アニメ様365日[小黒祐一郎]

第151回 ロボットアニメが多すぎる

 まずは言い訳から。前回の「第150回 『銀河漂流 バイファム』」を読み返して、例に挙げているのが下ネタとか、エッチな話ばかりだったので呆れてしまった。原稿では「下ネタばかり例に挙げているようだが、『バイファム』にそういったネタが多いのも事実」と逃げていたけど、本当は急いで書いたためだ。原稿を書く前には、ペンチのポエムの話とかにも触れようと思っていたのだけど、慌てて書くと書きやすいネタが並んでしまうのだ。我ながら情けない。
 「ザ・テレビ欄 1975-1990」をチェックしていて気がついたのだけれど、1983年はやたらとロボットアニメが多い。ロボットアニメが激増した1976年より多いし、この前後の年よりも多い。先日、今石洋之君と話をしていて、この1983年の話題になった。彼はこの年を「アニメが一番楽しかった年ですよ」と言っていた。1983年に放映が始まったロボットをリストアップすると、以下のとおり。

●1983年に放映が始まったロボットアニメ

火曜
『銀河疾風 サスライガー』(国際映画社 4月5日〜)

水曜
『光速電神 アルベガス』(東映動画 3月30日〜)
『サイコアーマー ゴーバリアン』(ナック 7月6日〜)

金曜
『亜空大作戦 スラングル』(国際映画社 1月21日〜)
『装甲騎兵 ボトムズ』(日本サンライズ 4月1日〜)
『特装騎兵 ドルバック』(葦プロダクション 10月7日〜)
『銀河漂流 バイファム』(日本サンライズ 10月21日〜)

土曜
『聖戦士 ダンバイン』(日本サンライズ 2月5日〜)

日曜
『プラレス3四郎』(カナメ・ブロダクション 6月5日〜)
『超時空世紀 オーガス』(東京ムービー新社 7月3日〜)
『機甲創世記 モスピーダ』(タツノコプロ、アニメフレンド 10月2日〜)

 なんと11本! しかも、11本の大半が、ティーン以上のアニメファンを意識した企画だ。これは今石君が「一番楽しい年だった」と言うのもうなづける。アニメファン向けのメカアニメは、基本的に全部追いかけたかったのだけれど、こんなにあってはちょっと難しい。
 僕が、毎週確実に追いかけていたのは『聖戦士 ダンバイン』『超時空世紀 オーガス』『機甲創世記 モスピーダ』の3本。他は観たり観なかったり。あるいは、後で追いかけたりだった。『ダンバイン』は富野監督の新作だから、追いかけるのは当然として、『オーガス』と『モスピーダ』を視聴していたのは設定に興味が持てて、ストーリー面に期待できたからだ。特に『オーガス』は『超時空要塞 マクロス』に続く「超時空シリーズ」の作品であり、時空震動弾によって複数の時空が混在しているという凝った世界設定に惹かれた(ただ、『マクロス』に匹敵するほど、パンチのある作品にはならなった)。
 日曜は、9時半からの『モスピーダ』を観て、14時からの『オーガス』の留守録をしかけて、どこかに遊びに行く(「第149回 手分けしてアニメ録画」で書いた事と矛盾しているようだが、『オーガス』は黒板テープに録って、観た後で消していた)。17時からの『プラレス3四郎』はあきらめて、ロボットアニメではないけど、19時の『さすがの猿飛』までに帰ってくるというパターンだった。『プラレス3四郎』はいのまたむつみがキャラクターデザインを務めており、各話で金田伊功も参加。他にも活きのいい若手アニメーターが活躍しており、作画マニアならチェックしたい作品だった。僕は『プラレス3四郎』に関しては、出来のいい話を友達に観せてもらっていた。
 この時期のロボットアニメで、ほとんど観ていなかったのが、『サイコアーマー ゴーバリアン』だった。『うる星やつら』の裏番組だったのが、あまり観る気にならなかった理由のひとつ。それから僕が知る限り、『ゴーバリアン』は各話の作画スタッフのクレジットが同一だった。毎週、同じテロップが流れたのだ。マニアとしては、各話のスタッフをチェックするのが楽しみのひとつであり、スタッフ名がクレジットされないとチェックする喜びが半減してしまう。『ゴーバリアン』はアニメアールが参加していたはずで、ひょっとしたら作画がいい回があったのかもしれない。
 作画がいい回と言えば『スラングル』と『ドルバック』にも突出した回があったらしい。この2本は、ほとんど観ていなかったのだが、作画マニア系の同人誌(当時、そういうサークルがいくつかあったのだ)で、『スラングル』や『ドルバック』の見どころを紹介する記事を観て「ああ、チェックしておけばよかった」と思った。
 オープニングが好きだったのが『光速電神アルベガス』だ。止めが多いのだけど、動くところはダイナミックに動く。アルベガスがサンバイ剣で敵を次々に叩き斬るシークエンスがお気に入りだった(ここはフィルムでは数カットに見えるが、原画では1カットとして作画)。鍋島修らしいセンスのいい原画だと思う。『アルベガス』は大体観ているはずなのだけど、本編はあまり覚えていない。「宇宙からの年賀状」というパロディがかった話が、強烈だった事だけは記憶している。
 1983年のロボットアニメを振り返ると、正統派といえるものは少なく、傑作はあるが、ロボットアニメの流れを変えるようなタイプのものではない。変化球の企画が多くて、そのせいか全体にガチャガチャした印象だったように思う。そのガチャガチャしているのも楽しいと言えば、楽しかった。

第152回へつづく

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(09.06.22)