小黒 と言うと……『鉄人』のテレコムの回は御覧になってます?(注6)
森本 観ました観ました。あれも好きですよ。ロボットが力が抜けた感じで止まるのがメチャ格好いいな、と思って。なんだろうね、ああいうのって。リアリティと言うか、妙な説得力がある。やっぱり演出の力なんだろうけど、つまりは考え方ですよね。ああいう、ものの考え方には、相当影響されました。
小黒 細かくなりますけど、『カムイの剣』ではどこをやられてたんですか。
森本 後半アメリカから帰ってきて、忍者の仲間を入れて、バサッと脱ぐところがあるでしょう。そこから、バンバンってやって、最後にみんなを斬って、ハアハアと息をつくところまで。
小黒 じゃあ、もうひとつ。『ボビーに首ったけ』はどこをやられているんですか(注7)。
森本 あれはね、たかしさんと半分半分なんだ。
小黒 えっ?
森本 白黒の鉛筆画のバイクシーンがあるじゃない?
小黒 はいはい。あそこは、なかむらさんと森本さんなんですか。
森本 前半と後半に分けたんだけど、どっちがどっちをやったのか、ちょっと思い出せないなあ。
小黒 ……話を戻しますが、さっき壁にぶつかったって、おっしゃってましたよね。
森本 それは『ピーク』ぐらいの時かな。
小黒 ずっと後なんですね。
森本 自分で作品を作るようになって、「なんのために動くの?」というところで、ぶつかったんだよね。『ピーク』の時に、俺がかつてそうだったように、色々やらせてもらえるだろうと思った原画マンが参加してくれたんだけど、その時は演出としてものを考えているから、「それはダメ」って言う事が多くてね。「なんで森本さんがそんな事を言うの?」って驚かれちゃうんだよ(笑)。そうやって、どんどんドツボに入っていった。
小黒 初監督の『ロボットカーニバル』の時にはまだ、そうじゃない?
森本 あの頃は楽しかったんだけどね(笑)。
小黒 じゃあ、アニメーターとしての悩みは、その後ないんですか。
森本 いや、『AKIRA』の時はあります。
小黒 なるほど……。じゃあ、『AKIRA』の前に『迷宮物語』の話を聞かないとまずいかな。『迷宮』の時は、悩みはないんですか。
森本 そういう意味では『迷宮物語』も大きいですね。 |
(注6)『鉄人』のテレコムの回
『鉄人28号[新]』の第8話「恐怖の殺人合体ロボ」。テレコム・アニメーション・フィルムが作画を担当しており、作画監督補は友永和秀。
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(注7)『ボビーに首ったけ』 片岡義男の小説を原作にした劇場中編。実験的な手法を多く取り入れた意欲作である。監督は平田敏夫。アニメーション制作はマッドハウス。
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