第128回 『幻魔大戦』
『幻魔大戦』は、1983年3月12日に公開された劇場アニメーションだ。トランシルバニア王国の王女ルナは、宇宙の意識エネルギー・フロイから、幻魔の襲来を知らされる。幻魔とは、宇宙に存在するあるゆるものを滅ぼそうとしている存在である。ルナによって、異星のサイボーグ戦士ベガが復活し、次いで日本の高校生である東丈が、サイオニクス戦士として覚醒した。やがて、幻魔の侵攻が本格化し、ルナのテレパシーに応えて、世界中のサイオニクス戦士が結集するのだった。
監督は、劇場版『銀河鉄道999』や『宇宙海賊キャプテンハーロック』を手がけた、りん・たろう、キャラクターデザインは大友克洋、作画監督は野田卓雄。原画に関しては、なかむらたかし、川尻善昭、大橋学、鍋島修、森本晃司、梅津泰臣と、今の目で見ると、実に豪華なメンバーが並ぶ。クライマックスにおけるサイオニクス戦士と火焔龍の戦いを描いた金田伊功は、スペシャルアニメーションの役職でクレジットされている。美術監督として椋尾篁、美術として男鹿和雄、窪田忠雄が名前を連ねている。これも贅沢なスタッフ編成だ。
振り返ってみると、今までの人生で一番期待した映画が『幻魔大戦』だったのかもしれない。その理由は前回書いたように、角川映画のアニメ進出第1弾であり、りん・たろう監督作品であり、最先端の作家である大友克洋がキャラクターデザインを務めており、ハルマゲドンという過激なモチーフを扱った作品であったからだ。同年代のアニメファンの多くにとっても同様だったのではないかと思う。これも前回書いたが、僕が小説版『幻魔大戦』のファンだったのも、先行公開されたビジュアルの格好よさも、期待した理由だ。キース・エマーソンが音楽監督を担当する事で、この映画に興味を持ったファンもいたのだろうが、僕は当時も今も洋楽にはてんで疎いので、事前にはピンとこなかった(実際に映画を観てから、彼が手がけた曲を素晴らしいと思った)。
さらに言えば、僕はアニメブームの次のステージを『幻魔大戦』に求めていたのだろうと思う。『宇宙戦艦ヤマト』的なものにはもう飽きていた。『機動戦士ガンダム』に関しても、劇場版完結編である第3作『めぐりあい宇宙編』の公開から、1年が経っていた。アニメブームはすでに終焉に向かっていたのかもしれないし、ひょっとしたらすでに終わっていたのかもしれない。ただ、当時の僕はアニメブームが終わるかもしれないなどとは思いもせず、『ヤマト』『ガンダム』を越える新しいアニメの出現を待っていた。次々に発表されるTVシリーズや劇場アニメをチェックし、それぞれを楽しみ、時に感動し、時に笑い転げていたけれど、どこかで「もっと凄いアニメが出現しないものか」と思っていた。かつての『ヤマト』や『ガンダム』のように、本気で観られる作品が登場しないかと思っていた。そんな時に、期待できる材料が山ほど揃った『幻魔大戦』が登場したのだ。
それでは、実際に観た『幻魔大戦』が、僕の期待に応えてくれる作品だったかというと、ある意味においては期待以上の出来だったし、ある意味においては期待外れだった。……と、ここまで書いたところで、今日の「WEBアニメスタイル」を更新しなくてはいけない時間になってしまった。申し訳ないが、この続きは明日に!
第129回へつづく
(09.05.20)