第141回 『ザブングルグラフィティ』と『ドキュメント 太陽の牙 ダグラム』
1983年7月9日に『ザブングルグラフィティ』『ドキュメント 太陽の牙 ダグラム』『チョロQダグラム』の3本立てが劇場公開された。いずれも日本サンライズ(現・サンライズ)の作品。ちょっと変わったプログラムだった。
『ザブングルグラフィティ』は、TVシリーズ『戦闘メカ ザブングル』に少しだけ新作を加えて、編集し直したものだ。この作品に関しては、公開以来、一度も観返すチャンスがないので、この原稿を書くにあたって再見しようと思い、レンタルショップでビデオを探したが見つからない。都内の某ショップにある事は分かっているのだが、ここのところずっと貸し出し中なのだ。ネット配信されている事も分かっているが、僕のパソコンはMacintoshなので、配信サービスを受ける事ができなかった。そういったわけで、以下は記憶モードで書く。間違いがあったら申し訳ない。
『ザブングルグラフィティ』は、1話から最終話までのストーリーを追うかたちではなく、名場面集的な作りだった。劇中に「これが動撮だ!」といって、制作過程のビジュアルを見せるコーナーもあった。観返したら別の感想を抱くかもしれないが、ロードーショーで観た際には「これは映画になってないなあ」と感じた。上映中に、なんでこんなものを劇場で観ているのだろうと思ったのは、「'80年アニメーション ザ・ベストテン」以来だった。この映画で、アーサーが実は生きている事が分かり、最終話で失明したエルチの目も、見えるようになる事がほのめかされていたはずだ。それについては「え〜〜!」と思った。『ザブングル』はTVシリーズ終盤において、物語が少し暗くなっており、僕は残念に感じていた。ではあるが、放映を観ていた時は、そういう物語なのだと受け止めていた。それを後になって「生きてました」とか、「治ります」と言われてもなあ、と思ったわけだ。
『ドキュメント 太陽の牙 ダグラム』については、劇場に行くまでは、あまり期待していなかったのだけど、こちらの方がずっと満足度が高かった。TVシリーズ『太陽の牙 ダグラム』で描かれたデロイアの動乱を、ドキュメンタリータッチで再構成した作品だ。全75話の内容を、わずか80分に圧縮している。『ダグラム』のTVシリーズは政治劇であり、ロボットものだったが、この劇場版は歴史ドキュメンタリーであって、ロボットものではなかった。TVシリーズの主人公であったクリン・カシムの出番は少なく、ヒロインのデイジーにいたっては、どこかに出てたっけ? と思うくらいの軽い扱いだった。そういった思い切りのよい作りが気持ちよかった。
「第71回 『ダグラム』と『ゴッドマーズ』」でも書いたように、僕は『ダグラム』に関しては、あまり熱心な視聴者ではなかった。大きな物語の流れも理解できていなかったはずだ。この劇場版で、シリーズを圧縮したかたちで観せられて、ようやく全貌が理解できた。「ああ、『ダグラム』ってこういう話だったのか!」と思った。TVシリーズの物語の進みが遅かっただけに、スピーディに話が進むのも気持ちよかった。僕にとって『ダグラム』の再編集作品としては、ベストの出来だった。
もう1本の『チョロQダグラム』は『ダグラム』のキャラクターとメカを、頭身の低いデフォルメキャラにしたギャグアニメ。9分の短編だった。監督は『ドキュメント 太陽の牙 ダグラム』と同じく、TVシリーズの原作・監督でもある高橋良輔。キャラクターデザインや作画監督はクレジットされていないが、原画としてスタジオライブの若手の名前が、エンディングに表記されている。スタジオライブだけあって、作画が『Dr.スランプ アラレちゃん』調だった。
これに関しては、呆れたのが半分、楽しんだのが半分だった。ギャグ作画は頑張っていたし、短い時間にネタを一杯詰め込んでいた。「本編があんなにマジメなのに、どうしてこんなふざけたものを作ったんだろう」と思いつつも、観ている間はそれなりに楽しんだ。それから『ドキュメント 太陽の牙 ダグラム』では影が薄かったクリンが、こちらではしっかり主人公になっていた。
第142回へつづく
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(09.06.08)