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■『トップをねらえ2!』秘話
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最終回
 
鶴巻和哉が語る『トップをねらえ2!』秘話
第2回 ロボット少女が主人公でない理由


小黒 鶴巻さんは『トップをねらえ!』の時はまだGAINAXにはいらっしゃらないんですよね。同じスタジオジャイアンツ出身の摩砂雪さんや鈴木俊二さんは参加しているけれど。
鶴巻 そうですね。
小黒 で、遠巻きに『トップをねらえ!』を観ていて、その後GAINAXにいらして、幾星霜を経て、「君、『トップ2』を作らんかね?」という事になったわけですよね?
鶴巻 はい。
小黒 最初はどういった条件の話だったんですか?
鶴巻 条件は、ほとんどなかったんです。「『トップをねらえ!』のパート2をやらないか? という話がバンダイビジュアルから来てるらしい。でも、やる人がいないんだよね」という話を世間話の中で貞本さんから聞いて、「僕、やってもいいですよ」と。それは『フリクリ』の最後のあたりを作っていた頃だったと思うんだけど、それを聞いた貞本さんが「え!? そうなの!?」と、すぐに飛び出していって武田(康廣)さんに「鶴巻がやってもいいと言っているよ」と話をしたんじゃないかなあ。で、「やりましょう」という事になった。しいてあげれば、「『トップをねらえ!』の続編」という以外、条件らしい条件を、少なくとも僕は聞いた事はないんです。僕がやらなければ、多分誰か他の人がやっていただろうし、場合によっては、ガイナで作らずに外注に出すという事も考えられたので、それならガイナで作った方がいいし、多分、庵野さんが作るという事はありえないと思っていたので、だったら、自分が作った方がいいんじゃないかと思って、それで引き受けました。
小黒 まあ、でも外枠として、全6話とか。
鶴巻 最初はTVシリーズとしてオファーされていたんじゃないかなあ。
佐藤 色々案が出て、『トップ!』と合わせてTV放映するようにするために6本とか、1クールものでとかのアイディアもあったと思います。
鶴巻 そうですね。最初に13本という話だったと記憶しています。TVシリーズでもよかったんですけど、最終的にはビデオで全6本という事になっていった。
小黒 やっぱり最初に最終回のラストシーンを考えられてから、話を構成されたんですか。
鶴巻 細部は違いますが、ラストについては初めから考えていました。
小黒 例えば、1作目に近い時代の物語というのも考えられたわけですよね。
鶴巻 『トップをねらえ!』が終わった後に、「ネクストジェネレーション」というのがあって、数百年にまたがる様々なお話がマンガやゲームで展開されていたんです。今回は「ネクスト」ではなく、「2」であるという事にこだわりもあったので、「ネクスト」でもできる事を、やるつもりはありませんでした。それから、少なくともノリコは登場しない話だなと思っていた。別の主人公を用意して、という事になるだろうとは最初に考えました。
小黒 『トップ2』で基本的なストーリーラインやアイディア作りに参加されたのは、誰と誰なんですか。
鶴巻 基本的には大まかなストーリーみたいなものは、自分が、1話の脚本に入るまでに作っていました。ただ、それがちゃんと一本の整合性のとれたストーリーになっていたかというと、そういうわけではなくて、1話はこんなところから始まって、途中でこんな事が起こるけれども、最終話はこうなりますぐらいの大まかなところだけ決めていました。物語のアウトラインを決めるのに結構時間がかかっていて、ネタを出すのに2年くらいかかっているのかな。
小黒 ネタというのはトップレスの事とか?
鶴巻 とか。バスターマシンをどう扱うか、とかみたいな事ですね。アンドロイドの女の子を主人公にして、というか主人公に見えるようにして、というのは割と早い段階に決まっていたんですよ。それは確か、庵野さんから言われたんじゃないかなと思うんだけど。たぶん、もうやる機会もないだろうから話してもいいと思うんですが、庵野さんがGAINAXで『光速エスパー』をやりたいという話があったんです。それがアニメなのか実写なのかわからないけど、『ふしぎの海のナディア』のころにそんな話がありまして。庵野さんには、アンドロイドが、子供ヒーロー的に活躍をする物語をずっと考えていた節があるんですよね。
佐藤 『フリクリ』を企画している頃に、『ジェッターマルス』と『光速エスパー』をネタにしてみれば、という事も言われてましたね。
鶴巻 今回も、庵野さんから「ロボットが主人公だったらどう?」みたいな話を振られて、じゃあ、今回それをやってみようかなと。結果的には、時期的に重なるかたちで、庵野さんは「キューティーハニー」を作る事になったんですけど、なんとなく繋がっているのかもしれないなあ、とは思ってはいます。
小黒 ロボ少女というコンセプトで繋がっているわけですね。
鶴巻 ひょっとしたら、それと関係なく「キューティーハニー」をやりたいと思ったのかもしれないし、自分でロボットの女の子を主人公にしろと言ったはいいけど、「鶴巻がやっているのは、俺が考えていたのとは違うぞ。俺はこういう事がしたかったのよ」と(笑)、「キューティーハニー」を作ったのかもしれないけれど、それは僕には分からないです。
小黒 ロボ少女という事なら、『まほろまてぃっく』もその頃にあったんじゃないですか。
鶴巻 いや、僕が『トップ2』の企画を初めた後から、『まほろまてぃっく』の話があったんだと思います。当時、『トップ2』とは関係なく、子供が超能力を持っている間だけチヤホヤされて、その超能力が大人になるとなくなってしまう――という話を考えていて、そのネタとアンドロイド少女を絡めたら、上手くできるんじゃないかなあと思って、そこから組み立て始めた感じです。
小黒 じゃあ、5話6話にあるような事を、先に考えていたわけですね。
鶴巻 そういう事になります。
小黒 またまた思春期をモチーフにした話だったので、てっきり榎戸さんのアイディアだと思っていたんですよ。
鶴巻 元々『トップ2』の脚本は別の脚本家が書くはずだったんです。実際に1話の初稿を書いてもらったんですけど、僕にとってもその方自身にとっても納得できるものではなかった。その時期すでに、「ローレライ」の制作に入る前に、樋口さんにコンテを発注しないとマズいという状況だったので、脚本完成を急がなくてはいけなかった。それでギリギリになって、榎戸さんにお願いする事になったんです。榎戸さんには、自分が書いたストーリー案を読んでもらって、それでなんとか「やりましょう」と言ってもらえた。榎戸さんにチェンジしてから、突貫工事、2ヶ月弱で決定稿ができているんです。1話は大変だったっていう印象がありますね。
小黒 ノノが主人公に見えて、実は主人公じゃないという構成はどうしてああなったんですか。
鶴巻 『トップをねらえ!』も実質的にはノリコの物語は4話で終わっていて、5、6話はノリコが主役じゃないとも言えるんです。5話はおねえさま(アマノカズミ)の物語だったし、6話はウラシマ効果によるノリコのドラマも入っているけど、ほとんど宇宙戦争叙事詩みたいなものだった。僕にとって元々、興味のあるネタはラルク側の方、つまり超能力をなくしてしまう側の話だったわけですし。それに対してアンドロイドの特徴というのは、永遠に生きるとか、年をとらない事。成長とは無縁の部分だと思うんですよね。ストレートに、主人公は生身の女の子で、彼女が成長していくお話にして、アンドロイドは狂言回しのように使うという事も考えられますが、今回は、ちょっと変な構造にしています。
小黒 5話、6話を観て「やられた」と思ったのがそこですよね。ノノが成長する話かと思っていたら違った。主役はラルクの方だった。
鶴巻 4話で「あれのどこが努力と根性だよ」と思うでしょうけど、そこは努力と根性じゃないですよ、という事なんですよね。
小黒 4話のラストの決めセリフで、ノノは「なぜならば!」とか言うんだけど、言っている事がおかしい。ノノの気持ちとしては「心にバスターマシンを持つ事が大事」なんだろうけど、それ以前に彼女自身がバスターマシンだろ、と思いますよね。普通だとそういった勘違いにノノが気づくという話になるんだろうけど、そのまま最終回ラストまで行ってしまった。それも意外でしたね。
鶴巻 アンドロイド的なベタネタとして、(ノノの記憶が)最終話でリセットされるというのも考えていたんですが。リセットされて、もう一回全てやり直しになる。それなら、ノノを主人公にしたまま、成長させる事も可能かなあと思って……実際に榎戸さんに渡したストーリー案には、そういうアイディアも含まれていたんですよね。その後、榎戸さんと話していくうちに、その辺のネタは切り落としていった。その段階で、6話全体として観直した時には『ラルクの物語』になるようにしよう、と決まっていきました。

●鶴巻和哉が語る『トップをねらえ2!』秘話 第3回に続く


●関連サイト
『トップをねらえ2!』公式サイト
http://www.top2.jp/
[DVD情報]
「トップをねらえ2!&トップをねらえ!合体劇場版!! BOX 」(初回限定生産)
BCBA-2786/カラー(一部モノクロ)/(予)345分(本編DISC1:約95分+本編DISC2:約95分+特典DISC1:約95分+特典DISC2:約60分)
価格:15540円(税込)
発売日:2007年1月26日
初回特典:特典ディスク1『トップをねらえ! 劇場版』上映版ディスク、特典ディスク2(キャストインタビューをはじめとした映像特典ディスク)、ノリコ&ノノ フィギュア、ブックレット、収納BOX
発売・販売元:バンダイビジュアル
[Amazon]

[書籍情報]
トップをねらえ2! 画コンテ集 ガイナックス アニメーション原画集シリーズ (ムック)
A5版 888ページ
価格:3465円(税込)
発売中
出版社: ガイナックス
[Amazon]
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(07.01.24)

 
 
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