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第4回 41歳の肉体……あぁ……
「ナベシンさん、若いっすねぃ!」
そんなことを言われて 嬉しくなりだしたのは、いつの頃からだろうか。
20代の頃にはまったく感じなかった「肉体の限界」。30代で「お? ちょいと元気が足りねぃな」感じる時がちょこちょこ。今ではすっかり「もう限界っす……勘弁してつかぁさい……」。根性なくなってきたなw
自分で言うのも何ですが(人に言ってもらうのも何ですがw)お肌はまだ、わりとツルツル気味っぽいですw
そのうえ、アフロで派手なジャケット姿。世間一般の41歳に負けねぃ「若さ・プリティさ」は健在だと自分的に認めます。不精ヒゲはやして偉そうにふんぞり返ってると歳相応かもしれませんが……。
でもって、しげしげと自分の肉体を見つめ、「お疲れさん……。もうちょっとがんばってな!」って励ましてあげたい。41年間、黙って「ナベシン」の魂についてきてくれた肉体。片時も魂の意思に背くことなく動いてきてくれた肉体。傷ついても老いても……あぁ、なんてイイ奴なんだ、肉体! ありがとぅ、肉体! 大好きだぞ、肉体ぃぃぃ〜〜〜〜!!
そんなカワイイ奴、「肉体」ですが、かつて3回ほど入院したことがある。すべての活動を中止して ただただ肉体の休養のためだけに費やした日々……。腎臓病で1回、右足の骨折で2回。。白衣の天使にその身を委ね、苦痛とは裏腹に 悦楽と、社会的責任から解放されたフリーダム、甘え放題な日々……めくるめく青春の思い出がそこにある……。
うーんと、腎臓病で入院したのは小学校3年生のとき♪ 風邪かにゃ? ちょいお熱高いかにゃ? 血圧ってのも高いかな? てなもんでちょいと病院につれてってもらったら、即行入院!!
「え? 何? どしたの? 俺、何か悪いことした?」
あまりに突然の入院で 自分自身わけわかんなかったw
そのまま1ヶ月、特に手術とか大それたこともなく、まじゅい飯を延々と食わされただけの入院だった気がするww
そんなもんで、入院生活自体はとくに辛いことなく、ダラダラな日々。最初の数日はホームシックになったり、「寂しい・怖い」があったけど、そこは子供w 入院した病棟は当然小児科で、周りも元気(?)なガキどもばかりw
すぐに仲良くなり、毎日が楽しい日々となったさ♪ そこで知り合った3つ年上のお兄さんが、大学ノートの小さいのみたいなノートにマンガを描いてた。コテコテのギャグマンガw
それまで1枚の落書きとして絵を描いてばかりいたナベシンはすっげー影響を受けたのよ。コマ割ってセリフ入れて、ストーリーがあって。ナベシンも同じようにマンガを描き始めたさ。
てなわけで、入院中にマンガを描くのを覚えたナベシン。それが どこをどう間違ったのか、現在のアニメ監督業に至るわけで、あの入院がなかったら、確実に「奇才・ナベシン監督」は生まれなかったと思うですw
ありがとう、入院!!
21歳、アニメ会社に就職して2ヶ月あまり。バイクの事故で、思いっきり右足を骨折! 絵的に派手な事故だったらしく、250ccのバイクは「く」の字に曲がるわ、車にはねられて飛ばされ10数メートル滑空したわ、走馬灯は見るわ……そらもう、イイかんじだったみたいw
単に骨が折れて「くにゃ」と曲がっただけじゃなく、右足の骨が粉々。しかも折れた骨が肉を突き破って露出……うっぎゃー!
そんなイカした骨折なもんだから入院は半年にも及んだりして。「こりゃ 治らんわ」言われてたのを 数回の手術、数種類の最新技術を駆使して立派に治してもらいましたw
そして その間の入院生活も……そりゃもぅ楽しゅうございました! 病院内松葉杖競争、車椅子レース、夜中の脱走、深夜の酒盛り、看護師をナンパ……そりゃもぅ楽しゅうございました! 足に鉄板を埋め込んで退院……さようなら、めくるめく青春の日々。
退院して仕事に戻ったけど、当時「制作進行」だったナベシンは、免許をなくした状態だったので 外回りなども「徒歩」「電車」「バス」などを使っていましたにゃ。退院したとはいえ、完璧に治ったわけではない右足には、「マッドマックス2」のようなパーツ(「装具」と呼ばれていた)を装着し、歩くたびに、ロボコップのように「ガシャ……ガシャ……」と小気味良い足音をたてつつ外回りをしてたですよw
いや、笑い事ではなく、けっこう足は悲鳴をあげたくなるほどの激痛。ひどい時には、電車・バスもなくなった深夜に数十kgの撮影素材を、雨の中十数km歩いて運んだりもしてたです。無茶過ぎです、今考えたらw がんばってくれた肉体……特に右足を褒めてあげたいですw
そんな無茶を繰り返してたら、骨が飛び出した傷口がどんどん腐りはじめていって……ありゃー、骨が見えてきちゃったよ、骨! 骨! あ、鉄板が入ってて キラリと光る! ターミネーターっぽ! いやいや、そんなこと言ってる場合じゃなく、再入院w
再びいろいろな手術をして……何だかんだで、また半年近く入院。いやぁ、さすがに同じ病院で2度も入院するとトキメキがないですなw てか入院にトキメキ求めちゃ変かな?w
てなもんで、食餌制限されたり自分の足で歩けなかった入院生活時代。けっこう楽しめたは楽しめたんだけど、やっぱり五体満足でないと、人間、弱気になりますわな。足が動かなかった時は、マジ精神的にキツかった。自分の力で移動する能力を剥ぎ取られ、立つことすらままならない……一時的とはいえ、自分が何もできない人間だってことの情けなさ。
そう考えると、やっぱり「歩く」「立つ」ことができる「肉体」って偉大です。まして「手」もあります。絵も描けるし、アニメも作れる! 右手に箸、左手に茶碗を持って「いただきま〜す!」できる! その前に手も洗える! あんな所を触っていじくりまわすこともできる! 「目」はイイ女を見ることができる! 「鼻」はイイ匂いを嗅げる! 「耳」はイイ声を聞ける! 「口」はウソ・大げさ・紛らわしいことも言えるし、シャウトも可能! おまけに女を口説くことも!(できたらいいねw)
サンキュー、肉体! ビバ・五体満足!!
徹夜すると体が悲鳴をあげるようになってきた。コンテ1本描くだけでヘロヘロ。暑さ・寒さにめっぽう弱くなってきた。
それでも「がんばろうぜ、おぉー!!」って言う「魂」に、「へぃへぃ、お供しますぜ、旦那」とついてきてくれる肉体。素直でイイ奴です。感謝の気持ちでいっぱいです。次に生まれ変わる時は、もう少し足を長く、もう少し痩せ型で、もう少し精悍な顔つきで生まれてほしいです。きっとまた、すぐアフロにしちゃうと思います。だけど、今、こんなにがんばってきてくれた「ナベシン肉体」を、ナベシンは愛してます。もう数十年、有無を言わずにがんばってほしいです。
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