アニメ様365日[小黒祐一郎]

第325回 1986年のOVA

 昨日の原稿(第324回 『マシンロボ クロノスの大逆襲』)について、補足する。まるで、大勢の作画マニアが『マシンロボ クロノスの大逆襲』を楽しんでいたような書き方になってしまったが、実際にはそんな事はなかった。
 1986年当時、すでに作画マニアは減少していた。アニメ雑誌でも、アニメーターを取り上げる記事は減っていたし、原画集や作画を解析するようなマニア同人誌も見かけなくなった(元々そんなに多かったわけではなかったが、ほぼなくなった)。僕の周りのマニア達も、そういった活動から卒業していった。
 注目されるアニメーターは、キャラクターデザイナーくらいになり、アニメファンが動きを語るような事はなくなった。アニメーターの動きを売りにした『BIRTH』から、まだ、2年しか経っていなかった。アニメーターへの注目がなくなるのは、あっという間だった。そんな状況がこの後、10数年続く。だから、『クロノスの大逆襲』を楽しんでいた作画マニアはいたが、その数は決して多くはなかった。

 さて、今回の本題に移ろう。ここから1986年のOVAについての話だ。1983年の『DALLOS』にその歴史が始まり、1985年に激増したOVAは、1986年にも沢山のタイトルがリリースされた。


1986年にリリースされたOVA

  • 『COOL COOL BYE』(1月21日)
  • 『美少女アニメ くりぃむレモン パート11 黒猫館』(成人向・1月25日)
  • 『魔法の天使クリィミーマミ CURTAINCALL』(2月1日)
  • 『美少女アニメ くりぃむレモン パート12 いけないマコちゃん MAKO・セクシーシンフォニー 後編』(成人向・2月25日)
  • 『夢次元ハンター ファンドラ PartII デッドランダー編』(3月10日)
  • 『ザ ヒューマノイド』(3月20日)
  • 『YUMIKO KIRITA in Venus[臆病なヴィーナス]』(3月21日)
  • 『ゲバゲバ笑タイム!』(3月21日)
  • 『艶姿魔法の三人娘』(3月28日)
  • 『県立地球防衛軍』(4月1日)
  • 『超獣機神ダンクーガ 失われた者たちへの鎮魂歌』(4月21日)
  • 『GoGo虎ェ門』(4月21日)
  • 『バリバリ伝説 PARTI 筑波篇』(5月10日)
  • 『装鬼兵M.D.ガイスト』(5月21日)
  • 『るーみっくわーるど ザ・超女』(5月21日)
  • 『美少女アニメ くりぃむレモン  パート13 亜美III』(成人向・5月25日)
  • 『バイオレンスジャック』(6月21日)
  • 『ペリカンロード クラブ・カルーチャ』(6月21日)
  • 『傷追い人』(7月5日)
  • 『装甲騎兵ボトムズ ビッグバトル BATTLE OF THE HETERO GENEOUS SPECIES』(7月5日)
  • 『超・時・空・ロ・マ・ネ・ス・ク Samy』(7月5日)
  • 『リヨン伝説 フレア』(成人向・7月14日)
  • 『California Crisis』(7月21日)
  • 『COSMOSピンクショック』(7月21日)
  • 『戦え!!イクサー1 ACT-II イクサーΣの挑戦』(7月23日)
  • 『GALLFORCE ETERNAL STORY』(7月26日)
  • 『CALL ME トゥナイト』(7月28日)
  • 『那由他』(7月31日)
  • 『機甲界ガリアン VOLIII 鉄の紋章』(8月5日)
  • 『エリア88 ACTIII 燃える蜃気楼』(8月15日)
  • 『美少女アニメ くりぃむレモン  パート14 「なりすスクランブル」』(成人向・8月10日)
  • 『魔女でもステディ』(9月5日)
  • 『DREAM HUNTER 麗夢II 聖美神女学院の妖夢』(9月5日)
  • 『湘南爆走族 —残された走り屋たち—』(9月10日)
  • 『ルーツ・サーチ 食心物体 X』(9月10日)
  • 『魔法のスター マジカルエミ 蝉時雨』(9月28日)
  • 『蒼き流星 SPTレイズナー ACT-III 刻印2000』(10月21日)
  • 『BAVI STOCK・II The Revenge of Eyesman —愛の鼓動の彼方へ—』(11月10日)
  • 『夢次元ハンター ファンドラ FANDORAIII —FANTOS— FINAL STORY』(11月21日)
  • 『活劇少女探偵団』(11月25日)
  • 『アーバンスクウェア 〜琥珀の追撃〜』(11月28日)
  • 『くりぃむレモン  パート15 SF超次元伝説ラルII —ラモー・ルーの逆襲—』(成人向・12月5日)
  • 『強殖装甲ガイバー』(12月16日)
  • 『アウトランダーズ』(12月16日)
  • 『HELL TARGET』(12月16日)
  • 『バリバリ伝説 PARTII 鈴鹿篇』(12月16日)
  • 『デルパワーX 爆発みらくる元気!!』(12月21日)
  • 『ウォナビーズ』(12月25日)
  • ※参考資料:「B-CLUB」138号(バンダイ)、「ロマンアルバム Animage アニメポケットデータ2000」(徳間書店)

 リリース数は多かったが、全体に小粒になった印象だった。大作や話題作が減った。企画自体からして首をひねる作品も少なくなかった。どれとは言わないけれど、レンタルして観て、がっかりしたタイトルがいくつもあるし、「あれはひどいから、観ない方がいい」と友達に教えてもらったタイトルもある。
 1年前、2年前には、OVAという新しい舞台で、素晴らしい作品が次々と生まれるに違いない、と期待していたのだが、早くも熱が冷めはじめた。前に、全てのOVAを観るのを目標にしている友達を話題にしたが(第277回 『THE CHOCOLATE PANIC PICTURE SHOW』)、その彼も、この頃、全OVA制覇に挫折したはずだ。
 「TVアニメ冬の時代」となって、TVアニメにティーン以上を対象にした作品が減った。それでも、OVAで傑作が続出していれば我慢できたが、そう上手くはいかなかった。寂しい時代だった。まるで、自分達が好きだったアニメが終わっていくような、そんな気分だった。

第326回へつづく

(10.03.12)