第392回 『レモンエンジェル』
『レモンエンジェル』は、深夜枠でTV放映されていた美少女アニメだ。『くりぃむレモン』の関連作品であり、端的に言ってしまえば「TVで放映している『くりぃむレモン』」だった。女の子が下着姿になる程度の大人しいエピソードもあれば、「ほとんどポルノ」になってしまっている過激な話もあった。裸なんて当たり前。今ならとてもTV放映できないような内容が山盛りだった。
5分番組であり、第1期に関しては毎週火・水・木の深夜1時から放映。ただし、放映時間はズレる事が多かったと記憶している。自分の視聴について話せば、アニメージュ編集部で終電近くまで仕事をして自宅に帰ると、だいたい『レモンエンジェル』が始まる頃だったはずだ。留守録などはせず、観られる時に観るといった感じのイージーな視聴だった。熱心に観ていたわけではないけれど、インパクトのある番組ではあった。「ああ、こんなものをTVで放映してしまうのか」という驚きがあったし、そのあまりの内容に脱力したり、呆れたりしていた。異色作に感心した事もあった。
DVD BOX解説書などの資料を参考にして、作品の概略について説明しておく。『レモンエンジェル』は全3シリーズが作られた。第1期の放映が1987年10月から12月、第2期が1988年2月から3月、第3期が1988年7月から9月だった。第1期は火・水・木と、週に3話を放映。第2期と第3期は『レモンエンジェル』は週1回で、非アニメ番組「レモン白書」などが別の曜日に放映されていた。アニメーション制作はAICで、キャラクターデザインは宮崎県人。監督に相当する役職については、手元にあるどの資料を見ても表記されていない。
『レモンエンジェル』は、アイドル番組でもあった。『くりぃむレモン』イメージガールコンテストで選ばれた島えりか、絵本美稀に、すでにアイドルの卵であった桜井智を加えた3人で結成されたのが、アイドルグループ“レモンエンジェル”だった。『レモンエンジェル』の主人公である3人の女の子は、この3人と同じ名前であり、声も彼女達がアテていた。劇中でも、彼女達の歌が頻繁に流されていた。
また、この番組はアニメキャラのえりか、美稀、智をアイドル的に扱っていた。個々の話の作りもそうだし、彼女達が視聴者に向かって話かけているような事もあった。『くりぃむレモン』の亜美にアイドル的な人気がついた事を踏まえて、戦略的に、美少女アニメのヒロインをアイドル的に売っていこうとしたのだろう。
作りとしては、とにかくユルかった。内容もユルいし、アニメーションとしてもチープだった。キャラクター作画はそんなには悪くはなく、美麗な回もあったが、驚くくらい動きが少なかった。主演3人の素人丸出しの芝居も強烈だった。ただし、演技に関しては、制作側が素人っぽさを要求している節もあり、必ずしも主演3人のせいとは言えないはずだ。
忘れられない怪作は、34話「赤い光の伝説 第二章・暗黒城の秘密」だ。智が女忍者になって活躍するエロチック時代劇で、後半は巨大ロボット同士の戦闘となる。三日月を効果的に使った画面構成も印象的だし、止めが多いとはいえ、巨大ロボットの作画も大健闘。演出的にも、作画的にも『戦え!! イクサー1』『戦国奇譚 妖刀伝』『マシンロボ クロノスの大逆襲』『破邪大星 ダンガイオー』といった、当時の流行りのラインを取り込んだ感じだった。妙に緊張感のあるフィルムになっていたのも印象的。敵巨大ロボットが出現して、これから戦いが始まるところで終わってしまう投げ出しっぷりが凄まじい(サブタイトルに「第二章」とあるが、先行して7話「赤い光の神話」というエピソードがあった。こちらはヒロイックファンタジー&触手もので、やっぱりバトルの決着がつく前に終わってしまう)。
ワンポイントギャグなら、28話「Love Motion」のラスト。智と教育実習生の先生の関係を描いたエピソードで、話が一段落したところでストップモーションとなる。普通ならそこで終わるわけだが、終わらなかった。智が「時間、余っちゃった? ……じゃ、おまけ!」と言って、自分のシャツをぺろんとめくって、オッパイを見せてからオシマイ。劇中でも胸を見せていたのだが、尺が余ったので、もう一度見せたという腰が抜けそうになるギャグだった。
2005年に『レモンエンジェル』はDVD BOXになった。その時に、半ば怖いもの観たさで一気観したのだけれど、予想以上に楽しめた。今観ると、チープなところも、ユルいところも、アジとして楽しめる。1980年代的な甘ったるい感じが濃厚で、それがたまらなかった。それから、まとめて観ると、破壊力が倍増する感じだった。自分が『レモンエンジェル』を一気観する日が来るとは思わなかったし、こんなに楽しんでしまうとは思わなかった。
第393回へつづく
(10.06.22)