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  「動き」から「芝居」へ

 さあ、皆さん。この週末より今 敏監督の劇場作品『東京ゴッドファーザーズ』が公開になります。『PERFECT BLUE』『千年女優』に続く、今監督の劇場作品第3弾で、3人のホームレスを主人公にした人情コメディ。とてもハッピーな内容で、きっちりエンターテイメントしてます。アニメマニアでなくても十分に楽しめる映画です。
 ビジュアル的にも相当に豪華。作画、美術の両面で、劇場アニメとしてトップクラスの仕上がりです。アニメのスタイルとしては「芝居アニメ」ですね。最近のリアル系の作画って、大雑把に言うと、人をいかにリアルに動かすかを追求しているわけですよ。実際の人間の「さりげない動作」あるいは「日常的な動作」を作画で再現して、いかにも本当に人間が動いているかのように見せるのが目標だった。
 それに対して『東京ゴッドファーザーズ』は「芝居」を重視している。「動き」よりも「芝居」なわけです。キャラクターの芝居や表情の面白さで見せるところが沢山あり、それが実に面白い。しかもそこにきっちりとリアル系作画のエッセンスが入っている。特に映画後半、大塚伸治さんが原画を担当した長回しのオーバーアクション(見れば「ああ、ここか」と判るはず)なんか抱腹絶倒ですよ。これも作画力の正しい使い方です。
 それから、全編通して作画のテンションが比較的均等なんですね。作画のクオリティが高い作品って担当アニメーターが頑張ったシーンだけ浮くような場合が多いじゃないですか。この作品はそうじゃない。にも関わらず、個々の原画マンの個性もきっちり出ている。それだけ、腕のよいアニメーターが集まって、いい感じで仕事ができたんでしょう。その意味でも希有な作品だと思います。
 美術も相当イケています。今さんの作品だからレイアウトが優れているのは当然なんですが、今回のは今までに増して凄い。ディテールにもこだわりまくっていて、大変な事になっています。『千年女優』の時は映画の性質に合わせた事もあって、画面構成に関してちょっとセーブしたところがあったと思うんですが、今回はそのリミッターを解除。『PERFECT BLUE』を上回るフェティッシュな映像になっています。様々な色を大胆に使っているところもグッドです。
 他にも見どころは多いですよ。僕は、表現の幅が面白いと思いました。リアルな質感の世界で、色んな表現上の遊びをやっているんです。この辺りは監督作品3本目の余裕なんでしょうね。

 以下は別の話題。次回の『ポポロクロイス』(9日放映の第6話)は作画暴れん坊が集結した、ぶっとびの内容になっているらしいです。作画マニアは要チェックですね。それと突然ですが(いや、前回も突然だったような気がしますが)、11月16日に第16回アニメスタイルイベント「晩秋の第3回いろんなアニメを観ちゃおう大会」を開催します。ゲストは杉井ギサブローさん、今石洋之さん、そして、『東京ゴッドファーザーズ』の今監督を予定しています。詳しくはこちらを。

(03.11.06)

更新情報(03/11/07・第102回)
第16回アニメスタイルイベント
「晩秋の第3回いろんなアニメを観ちゃおう大会」

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第5回
「長月は脚本家の書いた本を読む日々編」

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