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■『トップをねらえ2!』秘話
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最終回
 
鶴巻和哉が語る『トップをねらえ2!』秘話
第4回 『トップ!』的か『フリクリ』的か


小黒 作品のテイストとして、前の『トップ』はコテコテだったり、オタク的なパロディが入っているのに対して、『トップ2』はスタイリッシュに、シャープに作っているじゃないですか。
鶴巻 んー、これしかできないって事ではあるんだけど……。僕は、GAINAXレベルのオタクから見たら、全然オタクじゃないんですね! 二流オタクでしかない。そんな自分にああいう事はできない。このために調べてからパロディにしたら、それこそ『偽トップをねらえ!』でしょ。自分が知っているオタク分野についてはいくらでもパロりますけど、東宝特撮のような自分がよく知らないジャンルに関して調べてまで入れるのはやっちゃいけないですよ。
小黒 元の『トップ!』は庵野さん達が好きでパロディをやっていたわけだから、『トップ2!』で調べてやるのは本末転倒ですよね。それは別にして、作品の方向性については、どう考えていたんですか。
鶴巻 『フリクリ』の次に作る作品だったわけですけれど、僕的にはそんなに『フリクリ』にならなくていいと思っていたんです。もっと『トップをねらえ!』になるだろうと考えていたんですが。特に第1話で『フリクリ』っぽくという圧力は、むしろスタッフ側からあった……という感覚はありましたね。ラルクがスクーターに乗っているのも、多分、榎戸さんはそれを相当自覚的に、『フリクリ』のオマージュとしてというか、“『フリクリ』から『トップ2』”の流れとしてのスクーターにしようとしていた。それは樋口さんの絵コンテからも感じたし、作画に入ってから現場のアニメーターたちからも感じて、むしろ僕の方が戸惑っていた。
小黒 “今風”という言葉でくくるのは間違いかもしれないけれど、やはり今の若い子が観やすいような、口当たりのよい演出がされていましたよね。前作の『トップ』はギトギトしていたけれど。
鶴巻 すでに15年以上経っているものなので、少なくとも30代後半から40代の人に向けて作ろうとは思っていなかった。メインターゲットはもっと若い世代である事は間違いなかったので、『トップ2』の序盤は『トップをねらえ!』をリアルタイムで面白がった層に向けたスタイルを採ろうとは思っていなかったんです。実を言うと個人的には『王立宇宙軍』っぽくなるのでは……と思っていたんだけど、全然そうはなりませんでしたけどね。
小黒 1話の最後に、胸が露出しちゃって「私もトップレスになりましたー」って言うじゃないですか。前の『トップをねらえ!』ならもっと下世話にやっただろうし、ギャグとして分かりやすいものとしてやったと思うんです。あれは笑っていいのかどうかが微妙ですよね。
鶴巻 僕は言葉遊びや、勘違いで進むお話は好きで、それが入っていると思うんです。『フリクリ』っぽいと思って入れているわけではなくて、あくまで自分にとって面白いという事です。『トップをねらえ!』でもシリアスなところと笑うところのボーダーライン上の表現が沢山あって、そういう事は今回もやるべきだと思ったのはありますね。「最近のアニメは真面目すぎる」と、庵野さんがよく言うんですけど、僕もそう感じていましたから。だから真面目そうに見えてもちょっとズレているとか、シリアスなのか笑いなのか判然としない、そういう部分は入れていこうとは思っていたんだけど。
小黒 上手くいったギャグはどれなんですか?
鶴巻 (考え込む)……地球自体が兵器として改造されているという設定は、僕にとってはある種のユーモアではあるんです。巨大人工都市を「あれが木星!」と言っちゃうところとか、変動重力源のビームがタイタンを貫いて裏側を攻撃するところとか。そういうところは『トップをねらえ!』的ユーモアだと思っているんだけど、そういった部分をもっと大量に仕込んでおかないといけなかったのかも(笑)。
小黒 4話は「おお、来たな」という感じがありました。
鶴巻 元々の構成が『トップをねらえ!』からだいぶ離れたところから始まって、4話くらいで『トップをねらえ!』と交わる感じだったんです。『トップ』でも4話はメインメカが初活躍する話だし、能天気なお話からシリアスになっていくターニングポイントであるし。『トップ2』でも4話が『トップをねらえ!』っぽくなるのは、初めから計算されていた。そこの絵コンテを庵野秀明に担当してもらう事も、最初から決まっていた事でした。
小黒 4、5、6話あたりで旧『トップ』風というか、『エヴァ』風のセリフが出てきていますが、これは意図されたところなんでしょうか。
鶴巻 4話を経て5話、6話で『トップをねらえ!』の先まで進もうかなというのがあったので、『エヴァ』っぽくなってしまったというのはあるかもしれないけど。
小黒 「通過儀礼なのだよ」とか。
鶴巻 それは正直、僕も残すべきか迷ったセリフではあるんだけど。
佐藤 『エヴァンゲリオン』もアニメの作品の中のパロディのひとつとして入れたという解釈でいいかなあと。前の『トップをねらえ!』は『(宇宙戦艦)ヤマト』から何から入れているわけですよね。それと同じように『セーラームーン』から『ガンダム』も『エヴァンゲリオン』もみんな入れていますよ、という感じで観てもらえればいいのかなあと思うんだけどねえ。
小黒 平松さんが担当したハートウォーミングな3話が、シリーズの中で異色なエピソードになっているのは、狙いのとおりなんですね。
鶴巻 ハートウォーミングは狙いです。ただ、あの話だけがテーマ的にも異色と見られちゃっているのが、ちょっとつらいなあというところではあります。テーマのひとつである“トップレスという超能力の価値”を描こうとすると、あのエピソードは外せないんです。あそこでトップレスという超能力をSF的にちゃんと説明してしまうべきだったのかもしれないけど、結果的にはやめた。
小黒 長いシリーズで何本かある“いい話”のような位置づけのエピソードに見えます。
鶴巻 かもしれませんね。
小黒 奇跡が起きた事の説明が予定されていたんですか。
鶴巻 画の表現としては「過去へ時間移動して、死んじゃった人に会えた」ようになっているんだけど、SF的には時間移動したわけでも、死んだ人に会えたわけでもないんです。チコは、過去の語られなかった言葉(存在しなかった情報)を、その時点に立ち返って作り出し、情報化する事で、「『耳飾りとは違うから』君には似合わない」という故人の真意に時を超えて辿り着いた。いわば、情報的に過去を作り替えたという事なんです。だから、死んだ人に会えちゃっている画になっているのは、ドラマ的には正しいけど、SF的な説明は諦めている。脚本段階でそのようにしました。
佐藤 アニメやマンガを観て、作品内で描かれていないヒロインの私生活や過去話を妄想して、同人誌にしちゃうようなものだと思う。同人誌ならいいけど、例えば「ガンサイト」から派生した「ガンダムセンチュリー」はいつの間にか本当のガンダム歴史になっちゃった。
鶴巻 『トップ2』がハードSF的であるという事は、当初、僕の中で価値のある事だったんだけど、アニメとしての『トップ2』にとって、最重要な事ではないと判断して、切り捨てていったんです。映像的な快感を犠牲にすれば、説明可能だったかもしれませんが、最終的にはSF設定の説明より、ドラマ的、映像的な快感を優先したという事です。
小黒 それは、3話に限らずですか?
鶴巻 限らずですね。


●鶴巻和哉が語る『トップをねらえ2!』秘話 第5回に続く


●関連サイト
『トップをねらえ2!』公式サイト
http://www.top2.jp/
[DVD情報]
「トップをねらえ2!&トップをねらえ!合体劇場版!! BOX 」(初回限定生産)
BCBA-2786/カラー(一部モノクロ)/(予)345分(本編DISC1:約95分+本編DISC2:約95分+特典DISC1:約95分+特典DISC2:約60分)
価格:15540円(税込)
発売日:2007年1月26日
初回特典:特典ディスク1『トップをねらえ! 劇場版』上映版ディスク、特典ディスク2(キャストインタビューをはじめとした映像特典ディスク)、ノリコ&ノノ フィギュア、ブックレット、収納BOX
発売・販売元:バンダイビジュアル
[Amazon]

[書籍情報]
トップをねらえ2! 画コンテ集 ガイナックス アニメーション原画集シリーズ (ムック)
A5版 888ページ
価格:3465円(税込)
発売中
出版社: ガイナックス
[Amazon]
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(07.01.26)

 
 
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