第16回 五十嵐卓哉
出版業界には年末進行というものがあり、「アニメージュ」で言えば、1月発売号が編集のスケジュールが短い。この記事を書いたのが、まさしく年末進行。テープ起こしが1日、取材まとめが1日、翌日に原稿チェックという超スピード進行でまとめた。原稿チェックに関しては、わざわざ五十嵐さんが僕の事務所まで原稿を見にきてくれた。助かった。さすが、さわやかさん!
前々から五十嵐さんとは面識があったので、最初から彼の人柄を記事のポイントにしようと考えていた。写真もそれに合わせて、彼の柔らかい感じを出したものにした。「この人に話を聞きたい」史上空前のラブリーな写真だ。
どうでもいい事だが、僕が五十嵐さんが監督した『美少女戦士セーラームーンSuperS外伝 亜美ちゃんの初恋』に納得していない事については、「アニメージュ」1999年11月号(VOL.257)の佐藤順一さん、幾原邦彦さん、五十嵐さんの座談会でも話題にしている。これも面白い記事だ。機会があったら、そういったものも再録したいなあ。
第17回 小中千昭
記事中に「●しばし、雑談」という1行を入れて時間経過を示したのは、リアルに取材の流れを再現したものではあるけれど、「この人に話を聞きたい」としては珍しい変化球のまとめ方。奥歯にものが挟まった感じの僕に対して、小中さんが「逆質問」をした事の面白さを活かすために、こういったかたちにした。
この取材で「あなたの作品は、ここがオタク的ですね」という言葉を、僕はなかなか言えなかった。ロジカルに話を進める小中さんに対して、そういった事を言い出しづらかったというのもあるし、わずか6年前の事だけど、当時の感覚では「脚本家の方にそういう事を聞いちゃっていいの?」とも思った。小中さんが逆質問をしてくれたお陰で、マジメな話と、ややぶっちゃけたトークが一緒になった面白い記事になった。
取材場所は原宿。年も押し迫った12月27日の取材だった。撮影にも時間をかけて、原宿のあちこちを移動。色んなバージョンの写真を撮った。その中でメインの写真として選んだのが、通り過ぎる少女達をナメたあの写真だ。
取材中で「先月号の『アニメージュ』でも、そういう話をしたんですけど」と言っているが、これは2000年2月号(VOL.260)の特集「90年代総括」の事。
第18回 細田守
細田さんの取材も、まだ彼が代表作を発表する前。『デジモン アドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』制作中の取材だった。『ぼくらのウォーゲーム!』はすでにコンテを読んでいて、よいものになるのは分かっていたので、公開中に「アニメージュ」に記事が載るように、この時期に取材をした。
記事内容については、それまでの歩みだけでなく、レイアウト、カメラポジション、クオリティ等についても聞いており、なかなかマニアック。最後は「細田さんの真実に迫れなかった。残念」と冗談めかしてまとめている。これは『ぼくらのウォーゲーム!』完成後に改めて取材をするよ、という意味も込めたつもりだ。
撮影をしたのは『ぼくらのウォーゲーム!』BGM収録の現場。ちょっとシチュエーションに凝ってみたのだ。メインの写真は、演奏している人達を背景にして撮るプランだったのだが、通常BGMの収録は編成の大きなものから録りはじめ、順に編成の少ないものを録っていく。収録が終わった演奏家は帰ってしまうので、最後の収録が終わった後だと、残っている人はほんのわずかだった。それで演奏している人達のいない録音ルームを背景に撮影する事にしたのだ。写真の背後に楽譜立てがあるのは、そのため。「この人に話を聞きたい」で初めて、取材と撮影を別にやった記事でもある。記事末に記してある日付はBGM収録の日。取材はその数日前のはずだ。
第19回 渡辺歩
『ドラえもん』感動短編シリーズ第3作『おばあちゃんの思い出』公開中の取材だった。渡辺さんともこれが初対面だったが、取材中にアニメに関する主義主張について、僕と意気投合。それがあんまりにも愉快だったので、意気投合した模様を記事のクライマックスにした。僕の突っ込みをニコニコしながら受けてくれる渡辺さんの人柄のよさが印象的だ。写真は、普通にシンエイ動画の応接室で撮った。これはロケーションの勝利。
取材後にTV『ドラえもん』で彼が描いたコンテを何冊か借りて、僕がチェックしてない傑作が何本もある事を知った。まだまだ勉強が足りないなあ。
第20回 ゆきゆきえ
関さんの回で話題になった、『おジャ魔女どれみ』のゆき先生のモデル(?)である、ゆきゆきえさんが登場。『ママレ〜ド・ボ〜イ』『ご近所物語』『花より男子』『夢のクレヨン王国』『おジャ魔女どれみ』の美術について、使っている紙の種類に至るまで、詳しく話をうかがった。クオリティと生産性の高さを両立させているところも興味深かった。
この記事では、ゆきさんから原稿チェックの段階で、「自分の言った事が、そのまま文章になっているみたい」というお誉めの言葉をいただいた。実は、丁寧にまとめないと「そのまま文章になっているみたい」にはならないのだ。だから、そう言っていただけるのは嬉しい。
■第76回 「この人に話を聞きたい」打ち明け話(5) に続く