web animation magazine WEBアニメスタイル

『天元突破グレンラガン』
今石洋之&中島かずき
インタビュー

■第1回
■第2回
■第3回

 
『天元突破グレンラガン』今石洋之&中島かずきインタビュー
第1回 ロボットアニメにはドリルが必要だ!!


 いよいよ放映がスタートしたガイナックスのロボットアニメ『天元突破グレンラガン』。今石洋之の初TV監督作品という事で、WEBアニメスタイル的にも大注目の作品だ。滑り出しから期待を裏切らぬ快調さで、ハイテンション&ハイクオリティの仕上がりが続いている。今回は、今石洋之監督、シリーズ構成の中島かずきに、企画の成り立ちなどについて話をうかがう事にしよう。


プロフィール
今石洋之

アニメーター&演出家。トリッキーかつパワフルな作画で知られる“アニメ界の暴れん坊”。代表作は『フリクリ』(演出・作画監督)、『DEAD LEAVES』(監督・作画監督)、『Re:キューティーハニー』(1話監督)。WEBアニメスタイルのシンボルキャラクターであるアニメスタイルちゃんを描いているのも彼。1971年10月4日生まれ。東京都出身。

中島かずき
アニメ業界にもファンの多い、劇団☆新感線の座付作家。『Re:キューティーハニー』(脚本)で初めてアニメ作品に参加し、次がこの『天元突破グレンラガン』だ。同じく今春に放映スタートした『大江戸ロケット』の原作者でもある。記事中でも話題になっているように、コアなアニメ&特撮ファンである。1959年8月19日生まれ。福岡県出身。

●2007年1月20日
取材場所/スタジオT&T
取材・構成/小黒祐一郎



── さあ、いよいよ放送開始ですよ!
今石 ああー、ありがとうございます。
── 期待してます! そもそもこれは、どんなところから始まった企画なんですか。
今石 ガイナックスで「ロボットアニメを作る」という企画がずっと前からあって。だけど、あんまり進んでいなかったんですよね。で、それを実際にやる事になった時に、僕の方から「監督をやりたい」と話をして、やる事になったんです。だから、僕が企画を起こしたわけではないんです。監督をする事になってから、作品の骨格から作り変えてはいるんですが。
── 中島さんは、どの段階からの参加なんですか。
今石 僕が参加してから、中島さんにお願いする事になりました。「こんな方向でやりたい」と話をして。
中島 実はですね、今石さんが監督になる前から、この企画の話は聞いていたんですよ。佐藤(裕紀)さんに呼び出されて「ちょっと参加してもらえませんか」と言われていたんです。だけど、その後、ずっと間があいて、今石さんが監督になって正式に声をかけられた感じですね。
── なるほど。今石さんはどのようなプランで、この作品に臨まれているんですか。
今石 プランですか。「最近少なくなりつつある王道的なロボットアニメを、ちゃんと少年マンガ的な語り口で、正面切って描く」という事が大前提で。それを中島さんの味つけでやるという事ですね。
── 味つけというのは、具体的に?
今石 具体的に言うと、なんて言うんでしょうね。やっぱり『Re:キューティーハニー』をやった時も、シンクロ率が異常に高かったんで(笑)。……シンクロ率って言うな!(←セルフ突っ込み)
── ああ、今のは突っ込むところだったんですね(笑)。シンクロしたのは主に愉快な部分?
今石 愉快な部分も、根っこの部分もですね。僕が主に不得意な、真面目な部分もちゃんと書ける。で、なおかつバカな部分も共有できるっていうところで、理想的な方なので。僕の中では、他に頼む候補はいなかったという事ですね。
── “アニメ心”的には、どうなんですか?
今石 “アニメ心”的にはむしろ大先輩なので、そういう意味では、毎回教えられるばかりですね(笑)。
中島 (笑)。
今石 ダイナミックプロの血筋や、ロボットアニメの歴史に関しては、僕よりもはるかに詳しい。僕は主に80年代ですけれども、中島さんは70年代からのロボットアニメの歴史に詳しいんです。そういう意味でも信頼が置けるという事です。


── 監督からの中島さんへの要望は、具体的にはどんな感じだったんですか?
中島 最初は「ドリル」ですよ。「何がやりたいんですか?」と聞いたら、「ドリルです!」って(笑)。本当にそう言われましたからねえ。それから、カミナとシモンですね。ああいう兄貴分と弟分がいるというシチュエーションと、それと「世代交代の話をやりたい」と。一番最初にそのみっつについて言われましたね。
── なるほど。ドリルというモチーフは、どこら辺からきているんですか?
今石 これは他の取材でも言っているけど、真面目に考えると、ドラマをマジメにやろうとすればするほど、ロボットみたいな不合理な存在は要らなくなるんですよ。でも、それこそが欲しいわけなので、ロボットを作品の中心に置くためには、別にもうひとつアイテムが必要だったんですね。それがドリルなんです。あの形のドリル(円錐形のドリル)というのは効率が悪くて、本来なら何も掘れないんですよね。あれで掘るというのは100パーセント幻想なんですけど、幻想であるがゆえに、「ドリル」は僕がやろうとしているロボットアニメの「ロボット」という存在とイコールになるんじゃないかと。それを作品の中心に置けば、作品のイメージがブレずにいけるかな。うっかりすると「この2本足で立つロボットは、どうやって動いているんだろう。いや、ホントにあり得るんだろうか」みたいなところに発想がいってしまうんだけど、そんなふうに迷わないように、ドリルから始めたかった。
── 『DEAD LEAVES』に続く、ドリルアニメ第2弾ってわけじゃないんですね?
今石 それはまあ、そうですよ。アハハ(笑)。
中島 だから「ドリル」と聞いた時に「そんなにドリルが好きなんだ」と思いましたよね。
今石 アハハ(笑)。まあ今回は股間から、ドリルがおっ立ちはしないけれども。
中島 うん。それは我慢しないとね。
今石 それは我慢していますけれども。
── 気持ち的には『DEAD LEAVES』のドリルと同じものなんですね。
今石 前面には出ないけど、気持ち的には同じだという事ですね。あと大雑把に言うと、昔のロボットアニメは、どっかにドリルがついてるものじゃないかというのもあって(笑)。
── 『マジンガーZ』はドリルミサイル?
中島 そうそう。
── 『(超人戦隊)バラタック』にはドリルがあったよね。『(大空魔竜)ガイキング』はないじゃん。
今石 『ガイキング』はミラクルドリルがあるじゃないですか。
── それは大空魔竜の方でしょ。
中島 でも、ミラクルドリルはガイキングにくっつけられますからね。
今石 ナイスフォロー、ありがとうございます(笑)。
── じゃあ、もうちょっと作品内容の話を。1話を観ると、主人公が2人いるように見えますよね。どうしてダブル主人公ものになったの?
中島 少年の成長ドラマをやりたいという話は最初からあったんです。基本的には主人公はシモンで、主人公を成長させるためのファクターとして、いろんなものがあるわけですよね。まあその中に、「ドリル」というのが非常に大きくあるわけなんですけれども。
今石 (笑)。
中島 で、ダブル主人公に見えるかもしれないけれども、基本的には、やっぱり少年の成長ドラマ。
── 対象年齢はどのくらいに考えているんですか?
今石 メインは中学生、高校生くらいですかねえ。
中島 一応、中高生ぐらいをターゲットにしているけど、子供も観られる内容です。
── 最初からそのくらいの視聴者をターゲットにしていたの? それとも最初は、もっとマニアックなものを考えていた?
今石 最初から、地上波でやる事を意識していたんですよ。
中島 要するに僕達が子供の時に観ていたような、ああいう熱い、面白いアニメをやろうというのがあったんです。だから、打ち合わせで2人で話をしていると、出崎(統)アニメの話になるんですよ。
今石 (笑)。話題が『あしたのジョー』になっていくんですよね。
── ああ、それで1話にブタが出てくるんだ。
中島 そう! 流石ですね。
今石 流石です(笑)。そこは突っ込んでいただかないと。ウハハハ(笑)。

●『天元突破グレンラガン』今石洋之&中島かずきインタビュー 第2回に続く

●公式サイト
http://www.gurren-lagann.net/

●関連記事
ガイナックスが新たに放つ次世代ロボットアニメ
『天元突破グレンラガン』製作発表会レポート


【情報局】GAINAX入魂の最新作
『天元突破グレンラガン』放映スタート迫る!




(07.04.12)

 

 
  ←BACK ↑PAGE TOP
 
   

編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
Copyright(C) 2000 STUDIO YOU. All rights reserved.