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animator interview
なかむらたかし(4)


小黒 ちょっと話を戻しますね。『幻魔大戦』についてうかがいたいんですけど。マッドハウスや、りんたろうさんとのお仕事は、あれが初めてですよね。
なかむら 以前から、りんさんの作品に関わってみたいと思っていました。りんさんの表現のスタイルが面白かったんです。それと、俺が、16〜17歳の頃に、大友(克洋)さんの漫画を見たんです。青年誌に載っていたものを。その時から、大友さんの漫画に惹かれて、キャラクターが大友さんなら、これは是非やってみたいと思ったんです。あの頃も、作品全体の事よりも、絵コンテがどれくらい魅力あるカットを作ってあるかが重要だった。
小黒 魅力あるカット?
なかむら 全体の流れじゃなくて、そのカットカットが「これ、面白そう」って思わせるようなコンテに惹かれていたような気がする。だから、りんさんの絵コンテ見た時に「やりたいところは、ここと、ここだ」って、先に自分で思っちゃったぐらい。
小黒 そういえば、りんさんとの打ち合わせの時に、自分で新宿のシーンをやりたいとおっしゃったそうですね(注12)
なかむら そうです。最初にニューヨークのシーンを振られたんだけど、それも面白かったんだけど、新宿のシーンもやりたかった。暗闇からベガが出てきて、ああいう工事現場で超能力を使う。それこそ、アニメーターなら誰だって描きたいと思うところじゃないかな。
小黒 (笑)。新宿はどこから担当したんですか。
なかむら ベガが出てくるちょっと前ぐらいかな。
小黒 東丈が、ピンク映画館の前を通ったりとかは違うんですか?
なかむら あっ、あの辺もそう。それから、変な通行人が道路にいる辺りも。
小黒 ニューヨークは、ソニーの手下と警官隊の対決の辺りでしたよね。どこからやっているんですか。
なかむら ニューヨークは何処だったかな、ソニーが出てくる辺りからかな? ローラースケートで。
小黒 『幻魔大戦』の後の大きな作品は何になります?

(注12)りんさんとの打ち合わせの時に
「アニメスタイル」第2号「りんたろうのアニメスタイル」を参照。
なかむら 『ナウシカ』だな。宮崎さんと一緒に仕事ができた作品だからね。宮崎さんの中でも、『ナウシカ』は好きな作品だよ。(注13)
小黒 ご自分の手応えとしてはどうだったんですか?
なかむら う〜ん、どうだろうなあ。
小黒 宮崎さんの印象はどうですか。タイムシートや原画を細かく見る演出家って、当時はそんなにいなかったんじゃないですか。
なかむら そう言えば、そうだよね。あんなにずっと机の前に座っている監督がいるとは思わなかったよ。まず、「宮崎さんってこんな人なんだ」っていうのが印象的だったな。気さくな感じで、今まで自分が知っていた監督とは、ちょっと違ったかもしれない。それから、仕事に対する姿勢や情熱が凄いと思ったね。
小黒 『ナウシカ』って、なかむらさんにしても金田さんにしても、それまで宮崎アニメに参加していなかった人が大勢、参加していましたよね。
なかむら そうです。だから、宮崎さんも大変だったと思う。宮崎さんの作品は、基本的には1本のフィルムになった時、1人のアニメーターがやったような統一された動きでなければならず、その完成度を保つ事の大変さはよく分かります。だから、宮崎さんと仕事をする時には、勉強のために関わりたいと思って参加する。それに対して、りんさんの作品では、アニメーターとしての技術を、思う存分出せる。そういう違いがあると思う。どちらがいいとは思わない。結局、作品以前に、個々のアニメーターがどう関わるかという問題だから。
小黒 そういう意味では、りんさんと宮崎さんって対照的ですよね。
なかむら 対照的。本当に対照的だよね。
小黒 ただ、『ナウシカ』って、なかむらさんを含めて参加しているアニメーターの個性が見える方だと思いますよ。
なかむら 見える?
小黒 見えますよ。
なかむら そうかな。自分でやってるから、「ここが金田さん」とかって分かるけど。
小黒 後のジブリの作品に比べれば『ナウシカ』は分かりますよ。
なかむら だとしたら、あの宮崎さんでも金田さんのクセは抑えきれなかったという事ですね。それにつけても、宮崎さんの作品を観るたびに、確実な演出力があって、それにコントロールされたアニメートでなくてはならない、という事を思うわけです。余計な動きは要らないとか、ここはこう動いて欲しいとか。当たり前ですが……。
小黒 なかむらさんが、そういう風に「動かすだけじゃ、ダメなんだ」と思うようになったのは、いつぐらいからなんですか。
なかむら 自分で「こんな作品を作りたい」と思いはじめてからかもしれないね。自分で企画を出したりするようになってから。
小黒 すると『AKIRA』の後ですね。
なかむら 『AKIRA』の後だね。
小黒 なかむらさんの作品歴の中で、『AKIRA』も重要なターニングポイントになった作品だと思うんです。その後、仕事の仕方がかなり変わりますよね。
なかむら そうかもしれません。『AKIRA』までが自分の限度だったかもしれない。ああいったリアルなキャラクターを動かすという事を含めて。『AKIRA』まで、色んな作品で原画を描いたり、作監をやったり、力のある演出家と劇場クラスのものに関わってきて、ようやく自分の何かを表現したくなったという事です。
小黒 つまり、『AKIRA』まではアニメーターなかむらたかしとしての活動で。その後は、監督なかむらたかしになっていった?
なかむら いや、監督というよりはね。……クリエイトする欲求っていうのは、基本的には個人的なものなんだよね。その個人的な欲求を誰かのために使うんじゃなくてね、自分のオリジナリティを出していくために、力をつぎ込む方向に変わっていったという事だと思う。

(注13)『風の谷のナウシカ』
彼は、冒頭の王蟲が暴走するシークエンスと、後半のブリッグとコルベットの雲海での戦闘の原画を担当。
小黒 『AKIRA』の後の、『ピーターパンの冒険』や『バニパルウィット』では、御自身のキャラクターでおやりになっていますよね。(注14)
なかむら チャンスがあれば、できるだけ、そういう風にやっていきたいと思う。そして、キャラデザインも、所謂リアルな方向にはあまり行かないんです。そこには子供の頃観たアニメの記憶があり、そのラインを越えられないというか、越えたくないというのか。それ以外のセル画の画に魅力を感じないんです。リアルなキャラクターだと、どんなに動きが巧みでも、その分だけ、人物の薄っぺらさを感じてしまうんです。それと、等身の高いものは描きづらいしね。尊敬する高畑さんの『おもひでぽろぽろ』観たとき、思ったんです。現実のシーンって、かなりリアルだったけれど、回想シーンの漫画っぽい方が、明確に感情面が伝わってきたんですよ。 しかし、そうは言っても、また何かの加減で変わるかもしれませんが……。

(注14)『ピーターパンの冒険』と『バニパルウィット』
それぞれ代表作。『ピーターパンの冒険』は名作劇場の1シリーズで、キャラクターデザインと場面設定を担当。『バニパルウィット』は彼のオリジナルの劇場作品。監督、原作、脚本、キャラクターデザイン、作画監督を担当している。

●「animator interview なかむらたかし(5)」へ続く

(00.12.06)


 
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