさん(ちなみに以前からよく登場する、先輩○や○君、○さんのイニシャルではありません!! デタラメなアルファベットですよ)に対して、最終的に板垣は言い返しました。
板垣「あのお、俺、動画って仕事に今のところ不満はないんですよ! なんで“原画になれば、原画になったら……”とかしか言えないんですか!?」
先輩A「……ま、ねえ、原画になったら分かるよ(困ったようにニヤニヤ)」
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わけが分かりません。少なくとも、やせガマンなどではなく、俺は動画が楽しかったし、自分がいた時のテレコムは、原画試験って、年に1度あるかないか、だったので、「原画になったらこの苦しみから逃れられるんだあ〜」的な動画に対して後ろ向きなモチベーションでは、2年も3年も動画やってられないんですよ、先輩。
昼12時半〜13時半、昼休み(テレコムは休み時間が決まっていました)。
会社を抜け出して駅前のTS○TAYAへビデオを返しに……。金はなくともビデオはよく借りてました。その頃はヒッチコック、小津、そしてアニメ。自分の特徴は同じビデオを何回も借りる事。……だって気に入ったモンって何回も観たくなりません? あと、勘違いしないでください、これ特に将来“演出家になるための勉強”とかってんじゃありませんですよ。本当に興味が湧いたから観るだけ。ま、板垣的“演出家になるための勉強”は別の回で書くとして、ビデオ屋の後は前の晩に米が炊いてあれば、アパートに帰ってゴマ塩かけて1/3合食べて(2合炊いて2日で消費が基準でした)会社に戻ってまた動画のお仕事。で、炊いてなければコンビニでおにぎりorパン。
……ひたすら線を引きます。
本当にただひたすら線を引っぱりまくります。