第203回 『重戦機エルガイム』
『重戦機エルガイム』は、現在に至るまで、全話の半分くらいしか観ていない。『機動戦士ガンダム』以降の富野由悠季監督のTVシリーズで、見逃している話があるのは『エルガイム』だけだ。全話を録画はした。全話録画したのに、そんなに沢山の話を見逃したのも、自分にとっては『重戦機エルガイム』が初めてだった。
このシリーズは『聖戦士ダンバイン』の後番組であり、原作・総監督は富野由悠季。シリーズ構成は渡邊由自。今回の湖川友謙はアニメーションディレクターの役職で、キャラクターとメカのデザインは新進のデザイナーであった永野護が担当。制作プロダクションは、日本サンライズ(現・サンライズ)だ。サンライズのロボットアニメとしては、キャラクターとメカのデザインを1人で担当するのは、初めての事だった。富野監督にはデザインだけでなく、演出や作画に関しても、このシリーズで若いスタッフを育てたいという意図があったようだ。放映されたのは1984年2月4日から1985年2月23日。
以下、ネガティブな事を書くが、作品の出来が悪いと言いたいわけではない。単に、僕が乗れなかったというだけの話だ。とにかく序盤から乗れなかった。『重戦機エルガイム』ではロボットが、ヘビーメタルと呼ばれているのだが、まず、ヘビーメタルに魅力を感じなかった。同じ富野監督の『戦闘メカ ザブングル』のウォーカーマシン、『聖戦士ダンバイン』のオーラーバトラーのようなコンセプトの新しさも、ビジュアルの斬新さも感じられなかった。後に永野護は『重戦機エルガイム』を発展させたマンガ作品『ファイブスター物語』を発表する。『ファイブスター物語』についてはデザインだけでなく、世界観も面白いと思えるのだが、『重戦機エルガイム』のヘビーメタルに関しては、その魅力が分からなかった。
ドラマも、キャラクターもそそらなかった。ドラマに関しては、全体に軽いタッチであり、富野濃度が薄かった。時代に合わせてライトに作ったのかもしれないし、あの軽さが好きだという人もいるのだろうが、僕はダメだった。キャラクターに関しては、ヒロインのファンネリア・アム、ガウ・ハ・レッシィの2人の性格が苦手だった。主人公の名前はダバ・マイロード。富野作品の主人公は、ネーミングに意味を持たせている場合が多い。ダバ・マイロードの名前は、駄馬とMY ROADだろうか。この作品で好きだったのは、ダバの相棒であるミラウー・キャオを演じ、ナレーションを担当した大塚芳忠の声くらいだった。
『重戦機エルガイム』が、富野監督の作品でなければ、もっと楽しんだろうと思う。事実、同時期に僕はもっと華のない作品を楽しんで観ていた。たとえば、これを作ったのが新人の監督だったら「へえ〜、面白い人が出てきたな」と思っただろう。ファンらしい無責任さで、富野監督に対しては「富野さんなら、凄い作品を作って当然」と思っていたのだ。ここから『機動戦士ガンダムZZ』まで、僕の中では富野作品に対する不信感がつのっていった。
第204回へつづく
重戦機エルガイム DVD-BOX
カラー/1510分/ドルビーデジタル(モノラル・一部ステレオ)/片面2層×10枚/スタンダード
価格/60900円(税込)
発売元/バンダイビジュアル
販売元/バンダイビジュアル
[Amazon]
(09.09.03)