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  画面の上からヒモ

 先週のアニメスタイルイベント「晩秋の第3回いろんなアニメを観ちゃおう大会」も、かなり充実したものとなりました。ご協力下さった皆様、ご来場下さった皆様、ありがとうございます。
 今回のイベントでは『悟空の大冒険』幻のエピソード「ニセ札で世界はまわる」がプログラムのメインのひとつでしたが、その上映の前に『悟空』の通常のエピソードをちょっとだけ上映しました。『悟空』は、いかにも虫プロダクションらしい先進的なシリーズで、「ニセ札で世界はまわる」は、その中でも特にトバしたエピソードという位置づけになるものです。僕や同年配のファンにとっては「昔から『悟空』ってのは凄い作品だとは思っていたけれど、ここまでやっちゃった話もあったのか!」というのが「ニセ札で世界はまわる」なんですよ。若いお客さんにもそのあたりの関係を分かってもらうために、他のエピソードをちょこっと流そうと思ったわけです。
 で、イベントの数日前にメーカーさんから、数話分のビデオを送ってもらいました。実は『悟空』を観るのは学生時代の再放映以来だったんですが、いやあ、面白かった。とにかくスピードが速い。やる事が洒落てる。荒唐無稽を画に描いたような内容。近年もハイテンション&ハイスピードを売りにしたギャグアニメはありましたが、『悟空』も決して負けてません。シュールな分だけ、『悟空』の方がインパクトあるんじゃないですかね。
 何本か観て、僕が『悟空』で一番印象に残っていた第9話「おかしな? おかしな?」の冒頭部分を上映する事にしました。『悟空』傑作の1本です。この話は最初にヒロインの竜子が現れて、口上を言うんですね。で、ぶらさがったヒモを引くと画面が、悟空達が荒野を旅をするシーンに切り替わる。ところが、悟空達のシーンになってもTVフレームの上からヒモはぶら下がったまま。カットが三蔵のバストショットや、八戒と沙悟浄に切り替わっても、ヒモは同じところにぶらさがっている。キャラ達は歩いていてカメラはそれを追っているのに、ヒモはフレームの中の同じ位置に止まったまま。このシュールさが、やたらと可笑しい。そのヒモを何だろうと思った悟空達が、引っ張ってみるとリンゴが落ちてきたり、水が落ちてきたり。そんな事が起きても悟空達がフレームの上を見ようとしないのが、また可笑しい。で、力一杯にヒモを引くと、バシンと書き割りのような城が落ちてきて、その中が当面の舞台になる。
 この話では、その後もシュールな事件が立て続けに起きます。それがどのぐらい凄いかと言うと、粗筋が書けないくらい凄い。気になって、昔発売された『悟空』のムック(「手塚治虫アニメ選集」です)を引っ張り出して、ストーリー紹介のページを見たんですが、やっぱりこの話に関しては、まるっきりわけのわからない文章になっていました(笑)。いや、それは正確に作品を文章化したって事なんですけれどね。
 イベントでは第9話冒頭も、「ニセ札で世界はまわる」も好評でした。若い方も楽しんでくれたようで、『悟空』のトバしっぷりって、むしろ、現在の方が受けいれられるんじゃないか、なんて思いました。

(03.11.21)

更新情報(03/11/21・第104回)
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