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『かみちゅ!』倉田英之×舛成孝二インタビュー(5)
ぶっちゃけ、本編の一部を抜いてますわ
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―― DVDでは各エピソードの構成は変わるんですか。1話とかって本編中にEDのクレジットが出てきましたよね。
舛成 ああ。DVDでは、ちゃんとエンディングをつけます。どうせ1巻目を発売したらみんな気づくと思うんですけど。というか、勘のいい人はもう気づいてるんですけどね。不自然な編集でシーンがつながってるところが、多々あるんですよ。まあ、もうぶっちゃけ(本編の一部を)抜いてますわ。
―― 本編はもっと長いんですか。
舛成 長いんです。
―― なるほど。
倉田 2分ぐらい。
落越 えーとね、1話と2話で53分超えてるんで。各話3分ぐらいは長いですね。
―― おお、これはDVDを買わなきゃ駄目ですね!
宣伝スタッフ そういう事です!!
一同 (笑)。
―― うわ、いきなりメーカーの宣伝の方が発言するし(笑)。
舛成 TVはTVで、ちゃんと楽しめるようにはしてるんですよ。で、ほとんどの人は抜かれてるって事に気づいてないと思うんです。それに気づいた人は、DVDでどうなっているのか興味を持ってほしいし、気づかないでDVDを買って観た人も、ちょっと驚いてほしいなあ。
倉田 3話のオープニングで、2話で抜いたカット使ってるじゃないですか。
舛成 ねえ! あれはビックリだね(笑)。
落越 忘れてましたね。
一同 (笑)。
倉田 嘘つけ。
落越 ほんとだよ。3話のオープニングで使っているなんて、考えずに抜いちゃった(笑)。
―― TVバージョンよりも、DVDバージョンの方が長いという事ですね。今後もそうなんですか。
舛成 ええ。ほぼ全話そうですね。
倉田 まあ、正直に言えば、お金を払ってくれた人がいちばんいいものを観る権利があるんじゃないかとね。
―― 考え方としては、それもありですね。
舛成 「TRICK」のDVDで「やむ落ち」ってあったじゃない。やむを得ず落としてしまったカットを編集して、DVDのオマケで入ってるんですよ。それを観た時に、これはちゃんと本編に差し込んだバージョンで、音楽もついてみせてくれた方がいいんじゃないの、という感覚があって。
倉田 その再生バージョンもついてますよ。
舛成 あ、あるんだ。それ全然観てねえや。
倉田 最初に、メニュー画面をちゃんと見てくださいよ。
一同 (笑)。
―― 本編の途中を抜いたところって、曲のつながりはどうなっているんですか。
舛成 (音を)再編集してる場合もあるし、曲が絡まないところを抜いている場合もあります。
倉田 やっぱり手間はかかるんですよ。
―― 単にちょん切ってるわけじゃないんですね。
舛成 じゃないですね。
―― それと記事にしていいのか分かりませんが、TV放送されない話数もあるとか。
舛成 ああ、ありますよね。というか、もう言ってしまっていい事なので。全8巻で全16話で、放映は1クールなんです。
―― なるほど、DVDのみに収録のエピソードもあるわけですね。
舛成 TVを観てくれるのは全然オッケーなんです。TVを観てもらわないと、こっちも困るんで。だけど、商品の方にはTV以上の面白さがある、という感じで考えてはいるんですけどね。
倉田 充実してますしね。羽音さんの描き下ろしカードはついてくるし、ライナーもコメンタリーもあるし。ま、コメンタリーと言っても、いつもの、おっさん2人がだらだらと喋ってるだけなんですけど。
舛成 昔のアニメーションって、商品がおもちゃだったじゃないですか。アニメーションは、30分のおもちゃのコマーシャルだったわけじゃないですか。でも、今はアニメのフィルムそのものが商品なんですよね。コマーシャルで全てを観せてしまったら、商品の価値はなくなるだけじゃないですか。だったら、商品価値を上げるためには別の映像つけるしかないよね、というのが僕の考え方なんですよ。
―― 各話についてTVバージョンとDVDバージョンを作るのは、それとは関係ないんですね。
倉田 それは単に、時間の問題。
舛成 そうです。
落越 裏返せば、お金を出してくれる人にどのぐらいの満足を与えられるかっていう事ですよね。それはブックレット、コメンタリー、ジャケットなどでもやっていかないと。
舛成 『R.O.D』の時からそうだけど、色々オマケとつけたりとか、結構無理な事をやっているんです。まあ、少しでも楽しんでもらおうと。
倉田 僕は他のアニメのDVDをいっぱい買っているから、買う人の気持ちが分かるんですよ。ペラ1枚をライナーと言って、ごまかしたりとかはしませんよ。
―― 1巻が、もうすぐ出るんですよね。
落越 8月ですね。あと1月くらいです。
倉田 夏アニメの中ではいちばんの早売りです。
落越 ダントツですよダントツ。いつも我々はダントツですよ。
舛成 (笑)。
倉田 何でも一番が好きな我々としては。
落越 先行逃げ切りみたいな(笑)。放送もちょっと早かったし。
舛成 とりあえず、色々と話題になってくれてるのは、ありがたい事で。
倉田 この作画がいつまでもつのだろうかという、みんなの期待には応えなければと。
一同 (笑)。
舛成 期待なのかしら。いやいや、どっちにも転んでも期待には応えられる。
落越 確かに。
倉田 むしろ、京アニ(京都アニメーション)みたいに最後までクオリティを維持してしまったら、みんなが「えっ」とか思うんじゃないかしら。思わねえか。
―― いや、その場合は「よくやった」と言ってくれると思いますよ(笑)。
倉田 「よくやった」と言うのかな。ちくしょう。いや、そこはね、やっぱり日本のアニメーションですから。
―― たまにはギャフンな感じもほしいと。
倉田 ギャフンとは違うけど、ラインが変わるというのはあるんじゃないかな。実際に3話もなんかタッチが変わってますからね。大河原(晴男)さんのラインで。
舛成 今回は、総作監を立てない作り方をしてるんです。その話数の作監さんの個性で、可愛く描いてくれればいいよ、という。
倉田 80年代のアニメっぽいですよね。観ただけで、作監が誰か分かるという。
舛成 ま、『うる星』やつらみたいな感じで。
倉田 あれ、今回はキャラ表から違うぞと思ったら、西島(克彦)さんの作画だったりとか。
舛成 そうそう。
一同 (笑)。
倉田 あの、懐かしい時代の息吹を感じていただければ。
―― いや、あそこまで極端じゃないでしょ。
舛成 僕は、作画に暴走を許してるんだけど、演出には厳しいんで。『うる星やつら』は演出も暴走するじゃないですか。僕は、演出の暴走は絶対許さないんです。
―― 演出は全話を同じトーンで。
舛成 同じトーンでやれと。演出が暴走しなければ、作画の暴走はあっても、キャラクターの逸脱にはならないんですよ。
―― いきなり違うアニメみたいな芝居をするわけではないんですね。
舛成 ないですよね。そういうのは気をつけてやってるんで。それを守るのが大変なんですけど。
倉田 改めて話してみると、もの凄く保守的なアニメですよね。
舛成 まあ、そうだよね。
倉田 自分たちの砦を守ろう守ろうとしているみたいなね。
一同 (笑)。
倉田 「ちょっとやそっとで、突き崩せると思うなよ!」という風な。
―― (笑)。誰に対して言っているんですか。
倉田 世の者どもに(笑)。「もっとはじけてくれ」とか言う人がいるじゃないですか。
―― ああ、なるほどね。そんなマネはしない。自分たちのやりたい事を貫き通すんだと。
倉田 絶対に譲らない。
落越 鉄の意志で。
倉田 ここまでくるのに、何年かかったと思ってやがんだみたいな。
―― あ、積み重ねがあったんですね。
倉田 ようやく自分たちの好みを、ちょっと入れられるポジションになってきたのにという。
舛成 うん。10年ぐらい前じゃ考えられないよね。こんなぬるーく作って、面白いと言わせるような作品は。
―― 状況もありますよね。10年前だったら、企画として通らなかった。
舛成 通らなかったですね。
倉田 絶対通らなかったですね。
舛成 『(アンドロイド・アナ)MAICO2010』で、偶然ああいうフィルムが作れたっていうのが、でかいんですよね。ポニキャンのプロデューサーに企画をふられた時に「売れないけどいいすか」と言ったら、同じ枠に『南海 奇皇(ネオランガ)』や『ああっ女神さまっ 小っちゃいって事は 便利だねっ』もあるし、いいよって言ってもらって。
―― 『MAICO』は意欲作でしたよね。
舛成 あの辺で、(周囲の扱いが)こいつらは、何を言っても好きにやるんだろうといったノリに切り替わった。
倉田 僕は、その前の年に『(バトルアスリーテス)大運動会』をやっていたんだけど。その頃は、アニメーションって、地球がピンチにならないと、いけないんじゃないかという強迫観念が。
一同 (笑)。
―― それで最後の「超運動会」が始まったわけですか(笑)。
倉田 『MAICO』を始める前に、「部屋から一歩も出ないアニメ」と聞いて、すげえやりてえと思ったんです。前作で宇宙の果てまで行って、今度は部屋から一歩も出ないアニメだ。昼に黒田(洋介)さんにその(企画の)話を聞いて、夜に舛成さんに会うまでの7時間に、頭の中にぐあああと、ネタが浮かんできたんですよ。蠅が飛んでたら、どうなるみたいな。
一同 (笑)。
倉田 多分、あの時に、それまでと違う方法論に目覚めてしまったんじゃないでしょうかね。
―― なるほど。
倉田 で、7年とか8年かけてようやく開花してきたんですよ。
舛成 そうそう。
―― じゃ、『かみちゅ!』が当面の到達点ですね。
舛成 そうですね。
倉田 到達したら、また次のやつが見えるんだろうなあ。さらに動かないアニメって作れないかと。
一同 (笑)。
―― 次は、芝居すらないとか。
倉田 「(ビックコミック)スピリッツ」に載っている「THE3名様」みたいなのが作れるようになりたいですね。ファミレスにただ座ってるだけのマンガなんですけど。
舛成 『かみちゅ!』はやっていて、楽しいですよ。なかなかこういう仕事を、やらしてもらえる演出もいないからね。
●公式HP
http://www.aniplex.co.jp/kamichu/
●TV放送情報
テレビ朝日/毎週火曜日26:40〜
朝日放送/毎週木曜日27:01〜
名古屋テレビ/毎週水曜日27:08〜
●DVD情報
「かみちゅ!1」
ANSB-1031/カラー/本編約50分/リニアPCM(本編)、ドルビーデジタル(コメンタリー)/片面1層/16:9
※本編は、TV放映+追加カットも収録された「ディレクターズカット版」とも言うべき内容になっている
価格:5250円(税込)
発売日:2005年8月24日(全8巻・毎月リリース)
収録内容:1話「青春のいじわる」、2話「神様お願い」
音声特典:全話オーディオコメンタリー
初回特典:羽音たらく描き下ろし特製ピンナップ
発売元:アニプレックス
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(05.08.04)
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