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あの声、あのキャラ、あの作品
堀江美都子と『魔法少女ララベル』(2)
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―― 『ララベル』は最初の段階から、堀江さんで行きたいという事で話が来てたんですか。
堀江 これはそうです。オーディションがなかったですからね。やっぱり普通の役者さんと、入り方が違いますよね。普通、皆さんは一応オーディションがあるのに、私はいきなり主役でスタジオに入ってしまっている。そういう入り方はしんどいですよ(苦笑)。
―― うがった見方なんですけど、ララベルって人間界に慣れてない女の子で、周囲からすると不自然な事をしてしまう役じゃないですか。そういったキャラクターの個性も計算に入ったキャスティングだったんじゃないかと思うんですが。
堀江 確かに、ララベルについては下手な方がよかったと思いますね。私も、後で考えて「ああ、下手な方がいいんだなー」って(笑)。他の人と世界観が違うみたいな、テンションが違うみたいなね。今観ると、初々しいかもしれませんね。
―― 初々しかったですよ。それから、本放映当時、豪華なキャスティングだという印象がありました。
堀江 本当に豪華ですよ。ただ、それがどのくらい豪華なのか、私自身が分かってないんですから。とにかく、TVで聞いた事のある声の人達が周りにいるんで、それを珍しいと思って。「ああ、あの声だ、あの声だー」みたいな。そんなふうにやっていたんですよ。失礼な事にね。
―― いや、周りも豪華ですけど、堀江さんが主人公である事が、特別な事である気がしたんですよ。これはキャスティングされた方の狙いどおりの感想になってしまうんですけど、やっぱり主人公の声と、歌の声が同じなのは嬉しかったですよ。
堀江 『ララベル』の歌はね、キャラ声で歌っているわけではないんですよ。でも、劇中でも歌と同じようなテンションで喋ってますから。そういう意味では新鮮だったかもしれない。それまでも声優の方が主題歌を歌った事はあったじゃないですか。それはキャラクターの声で歌っていたんだろうと思うんです。
―― なるほど、他の声優さんが主題歌を歌う場合は、役の延長としての歌だったわけですね。
堀江 ところが私の場合は、歌は歌手として歌っていて、声優として主人公をやったんです。それで、ちょっと印象が違ったのかもしれないですね。
―― 『ララベル』のシリーズ中、印象的だった事はありますか。
堀江 とにかくスタジオが、凄く楽しかったんですよ。座る位置は決まっていて、私は松島さんとつかせさんに挟まれて真ん中にいました。で、横には八奈見さんがいらっしゃるし、銀河さんがいらっしゃるし。皆で守って暖かく育ててやろうというような、先輩方の雰囲気がありました。それと私、本当に大それたやつなんです。その頃、まだ若かったものだから、若気の至りでよく遅刻したんですよー。あとで聞くと、アフレコっていうのは、絶対遅刻しちゃいけないんですね。『ララベル』のアフレコって、朝10時開始だったんですよ。
―― ああ、それは大変だ。
堀江 横浜の片田舎から通っていたので、結構時間がかかって。それでも、皆さん、一言も怒らないでいてくれたんです。あとで思い出すと、鳥肌が立つぐらいゾッとします。本当にいけない事をしていたなと反省しています(苦笑)。
―― 『ララベル』を1年やられて、声優としての自信はつきましたか。
堀江 いや、自信は全然つきませんでした。ただただ周りの方にご迷惑をお掛けしたという気持ちばかりで。いつか恩返しをどっかりしなくちゃな、と思ってたんですけど、未だに果たせずいます。
―― さっき、声の仕事も楽しいものだと分かって、頑張れそうだと思われたとおっしゃっていましたが、そのきっかけになった作品はあるんですか。
堀江 『ダイケンゴー』が終わった後だったかな。『大恐竜時代』の時に青二に入っていたかどうかは、ちょっと憶えていないんですが。『ララベル』が始まる少し前に、私は青二プロダクションに入ったんですよ。青二に入った以上、声優としても頑張っていこうと思ってましたし、『ララベル』をやってみて、思った以上に楽しい仕事だと感じたんですね。歌は1人なんですけど、皆さんと作るのはこんなにも楽しいもんなんだなと思えたんです。それで声優にも力を入れてやりたいなと思ったんですよ。
―― なるほど。『ララベル』は声優の仕事に力を入れていこうと思われた、きっかけのひとつでもあるんですね。
堀江 ええ。
―― 『ララベル』以降の話もうかがいたいんですが。声優として転機になった作品はありますか。
堀江 転機になったのは『ポリアンナ物語』ですね。あれはいちばん自分的にしんどい時期で、歌もあまり歌ってなくて、声の仕事もそんなになかった時期だったんです。そんな頃に「歌はないけど、声だけでオーディションに来て」と言われて、「えー、なんでだろう?」と思ったんですね。それまでは、(自分が主役を演る場合は)歌を歌って、声を演るっていうパターンだったので。その時に受かったのが不思議でした。『ポリアンナ』は自分を救ってくれた作品だな、と思っているんですよ。ポリアンナを演るようになってから、歌を歌わない声の仕事が増えて、一時期は週に5本ぐらいレギュラーがありました。
―― 週5本ですか。それは凄い。
堀江 私の声優黄金時代ですよ(笑)。『宇宙船サジタリウス』とか『グリム名作劇場』とか。それから、『アッコ[第2期]』もその頃かな。まあ、『アッコ』は主題歌を歌ってたんで、返り咲きみたいな感じですけど。
―― 『ポリアンナ』の頃から、堀江さんの抜けのよい声が印象に残るようになりますよね。上に向かって抜けていくような感じの声が。
堀江 能天気なね。
―― いえいえ(困)。あれは他の方にはあまりない、お芝居だと思っているんですよ。
堀江 えーとね。『(小公女)セーラ』で、ドナルド君という役で呼んでいただいたんですよ。録音監督が小松(亘弘)さんという方なんですけど。小松さんが仰るには「堀江さんはね、ポンッと抜けた、何にも考えてないようなところが、『(鉄腕)アトム』を演っていた清水マリさんと共通している」と言ってもらったんですよ。
―― ああ! 言われてみれば似てますね。
堀江 そういう役者さんは、少ないのよねと言ってくださって。そんな事があったので『ポリアンナ』に決まったんじゃないかと思うんです。
●あの声、あのキャラ、あの作品
堀江美都子と『魔法少女ララベル』(3)に続く
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