第267回 リアルロボットアニメの終焉
第262回「アニメファンが浅倉南を苦手な理由」で、1986年に、アニメファンやアニメ雑誌にとっての「TVアニメ冬の時代」が始まると書いた。今回はそれに関連する話題として、ロボットアニメの減少について触れておきたい。
放映本数の推移については、データを見てもらうのがてっとりばやいだろう。第151回「ロボットアニメが多すぎる」でも話題にしたようにロボットアニメの本数が一番多かったのが1983年だ。そこから数年間のタイトルをリストにしてみた。以下のように、TVで放映されるロボットアニメは減り続けた。
1983年にTVで始まったロボットアニメ
- (1)『亜空大作戦 スラングル』(国際映画社 1月21日〜)
- (2)『聖戦士 ダンバイン』(日本サンライズ 2月5日〜)
- (3)『光速電神 アルベガス』(東映 3月30日〜)
- (4)『装甲騎兵 ボトムズ』(日本サンライズ 4月1日〜)
- (5)『銀河疾風 サスライガー』(国際映画社 4月5日〜)
- (6)『プラレス3四郎』(カナメ・ブロダクション 6月5日〜)
- (7)『超時空世紀 オーガス』(東京ムービー新社 7月3日〜)
- (8)『サイコアーマー ゴーバリアン』(ナック 7月6日〜)
- (9)『機甲創世記 モスピーダ』(タツノコプロ、アニメフレンド 10月2日〜)
- (10)『特装騎兵 ドルバック』(葦プロダクション 10月7日〜)
- (11)『銀河漂流 バイファム』(日本サンライズ 10月21日〜)
1984年にTVで始まったロボットアニメ
- (1)『超攻速 ガルビオン』(国際映画社 2月3日〜)
- (2)『重戦機 エルガイム』(日本サンライズ 2月4日〜)
- (3)『ビデオ戦士 レザリオン』(東映 3月4日〜)
- (4)『巨神 ゴーグ』(日本サンライズ 4月5日〜)
- (5)『ゴッドマジンガー』(東京ムービー新社 4月15日〜)
- (6)『超時空騎団 ザザンクロス』(タツノコプロ 4月15日〜)
- (7)『機甲界 ガリアン』(日本サンライズ 10月5日〜)
- (8)『超力ロボ ガラット』(日本サンライズ 10月6日〜)
- (9)『星銃士 ビスマルク』(スタジオぴえろ 10月7日〜)
1985年にTVで始まったロボットアニメ
- (1)『機動戦士 Zガンダム』(日本サンライズ 3月2日〜)
- (2)『超獣機神 ダンクーガ』(葦プロダクション 4月5日〜)
- (3)『戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマー』(日米合作[東映動画] 7月6日〜)
- (4)『蒼き流星 SPTレイズナー』(日本サンライズ 10月3日〜)
- (5)『忍者戦士 飛影』(スタジオぴえろ 10月6日〜)
1986年にTVで始まったロボットアニメ
- (1)『機動戦士 ガンダムZZ』(日本サンライズ 3月1日〜)
- (2)『マシンロボ クロノスの大逆集』(葦プロダクション 7月3日〜)
- (3)『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー2010』(日米合作[東映動画] 11月14日〜)
1987年にTVで始まったロボットアニメ
- (1)『機甲戦記ドラグナー』(日本サンライズ 2月7日〜)
- (2)『マシンロボ ぶっちぎり バトルハッカーズ』(葦プロダクション 6月3日〜)
- (3)『トランスフォーマー ザ・ヘッドマスターズ』(東映 7月3日〜)
1988年にTVで始まったロボットアニメ
- (1)『トランスフォーマー 超神マスターフォース』(東映 4月12日〜)
- (2)『魔神英雄伝ワタル』(サンライズ 4月15日〜)
アニメブーム以前から、児童向けのロボットアニメでも、高年齢のアニメファン向けにアピールする要素を取り込む傾向があった。つまり、玩具メーカーがメインのスポンサーになっている番組——ロボットの玩具を売る事を目的とした番組で、美形キャラを登場させ、大人びたドラマを展開させていた。アニメブーム以降、それがより顕著になった。玩具を売るための企画であっても、よりアニメファンの嗜好に合わせたキャラクターやドラマ、凝った設定が取り入れられた。本数が多かった1983年、1984年のロボットアニメの半分以上が、そういったタイプの作品だった。当時はロボットアニメを抜きにして、アニメファンを意識した作品は考えられなかったくらいだ。
違った言い方をすると、アニメスタッフのオリジナル作品で、オリジナルならではの魅力が発揮しやすいジャンルが「魔女っ子もの」と「ロボットアニメ」だった。魔女っ子ものが日常生活とリンクしたもになりがちなのに対して、ロボットアニメは未来世界だろうが、異世界だろうが自由自在に舞台を設定できた。デザインの幅も広いし、現実離れしたキャラクターも出しやすい。ドラマの作りについても自由度が高いはずだ。ファンの立場からしても、ロボットアニメは、オリジナル作品ならではの魅力が満喫できるジャンルだった。
そのように高い年齢のファンを意識した作品に、児童の視聴者がついていけなくなったのもあるだろうし、マニアックな作りになってしまったために、視聴率がとれなくなったのかもしれない。とにかくロボットアニメは数が減っていったし、当然、それはアニメファン向けの作品の減少に繋がった。1985年に始まった『トランスフォーマー』シリーズも、1986年と1987年に放映された『マシンロボ』シリーズも、児童を対象にした番組だった。同じく児童を対象にした『魔神英雄伝ワタル』の成功が、1990年の勇者シリーズや、エルドランシリーズに繋がっていく。
一度ロボットアニメの歴史がリセットされて、児童向け番組としてやりなおしたかたちになっているわけだ。このあたりの変化に関しては、同時期に児童向けの『機動戦士SDガンダム』(1988年〜)シリーズが劇場作品、OVAで展開していた事や、『戦え!!イクサー1』(1985年〜)をはじめとする高年齢のアニメファン向けのロボットアニメが、OVAとしてリリースされていた事も併せて考えるべきだろう。
ロボットアニメそのものは、本数が減っても消滅はしなかったが、ロボットアニメの中の「リアルロボットもの」は一度きれいさっぱりなくなってしてしまう。『機動戦士 ガンダム』に始まり、『超時空要塞 マクロス』『装甲騎兵 ボトムズ』といった作品で展開していったリアルロボットものは、特にアニメファンの人気を得ていたが、1987年の『機甲戦記ドラグナー』でひとまず終了。TV作品としては、1990年代まで制作される事はなかった。
第268回へつづく
(09.12.10)