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COLUMN
アニメ様の七転八倒[小黒祐一郎]

第74回 「この人に話を聞きたい」打ち明け話(3)

第11回 大地丙太郎
 「この人に話を聞きたい」の取材は、その人が業界に入ったきっかけから始める場合が多い。いつも同じなのもつまらないので、時々そのパターンを外してみる。大地さんの記事で、業界に入ったきっかけ等について聞いていないのは、僕が他誌である「MEGU」ですでにやっていたためだ。作品で言うと、近作の『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』『世紀末リーダー外伝 たけし!』『おじゃる丸』『十兵衛ちゃん ―ラブリー眼帯の秘密―』等についての話が中心だが、かえって実の濃い記事になったと思う。
 「自分の事を作家だと思っていますか?」と振っておいて、話が展開したところで「でも、そういうのを作家と言うんですよ」と指摘する流れ。まるで計算してやっているみたいだけど、これは話を進めているうちに自然とそういうかたちになった。むしろ、狙ってやったらこんなにきれいにはまとまらないだろう。

第12回 あかほりさとる
 あかほりさんに取材を申し込んだのは、前々回の大月さんの記事で『NG騎士 ラムネ&40』の頃の彼の仕事ぶりについて聞いたのがきっかけになっている。『天空戦記 シュラト』『キャッ党忍伝 てやんでえ』『NG騎士 ラムネ&40』の頃の、彼の活躍を活字にしたいと思ったのだ。
 この取材以前にも、彼とは何度か会った事がある。本人のノリも、作品のノリも軽いのだけれど、実は謙虚だし、他人に気を遣う人だ。この記事でも、そういった部分がある程度出ていると思う。マスコミでのおどけた部分も含めて、自分について客観的に見ているのも印象的だ。
 あかほりさんの事務所に歴史雑誌がズラリと並んでいたので、それを背景にした写真をメインに使おうと思った。だが、実際にはその写真はサブで使っている。どうしてそうしたのかはよく覚えていないが、多分、写真の紙焼きを見て、逆にした方がいいと判断したのだろう。

第13回 黒田洋介
 業界の人から「オルフェの人達は『プリティサミー』にものすごく思い入れをしている」と聞いていたので、粘着系の人だろうと勝手に思い込んで取材に臨んだ。ところが黒田さんは大変に快活で、爽やかな青年だった。誤解していて、すいません。
 以下は、読者の方達にはどうでもいい裏話。実はメインの写真で黒田さんの椅子が踏んでいる四角い紙は、僕の名刺だ。たまたま名刺が床に落ちたのであり、勿論、黒田さんに他意はなかった。しかし、誌面で僕の名前が読めそうな大きさで写っていたため、雑誌掲載時にデザイナーさんが「他人の名刺を踏んでいるなんて」と気を利かせて、製版段階で名刺の字面を消してくれた。ところが、修正したのがバレバレな感じで、それはそれで変な写真になってしまった。これが「この人に話を聞きたい」の歴史の中で、写真に修整が入った唯一の例である。今回の単行本では、撮ったままの写真を掲載している。紙面が「アニメージュ」より小さいので、さすがに名刺の文字は読めないはず。

第14回 水島精二
 今では呑み友達の水島教授だけど、取材はこの時が初めて。その前に、初監督作品である『ジェネレイターガウル』が始まる頃に、吉松君が主催の呑み会で会っていた。メインの写真は、彼の頼りがいのある感じを強調したものだったけれど、迫力があり過ぎで、彼の作品に参加しているスタッフ(主に女性)に不評だったとか。ゴメンなさい。
 記事中で僕が「『ダイ・ガード』の設定や、1話を観て感じたのは『水島さんはオリジナルというものに対するこだわりが無さそうだな』という事なんです。ある意味、痛快でした」と言っているが、これは『地球防衛企業 ダイ・ガード』の一部が『新世紀エヴァンゲリオン』に似ており、それがネットで酷評されていた事を踏まえた発言。わざわざ言葉にしなくても読者は分かってくれると思い、遠回しな言い方にした。
 「その後のこの人」でも書いたけれど、記事中の「今だったら『少年ジャンプ』に載ってる『シャーマン キング』をやりたいと思っているんですけど」という彼の発言を、某社のプロデューサーが目にして、それがきっかけで水島さんは『シャーマン キング』の監督を務める事になった。これには僕もびっくり。何でも言ってみるものだ。

第15回 今石洋之
 初期の「この人に話を聞きたい」は、後から考えれば、その人がまだ代表作を発表する前に取材しているものが多い。当時の今石君は、キャリア的にはまだまだ若手。何しろ『彼氏彼女の事情』以外には、まとまった仕事は『小さな巨人 ミクロマン』26話、『メダロット』14話くらいしかなかった。ではあるけれど「今、話を聞きたい人」であったのは間違いない。前回の取材で、水島さんに今石君の仕事ぶりを聞いていたのも、取材をするきっかけになっている。
 記事としては『カレカノ』の話がたっぷり聞けたのがよかった。この時に言っている事と、今言っている事があまり変わっていないのも面白い。「絵的には、今後、どっちの方向に行きたいとか?」と聞くと、彼は「やっぱり、金田さん系ですかね」と答えている。正直言うと、こんな発言を活字にしてしまったら、本人が後で困るのではないかと思ったのだけど、本当にその方向で突き進んでいったのは立派。この取材のすぐ後に、彼にはアニメスタイル関連でイラストを描いてもらうようになった。他にも色々とお世話になっているのは、皆さんもご存知の通り。


■第75回 「この人に話を聞きたい」打ち明け話(4) に続く
 

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(06.10.24)

 
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