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  「作りもの」のセリフ

 今回の「アニメの作画を語ろう」はベテラン登場。荒木伸吾さんのインタビューである。テーマは『聖闘士星矢 冥王ハーデス十二宮編』と、同じく劇場版『天界編序奏〜OVERTURE〜』について。今回は趣向を変えて、いつもの対話形式ではなく地の文にコメントを挿入するスタイルでお届けする。それと前回のヒトコトで、小池健さんのオリジナルイラストは「edge」が初めてと書いたけれど、あれは間違い。DREAMS COME TRUEのジャケットイラストの方が先だった。すいません。それから訂正がもうひとつ

 さて、以下が本題。

 新番組ラッシュもおおよそ一段落。地上波の分はだいたい目を通した。それにしても多い。やたらと多い。火曜の深夜だけでも新番組が5本もあった。『レジェンズ 甦る竜王伝説』が久しぶりの大地監督の元気一杯アニメだったり、『爆裂天使』1話冒頭のCGがとてつもないクオリティだったり、『忘却の旋律』がまたもや榎戸脚本の思春期ものだったり、印象的なものは幾つかあった。その中で僕が特に注目しているのが『鉄人28号』だ。
 横山光輝のロボットアニメの古典を、『ジャイアント ロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』も手がけた今川泰宏が映像化。やるべき人がやるべき作品を作っているという感じですな。デザインはかなり原作に近く、設定を大胆にアレンジしてはいるけれど、世界観が原作とかけ離れているわけではない。モノクロアニメ版の主題歌をリメイクして使用しているうえに、スポンサーのひとつとして、モノクロアニメ版のメインスポンサーだったグリコが名前を連ねている。昭和30年代の時代背景をしっかり押さえている事もあり、少なくとも1話に関しては、僕らの知ってる『鉄人28号』のイメージにかなり近い(OPのアクションに微妙に『鉄人28号[新]』テイストが入っているのも、作画マニア的にはマル)。
 嬉しかったのは、今川テイストの濃さ! キメるべきところはキメて、盛り上げるところは盛り上げる。今時、これほど直球の演出をする人は、なかなかいない。ベタと言えばベタなのだけど、ベタで何が悪いと胸を張って作っている。役者や芝居へのこだわりも相変わらずで、得意のノリを連発。Aパート冒頭の回想シーンでは、金田博士がバシュタールの惨劇を起こすのかと思った(笑)。役者さんが違うのに、若き日の敷島博士の芝居が呉学人そっくりなのはどういうわけだ。やっぱり出てるぞ、飯塚昭三(今川作品では初監督の『ミスター味っ子』以来のお馴染み)! そして、若本規夫の芝居は、うっとりするくらいに濃厚だ。ほとんど女性キャラが出ていないのも、今川監督らしい硬派ぶり。
 プロローグでの正太郎と鉄人初登場が、まず見事だった。港で覆面男達が、怪ロボット・モンスターで悪事を働いていると、闇の中から正太郎と鉄人が登場。鉄人がモンスターを蹴散らしたところで、覆面男の一人が「そうか、お前は……少年探偵、金田正太郎! そして、これが……」。悪人軍団が「鉄人!」と声をそろえて叫び、それに「そう! 鉄人28号〜〜!」と正太郎が応えてジャンプ! 更に鉄人得意のガッツポーズ。普通なら声を合わせなくてもいいじゃないかとか、ここでジャンプする必要はないだろうと思うところだけど、そのハッタリが今川作品らしいところ(それにしても、ここのシーンには、ものすご〜く強いデジャヴュを感じたゾ)。細かいところだけど、考え事をしている敷島博士が、持ったウチワで手のひらをポンと叩く芝居なんかも、いい味出してた。
 今川作品には「作りもの」ならではのよさがある。特にセリフがいい。それはアニメ界から、すでに半ば失われてしまっているものだ。ひょっとしたら、故長浜忠夫作品の演出を受け継ぎ、進化させたものなのかもしれない、なんて思う。

(04.04.12)

更新情報(04/04/12・第121回)
荒木伸吾さんに聞く 新生『聖闘士星矢』
湯浅政明の「週刊ユアサ」(第14回)
ごめんなさい! 新番組の数は42本でした
小川びい


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