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今こそ語ろう『天元突破グレンラガン』制作秘話!!
第11話 シモン、手をどけて
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第11話 シモン、手をどけて
脚本/佐伯昭志
絵コンテ/本多康之
演出/森宮崇佳
作画監督/西山忍
レイアウト監修/錦織敦史、本村晃一
原画/菊池一真、國行由里江、秋田学、木村優子、柴田裕司、金城優、大下知之、小林之浩、冨田佳亨、森田岳士、益山亮司、後藤望、横井将史、西垣庄子、吉成曜
アニメーション協力/FRONT LINE
●さらに深い孤独の淵へ落ちていくシモン。皆が見放す中、ニアだけは彼を優しく気遣う。そんな時、四天王グアームの卑劣な罠が大グレン団を襲う! 主人公シモンがようやく復活を遂げ、晴れて大グレン団のリーダーとなる劇的なエピソード。脚本は前回と同じく佐伯昭志。アニメーション協力はFRONT LINE。劇団イヌカレーによるニアの回想シーンも印象的。
大塚 11話は、コンテでだいぶ直したよね。
今石 シナリオはどうでしたっけ?
大塚 多分、シナリオも決定稿からは変わったと思う。確かコンテに入る前に、改訂稿を出したんだ。
今石 10話のキャラづけを反映させて、大塚さんの方でちょっといじったんですよね。佐伯君も、カミナとシモンの回想パートがあったんですけど、そこだけは書けないって事で、その部分だけ中島さんが書いてくれた。
── ジーハ村にいた頃、地上に脱出しようとして穴の中で行き詰まった時……というくだりですね。
今石 そう。1話よりも前の話で、シモンがカミナのどういうところに惚れたのか、どこに共感を得たのかというところ。逆にそれをカミナ側から見たらどうだったのか、というエピソード。
大塚 あと、最後のシモンの口上は、今石君がコンテチェックで足したんだよね。
今石 ああ、あれはコンテの時でしたね。あんまり巧く言えてない感じの口上にしたくて。シナリオでは、そんなにはっきりとした口上は書いてなかったんですよ。シモンがリーダーになるだけの資格を持つ人間になったかどうかという意味で、カミナと同じように口上を述べるシーンを作った。でも、気持ちはそこに届いているんだけど、語彙が足りなかったり、五七五ができてなかったり(笑)。わりと言いたい事を言いっぱなし的な、思いついた事を推敲せずに吐き出しちゃうような、拙い感じをリアルに出したかった。中島さんに頼んじゃうと、きっちりしたかっこいい台詞ができちゃうので(笑)、ここではまだやらない方がいいと思って。
大塚 11話はシモンの復活話なんですけど、内容的に、わりと直し直し作っていく感じだったんですよ。現場的にも、監督とゴリ君がレイアウトでバンバンと手を入れていて。慌ただしく作っていたんですよね。だから放送時に、わりとみんなの評判がよくて、逆にびっくりしたというか、ウケてると知った時は新鮮な気分でした。
今石 本当は11話を社内でやる方がいいはずなんだけど、コンテの完成が遅れていたんですよね。だからコンテが先に上がっていた10話をガイナでやる事にした。11話のコンテをやってくれた本多(康之)さんも、もの凄く頑張ってくれて、尺もカット数もかなりオーバーしてたんですよね。それをとにかく切って切って、詰めて詰めて、また足して。
大塚 カット1がよかったよね。グルグルーッと螺旋を下りていくと、いちばん下でシモンがうずくまっているという。いつもはアバンでこれまでの解説が入ってたんだけど、11話はカット1に凄くインパクトがあるから、「ここから入っていいよ」という事で、アバンをバッサリ切った。
今石 11話はコンテチェックでかなり燃え尽きた感がありますね。普通にコンテを1本半は描けるぐらいの時間をかけてやっていた気がします。思った以上に感情移入してやっていたなあ、とあとになって思いました。結構ひと仕事終えた気分になってましたね。
── 最初の方でシモンが石像ばかり作っているというのは、フィギュアオタク的な意味合いなんですか?
今石 まあ、むしろオタクとしてやり甲斐を見つけるというのは、光明が見えている状態なんですよ。10話では、ただ単に引きこもってぶつぶつ言ってるだけだったんですけど、11話では「俺にはフィギュアが作れる!」みたいな(笑)。
── グロス回なのに、どうして吉成曜さんが原画に参加してるんですか?
今石 「ここだけは描いてくれ」という、こちらの勝手な注文です。やっぱりシモンが復活するシーンはどう考えても大事なところなので、ここはしっかり吉成さんに描いてもらう方がいいだろう、と。むしろ8話の仕事を削ってでも、11話の方をやってほしかった。8話は逆に、吉成さん以外の戦力を全て投入しているので。
大塚 吉成君、11話では修正も入れてなかった?
今石 うん、入れてましたね。錦織が総作監を入れている作業中の画に、気がついたら吉成さんが修正を入れてるんですよ(笑)。原画かレイアウトか、どっちか忘れましたけど。「あれ?」って。
── それは、吉成さんの担当パートの前後なんですか?
今石 前後ですね。カミナの思い出がパパパパッと現れて、涙を流すシモンがガバッと前に向き直って、涙を振り払うところ。
── え、キャラのカットなんですか?
今石 そうです。だから最初、吉成さんには振ってなかったんですよ。
大塚 やりたかったのかな?
今石 うん。「なぜここを俺に振らんのだ」というメッセージがそこに(笑)。
一同 (笑)
今石 あそこは吉成修正の上に錦織クリンナップという、何気に不思議なカットになってしまいましたね。挿入歌(中川翔子「happily ever after」)も、あのシーンのためにわざわざ作ってもらったんですよ。
── そうなんですか。
今石 オープニングの候補曲として上がってきていたうちのひとつで、第2候補ぐらいまで残っていた曲なんだけど、制作のワカ(若林広海)と錦織がえらく気に入っていて。
大塚 あの2人は、もうそれが主題歌だと思い込んでたよね(笑)。
今石 そう、あっちが本命だと思ってた。僕は違う方を選んじゃったんだけど、ハハハ。
大塚 その後も、あの2人はシモンの復活シーンにはこの曲がかかるんだと勝手に思い込んでいて、コンテ撮の画に曲をはめて、2人で聴いて喜んでいたらしい。
今石 僕もそれを見て「なるほど、イケるな」と思って(笑)。それで「この曲、挿入歌で使えませんかね?」と言って、作ってもらった。デモテープはできていたので、それをリミックスしてブラッシュアップしてもらって、本番でちゃんと使えるようにして。
大塚 あの曲も人気が出たからね。2人のおかげかもしれない。
今石 そうですね。大体、監督として全体を見ようとしていると、ああいう事を忘れちゃうんですよ。なんとか客観的に見ていこうとしているから、細かいツボをこぼしちゃう事が多いんです。
大塚 ああ、なるほど。
今石 観ている人は、ああいうところが楽しいわけじゃないですか。「ここでカッコイイ歌!」みたいな(笑)。その気持ちを結構忘れがちなんですよね。それはダビングの時に気づいたりしても遅いから、前からちゃんと仕込んでおかないといけない。
大塚 まあね。確かにそういう事は、周りにいる気楽なスタッフの方がよく気がつくかもしれない。オイシイところだけ考えてたりするから。
今石 そうそう。アニメファン的な視点でちゃんと見ていて、「これやったらオイシイですよ!」ってちゃんと言ってくれるから。辻褄よりはそういう快楽の方が大事なんだ、と。その事を忘れてしまうと、どんどん真面目で固い方向に行きがちになる。だからワカの意見とかも大事なんです。11話でも、ゲンバーの目にあたる部分にわざわざドリルを突き刺すとか、メカ同士だけどバイオレントな戦い方というのも、ワカが「こうしたらカッコイイじゃないすかー!」と言ってたので、「じゃあ、それ採用」みたいな(笑)。
大塚 全体のストーリー的にはどうでもいい部分なんだけど、確かに観てる側としては楽しい部分なんだよね。
今石 そう。あの頃はドラマの流れにとらわれて、そういうツボを忘れがちだったので、助かりました。
── 回想シーンが影絵アニメになっているのは、どうしてなんですか?
今石 あそこはちょっと画を変えたかったのと、2白犬。を使いたかったからです。おもしろ動物をデザインしてくれた人で、また別のかたちでも使いたいと思っていて。第2部からのサブタイトルデザインも頼みつつ、11話の回想シーンもやってもらった。
── 2白犬。さんというのは、どんな方なんですか?
今石 元々GAINAXのアニメーターだったんですけど、今は独立して、Production I.Gで坂本真綾のミュージッククリップを作ったりしてます。ああいう独特の才能があっても、ガイナにいるとなかなか仕事をあげられないんですよね。『グレン』でもうまくハマれば、手法から自由にしてパートごと任せたいと思っていて、11話で「ここだ」と。もうまるまるお任せでした。
── 9話から15話までのサブタイトルも担当されてますよね。
今石 あれも誰に振るか随分迷ったんですよ。女の子の台詞だから、女文字っぽいロゴがいいなと思っていたんだけど、手書きだとしょぼすぎるし、それなら2白犬。に頼んでしまえ、と。僕としては、本当はメインタイトルのロゴも変えたいぐらいだったんだけど、それはさすがにいろいろと問題があって(笑)。
── 第何部ごとに年代分けする、みたいな?
今石 そうです。最初は『マジンガーZ』みたいな感じで、次は『コン・バトラーV』みたいな感じで、最後は英語表記だけのスカした感じになるとか(笑)。そんな構想もあったんだけど、いろいろ面倒くさいなあと。
●第12話へつづく!!
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