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COLUMN

帰ってきた三原三千夫の万国博覧会

第4回 『カイバ』第5話


 その衝撃にしばらくの間、脳が熱くなって酔っぱらったみたいでした。ウニョンさんシナリオ、絵コンテ、演出、作監、原画の5話「憧れの星アビパ」を観て。スゴかった。他で観た事のない作品になってました。本当にビックリしたのは「作品」になってた事です。とにかく感動してしまったのは事実なんで、少し分析してみたいんですが、ほめるばっかりになってしまうんでしょうね。まず画面が素晴らしいでしょう。レイアウト、色彩ともアートブックのページをめくるように、変化に富んでいて楽しく、それでいてカットの繋がりはスムーズなんです。カットごとの画面の変化の大きさ、具体的には白い部分と黒い部分の画面に占める変化の大きさなんですけど、大胆な変化は、リズムのような、なにか心地のよい感覚をもたらしてくれるんです。それは1カットごとの尺にも表れていて、0.5秒のカットから60秒のカットが、ごく自然に流れていって、手際がよくて、メリ、ハリがきいていて。また、シーンごとの変化の大きさも、リズムを生み出しているんです。色彩にあふれているシーン(全体にあたたかな色)やモノクロームに見えるシーン(モノクロームのように見えて実は画面の半分は赤とか。ほとんど白の画面で黒は少ししかないのにカラーに見えるとか)があって見事です。センスなのかなあ。もちろんよく考えて構成してるんでしょうけど、やっぱりセンスでしょ。それとアニメーションの技術的にも素晴らしいのは、アニメーションが画である事を最大限に活かしている事です。たとえば、冒頭バニラが斜め奥に走っていくシーンで、キャラクターが5頭身から3頭身に変わっているんですけど、それが自然でビックリします。画なんだから変化しちゃってもかまわないんですけど、形は変えちゃだめ、パースにのってないとリテークって世界で仕事してきたから、それでもちゃんとキャラクターが奥へ走っていく事にビックリです。というか、その方がオモシレーし、タノシソー。
 こう書いてくると、とてもエキセントリックな作品に思えるでしょうけど、まあ事実エキセントリックなんですけど、不思議な事にバランスもとてもよくとれているんです。やっぱり「作品」になってるって事なんでしょうね。
 ぼくもあんなふうに「作品」をつくってみたいと、とても強く思うけど、できない事も分かってます。「憧れの人ウニョンさん」ですね、って『カイバ』5話観てない人には分からない話ですね。やっぱりこれは『カイバ』観るしかないでしょう。
















●今回はウニョンさんの画です。

●関連サイト
『カイバ』公式ページ
http://www.wowow.co.jp/anime/kaiba/

マッドハウス(湯浅カントクのコラム連載中)
http://www.madhouse.co.jp/
 



(08.05.19)

 
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