前回に引き続き
板垣的・コンテの描き方……って事で。
その2 コンテ用紙に向かう
持つ鉛筆は4B。ラフが必要な時はHか2H。俺の場合、自分の監督作だろうがコンテのみのお手伝いだろうが、そのシリーズの初コンテはやや(?)時間がかかるようです。作品の切り口が見えるまでなかなか勢いがつかないからでしょーか?(制作様スミマセン……) そして、同シリーズの2本目、3本目と回を重ねるごとにスピードが増して、最後はなんとなく帳尻が合う感じになります。なのでコンテを上げるのに要する期間はほんとーにマチマチ……。他になんの仕事もかけ持ちしていなくて2ヶ月かかる時もあれば、原画やら演出処理の仕事をかけ持ちつつも2週間とかで上がる時もあるわけです(例えば『アベノ橋』と『一歩』の原画やってた月に『キャプテン翼』のコンテ2本上げたりもしたし、『砂ぼ』『黒猫』『Devil』もラスト連続話数コンテなどはかなり時間がなかった……)。あと前回説明しかけたように、ホン(シナリオ)の出来にもよります。
ま、そんなこんなでいよいよ具体的な“コンテの描き方”を。ちょくちょく――
と演出家志望の若手が自分の目の前に現れては、演出処理だけでなくコンテの描き方まで先輩から手ほどきを受けて演出家デビューを飾ろうとしている人がままいます。
しかも――
「名のある大作のコンテ集から学びたい!」
「名のある監督の口から話を聞きたい!!」
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らしいので、今回はあえて名のない板垣が、今説明できる“コンテの作法”を書いてイヤがらせてみましょう。
[1]誰でも知ってるイマジナリーライン
つまり真俯瞰図で説明すると――
つまりきり返す時などは――
――を維持するんです。もっと知りたい人は紀○国屋で“家庭用ビデオで撮る映画の作り方”的内容の本を探せばこんな単純な事について十数ページに渡って書かれています。
[2]INとOUTの方向あわせ
これも簡単……
ま、突き詰めるとこれも[1]のイマジナリーラインの一環ですね。
[3]同じ被写体を連続カットで撮る場合は“サイズ”もしくは“アングル”をハッキリ変えるべき
これも実に簡単です。
[4]以上の項を踏まえた上でキャラクターの“気持ちの流れ”を追う(コラム第55回参照)。
と、このくらいを守って描けば、
自分にとって“絵コンテ”とは音楽で言う“楽譜”みたいなモノ。さらにコンテ作業は作曲みたいなもんで、ここに記した[1]〜[4]は作曲するのに必要な楽器――例えばピアノの鍵盤を指して「ここを押すと“ド”という音が出ますよ」って程度の説明をしたようなわけです。
つまり、カメラアングルの“あおり”だ“フカン”だ“アップ”だ“ロング”だはド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドの音階と同じであって、その並びで美しいメロディーを作るのがコンテ作業なのではないでしょうか? だって、作曲する際「“ソ・ミ・ファ”ときたら次は絶対“レ”だ!」と決まってないのと同じく、カメラアングルも「“アップ”の次は必ず“ロング”だ!」なんて決まりはまったくないわけで……。
よって、この[1]〜[4]もセオリーであってルールではありません。逆に、
これらを知った上、理解した上でそれを壊すのが演出!
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だとも言えると思います。ですから演出家志望の皆さん、どこかの映画本やどこかの大監督の口から“人を感動させる事ができるカット割りの作り方”を教わろうとするより、まずは自分が、
の方が先じゃないでしょうか? で、続きは