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 今回の更新で「アニメやぶにらみ」がいよいよ最終回です。雪室さん、楽しいコラム、ありがとうございました。「もっとアニメを観よう」には馬越嘉彦が登場。「羽山淳一アニメ&東映Vアニメ」を語ってくださるという、なかなかマニアックな企画です。ちなみに東映Vアニメとは、東映ビデオがリリースしていたOVAのレーベルで、看板タイトルは『湘南爆走族』シリーズや『BE-BOP -HIGHSCHOOL』シリーズ。不良ものや、青年マンガ原作のものが多く、そのためかマニアックなファンの間で話題になる事は少ないのです。それとニュースは「METHODS」の復刻の話題
 
 以下、その「METHODS」について。
 
 「METHODS 押井守『パトレイバー2』演出ノート」は1993年に公開された『機動警察 パトレイバー2 the Movie』に関する資料集。いや、それを素材にした映画技法書か。今までも何度か話題にしたけれど、『パトレイバー2』はレイアウトシステムを駆使し、実写映画的な、見応えのある映像を作り上げた作品である。レイアウトとは、アニメーションの画面の設計図の事だ。僕はレイアウトに力を入れて、見応えのある映像、説得力のある空間を作り出した作品を、レイアウトアニメと呼ぶのだけれど、正に『パトレイバー2』はレイアウトアニメを代表するタイトルである。
 この「METHODS」には、制作に使われたレイアウトが大量に掲載されており、それぞれに押井守監督自身によるコメントが付けられている。掲載されたレイアウトの見応えは、凄まじい程のもの。仕上がった映像を見ても凄いと思うが、線画であるレイアウトも格別だ。
 押井監督によるコメントの内容は多岐にわたり、各カットの演出的な狙い、具体的にその構図をとった理由、あるいはそこから発展した技術論等。勿論、興味深い内容で、これも、ああ、ひとつのカットにそこまで考えるのかと感心させられる。流石は押井監督。この本が発売された時には、この人、ここまで手の内を見せていいのかしらんと思ったものだ。
 勿論、不満がなかったわけではない。具体的にどういったシステムでレイアウトが描かれたのかが、ちょっと分かりづらい。個々のカットについてレイアウターのコメントも読んでみたい。だが、そこまで望むのは酷。いや、それはこの本の趣旨とは違うのか。
 
 80年代前半に宮崎駿のレイアウト、絵コンテがアニメ誌等に掲載されて、アニメ界全体の制作システムに大きな影響を与えた。「METHODS」の登場は、それに次ぐアニメ出版が起こした事件であったと思う。どれだけ画面を設計すれば、あれだけの映像を作れるかという事を、きっちりと見せてくれているのだ。この本に影響を受けたクリエイターは少なくないだろう。
 演出家やアニメーター志願者でなくても、興味深い本である。「アニメスタイルが選ぶ10冊の本」などという企画を組む時には、間違いなくそのセレクションに入る一冊。「ホルスの映像表現」や「作画汗まみれ」と並ぶタイトルだ。今回だけの復刻ではなく、若いファンや学生が興味を持った時に、何時でも入手できるような形になればもっとよいのだけれど。
(03.08.23)

更新情報(03/08/23・第92回)
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