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『天元突破グレンラガン』今石洋之&中島かずきインタビュー
第2回 “なんちゃって”の人は出てきません
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中島 最初に検討稿を2話まで書いたわけですね。大きな世界観を決めて、検討稿を出したら、今石さんに突っ返されて「俺のやりたいアニメは、こんなもんじゃないんだ!」と言われまして。
今石 へへへへ(笑)。
中島 それまでね、2人とも、よそ行きだったんですよね。なんか遠慮しているような感じがあって。それで「ちゃんと話しようよ」という事になったんです。ガーッと突っ込んでやっていって「何が好きなの? 何がやりたいの?」という話になって、そこで一致したのが「『あしたのジョー2』って素晴らしいアニメだよね」という話だったんですよ。
── しかも、『2』なんですね。
中島 『2』です。
今石 『2』ですね。ウルフ金串が借金をする話が、いかに素晴らしいか(27話「ボクシング……その鎮魂歌」)。
中島 そうそう。「原作を読み込んだ上で、アニメオリジナルとしてあれが出てくるのは凄いよね」と。そしてハリマオとの試合を、Aパートだけで終わらせる、あのセンス(笑)。
今石 ハハハ(笑)。
── 「俺はハリマオなんかに興味ねーよ!」って感じですよね。
中島 そうそう。「ああいうアニメがやりたいね」っていうね。
今石 その要約の仕方はどうなんですか!!
中島 ハハハハ(笑)。『ジョー2』であったり、『宝島』であったり、『ガンバ(の冒険)』であったりっていう。出崎・杉野スピリッツの一番濃い頃。「ああいうものを、なんとかやりたい」という思いがありますね。
今石 うん。
── という事は、兄貴分であるカミナは“なんちゃって”なキャラじゃないのね?
今石 ああ、そうですよ。
中島 本気ですよ。そういう意味じゃ“なんちゃって”の人は出てきません。
今石 そう見えるところもあるでしょうけど、そうではないんです。
── 今石さんの作品を観てきた人達からすると「どっかで、いつもの“なんちゃって”になるだろう!」という予感が(笑)。
今石 いや、僕が1人でやるとそうなるんですよ。だから、そこを中島さんに抑えてもらってるんです。
中島 ですね。新感線の芝居というのは基本“なんちゃって”なんだけれども、ラストは“締める”という作風なんで。
今石 それが新感線の凄いところなんですよね。「またバカな事を」みたいな事が延々と続くんだけど、最後は感動して帰るっていう(笑)。
中島 ハハハ(笑)。
── なるほど、今回は、凄く真面目にやるんですね。
今石 まあ、そうですね。
── 「新生・今石」なんですね?
中島 だから、今回は「我慢汁・今石」。
今石 うん。我慢汁ですよ。
── なんだそれ(笑)。
今石 フフフ(笑)。
中島 「我慢して我慢して我慢するけど、ほとばしるものもある!」っていうね。
── 我慢の話は、後でもう一度お聞きしましょう。主人公メカが、顔メカになっているのはなぜなんですか?
今石 えーっと、どうしてだっけ。もう忘れている(苦笑)。つまり、キャラクター性を持たせたかったんです。ロボットをキャラクターにしたくて、なおかつ乗っている人のキャラクターが反映されているものにしたい。「顔」がついてるのは、メカがキャラクターになるという意味では一番ストレートだろうという事です。それから、ドラマの中ではあまり描いていませんが、あの世界では顔がシンボルであって、「顔がいっぱいある方が偉い」みたいな概念があるんです。
── ああ、それらしい事を劇中で言ってるね。
今石 「顔こそが、その人の全てを表す」というような世界にしているところもあるんです。それから、遠目にロボットを見ても、搭乗しているやつが怒っているのか泣いているのかも分かるという。
── なるほど。今石さんはジェネレーション的には『(超力ロボ)ガラット』や『(魔動王)グランゾート』は引っかかってないはずなので、パロディ的な顔メカにしたわけではないだろうとは思っていたけど。
今石 そうですね。『ガラット』は覚えていたけど、『グランゾート』はほとんど観てないんです。だから、周りの人に「グランゾート?」と言われて、「ああ、そう思うんだ」と。
── 若い人だと『グランゾート』を連想するでしょうね。
今石 腹に顔がついているから「ガイキング!」と言われるかな、と思ってたんですけれど、あんまり言われない。「ここに顔あったら、ガイキングだろう!」と思うんだけど。
── そういう突っ込みを期待していたんですね。デザイン関係はどうですか?
今石 メカは吉成(曜)さんですからね!
── 一言で終わりですか!
今石 もうバッチリですよ。キャラクターデザインの錦織(敦史)は器用な男なんで、僕の好みを入れた上に、自分のテイストを入れるというのも忘れないし。なんというか、キャラデザに1980年代の匂いが出てると思うんですけど。
── ヒロインとか『ダーティペア』っぽいよね。
今石 ええ。錦織は今風の新しい画も描けるけれども、80年代のテイストも嫌いじゃないという事で、ああ描いてくれていると思うんです。そういう意味では、スタッフにはかなり恵まれていますね。吉成さんは、僕が「あれにしてほしい」と言ったら、僕が「あれ」のどのへんが気に入っているのが分かる。金田系と言ったら、どのあたりの金田作品の事を言っているのか分かるわけじゃないですか(笑)。それも助かっているところです。
── 今石さん自身は、キャラとかメカのデザインラフは描いているんですか?
今石 結構描いてますよ。ホントに大まかなものですけど。最初の企画書には僕のラフしか載っていなくて、赤井(孝美)さんや武田(康廣)さんが不安に感じていて。「こんな『(はじめ人間)ギャートルズ』みたいなギャグアニメを作る気なのか!?」と言われました(笑)。
中島 ハハハハ(笑)。
今石 アニメスタイルで『ギャートルズ』を借りて観ていた頃に、企画書を描いたんですよ。マジで猿酒を出そうと思ってましたからね。
── それはちょっと野蛮な感じが残っているんだ。
今石 そうなんですよ。一回、文明が全部なくなって、地上が荒野になったところに出てきて、生きていくという話だから、「じゃあ『ギャートルズ』だな」とか思って。今回はロボットアニメのパロディみたいな事はあまりやってないつもりですが、そういう間接的な影響はありますね(笑)。
── 今回、作画の布陣はどんな感じなんですか。
今石 作画は、社内中の人間に頼んでいるので、かなり贅沢ですよ。ほとんどの話数が社内ですから。
── 『DEAD LEAVES』は監督をやりつつ、作画監督をやっていたわけじゃないですか。今回はどうなんですか?
今石 今回は当然、作監はしていないし、原画も、ちょこちょこと空いてるところを埋めるみたいな感じでしか描いてないです。コンテチェックに時間がかかっちゃうんで。色んな事をやりたいんだけど、制作にひっぺがされている毎日です。コンテチェックも、やっている回はやっているけれども、手を入れてない回はそんなに入れてないし。
── 自分が思い描いていた、理想のシリーズの監督像には近づいている?
今石 理想にはほど遠いですけどね。「画なんか1枚も描かないぜ!」みたいなスタンスでいきたかったんですけど。
── 自分では画を描かないのが理想なんだ。
今石 監督に徹して、それでも自分のフィルムにするのが理想のひとつだし、今回はそういうフィルム作りをしたかったんです。社内メンバーも、社外の人も巧い人ばかりなので、自分がいちいち原画直したりせんでもいいんですけど、なんだかんだで、チマチマと直しています(笑)。
●『天元突破グレンラガン』今石洋之&中島かずきインタビュー 第3回に続く
●公式サイト
http://www.gurren-lagann.net/
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