第142回 『DOUGRAM vs ROUND-FACER』
「アニメ様365日」は1983年作品を取り上げている最中だが、話の流れを切って、今日は少し後の作品に触れる事にする。昨日の原稿を書くために、DVD「太陽の牙ダグラム THE MOVIE COLLECTION」を、レンタルで観た。これは『ドキュメント 太陽の牙 ダグラム』と『チョロQダグラム』を収録したソフトで、映像特典として「イベント用予告集」「劇場版予告編」『DOUGRAM vs ROUND-FACER』が収録されている。これはひょっとしたら、と思いつつ『DOUGRAM vs ROUND-FACER』を再生してみたところ、ああ、やっぱり。それは超レアアニメ「3Dダグラム」だった。大袈裟に言えば、関連作品が少ない『ダグラム』唯一のOVAだ。まさかこんなかたちでソフト化されているとは思わなかった。内容が内容なので、前知識なしにこの映像を観たファンは、唖然としたのではないだろうか。
「3Dダグラム」には物語らしい物語はなく、ただ、コンバットアーマーが戦うだけ。全部で3分にも満たないフイルムだ。最初のシークエンスは、どこかの星でのダグラムとラウンドフェイサーの撃ち合い。次のシークエンスがびっくりで、2体が宇宙空間を飛んでしまう。宇宙での戦闘の後、2体は別の星に着陸し、また戦闘を続ける。ラウンドフェイサーはムチのようなを武器を腕から放つ。僕はコンバットアーマーの設定には詳しくないけど、本編ではあんな武器は装備されてないはずだ。戦いにはダグラムが勝利し、ヒーローものっぽい決めポーズをとったところで「END」の文字が出る。しかし、その後も戦闘は続く。ENDマーク後、ダグラムは地球のどこかと思われるビル街を飛び回り、宇宙要塞のようなメカを撃破する。単体の作品として観ると、突っ込みどころ満載というか、突っ込んでもらうために作られたフィルムにしか見えない。コンバットアーマーはアニメ史上空前のリアルメカであって、単独で宇宙空間を飛行なんてとんでもない。それに、このフィルムのコンバットアーマーは、妙に動きがスピーディーだ。エンドマークの後の飛行している姿は、まるで『蒼き流星SPTレイズナー』のSPTのようだ。
これは日本ビクターが発売していたVHDのアニメマガジン「アニメビジョン」に収録された作品だ(アニメビジョンについては、前にコラムで書いたので、そちらを読んでいただきたい)。メディアがメジャーなものではないので、発表時に観たファンは少ないだろう。当時、VHDは3D機能を売りにしており、アニメでも3D作品を制作しようとしていた。そのテストケースを兼ねて作られたのが「3Dダグラム」だった。「太陽の牙ダグラム THE MOVIE COLLECTION」に収録されている映像は2Dだが、「アニメビジョン」収録時には確かに3Dだった。作画はアニメアールと思われるが、確認した事はない。作画自体はかなりいい。
『DOUGRAM vs ROUND-FACER』が収録された「アニメビジョン」の発売が1987年1月。同年7月に、そのノウハウで作られた3DのOVA『DEAD HEAT』がリリースされている。手元に当該号の「アニメビジョン」がないので確認できないが、『DOUGRAM vs ROUND-FACER』はエンドマークまでで1作品。その後の部分は3D映像のサンプルとして、別の号に収録されたのだと思う(違っていたら申し訳ない)。
「アニメビジョン」の編集スタッフだった僕は、当時、「どうして『ダグラム』を3Dにしたんですか?」と、「アニメビジョン」のプロデューサーに尋ねた。特に日本ビクター側が『ダグラム』を選んだわけではない、というのが回答だった。日本サンライズ(現・サンライズ)側が3Dにするなら、このタイトルがいいのではないかと提示したのが『ダグラム』だったのだそうだ。多分、映像ソフト化されていないタイトルだったので、扱いやすかったのだろう。
制作意図は分かる。3D効果のある画を作るために、コンバットアーマーに宇宙空間を飛行させたり、派手な戦闘をさせたりしたのだろう。だけど、いかに3D効果を楽しむための映像とはいえ、マジメな『ダグラム』ファンがこれを観たら怒るだろうなあ。「アニメビジョン」の編集作業をしながら、そう思っていた。
第143回へつづく
(09.06.09)