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今こそ語ろう『天元突破グレンラガン』制作秘話!!
第6話 てめえら全員湯あたりしやがれ!!
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第6話 てめえら全員湯あたりしやがれ!!
脚本/大塚雅彦
絵コンテ・演出/板垣伸
作画監督/柴田由香
原画/二宮壮史、伊藤篤、田邊剛、胡陽樹、田中裕介、宮下雄次、甲斐田亮一、大河内忍、平川梨絵、西垣庄子、長谷川ひとみ、芳垣祐介、福元敬子、渡辺敬介
●旅の途中、怪しい温泉宿に招かれたカミナ達。黒の兄弟とも再会し、下にも置かぬもてなしに極楽気分の一行だったが、それはオオカミ獣人の恐るべき罠だった! 大塚雅彦が脚本を、板垣伸が絵コンテ・演出を手がけたギャグとアクション満載のエピソード。舞台が温泉という事で、当然お色気シーンもたっぷり。あまりに過激な内容のため、放映時には総集編を織り交ぜたバージョンに差し替えられてしまったが、DVDでは解放版「見てえものは見てえんだ!」として復活。
大塚 6話はどっちのお話をすればいいんですか? 放映版か、解放版か。
── 両方でお願いします(笑)。これもまた単発勝負的な回ですよね。
今石 そうですね。それと、お色気全開的な回。いちばん最初のシリーズ構成の時から、温泉と水着の回は入れる事に決まってまして。「じゃあ、まず温泉やるか」と。
大塚 最初から言ってたよね。「温泉と水着は絶対入れる!」って。
── のちに解放版といわれる元々の脚本は、大塚さんですよね。オンエア時には、中島かずきさんと連名になってましたけど。
大塚 そうですね、元は自分1人でやってます。ただまあ、温泉絡みのネタは大体、監督と中島さんが全部アイディアを出してるんで、それを1本分に収まるよう入れるのが仕事、みたいな。
今石 でも、あんなに上手に収められる人はなかなかいないですよ。
大塚 (笑)
── モザイクはどなたのアイデアなんですか。
今石 あれは中島さんですね。「俺、凄いの思いついちゃったよ!」みたいな感じで、大興奮しながら言ってました(笑)。
大塚 「初めての試みだよ!」って。
今石 モザイクネタは危ないんじゃないかなあ、オンエアできるのかなあ……とか思いながらも、誰も止めないんですよね(笑)。プロデューサーも、アニプレックスの人も全然止めないから「じゃあ、やっとくか」と。
大塚 自分も6話を作っている時は、「放映できるのかな?」って心配しながらやってたんですよ。「大丈夫? 大丈夫?」って確認を取りながら。
今石 シナリオが上がった時も、コンテが上がった時も、しつこく「チェックしてくれ」と言い続けてました。でき上がってからツベコベ言われるのだけはイヤだから。そしたら、案の定だったんですけど……。
大塚 (苦笑)
今石 それにちょうどあの頃、放送枠がなかなか決まらなくて、イライラしてたんですよね。朝だ、夕方だ、深夜枠だ、というのが全然確定しなくて。「早く決めてくれよー!」と思っていたから。
大塚 確かに日曜の朝になると決まっていれば、さすがにもう少し変えていたと思うんだけど。
今石 で、一時期もう「夕方も難しそうだ」「深夜かUHFになるかもしれない」みたいな話も聞こえてきて。余計な心配をしてヘンにおとなしいものを作って、それがUHFとかで流れた日にゃあ目も当てられんな、と思ったんですよ。
── それで6話はそのまま作って、オンエアでは中島さんが台詞を書き足して、別バージョンを作ったという事ですね。
今石 そうです。
真鍋(広報) あの時は大変でしたよ。放送できないと決まった瞬間に大塚さんがキレて、「僕はもうブログに解説書かないから!」って言い出して。
大塚 ハハハハハ!(爆笑)
今石 あの時は結構、熱くなりましたね。「これがガイナのキレ方だ、ってところを見せてやろうぜ!」みたいな感じで(笑)、みんなのボルテージがグーッと上がってた。そんな時、いちばん子どもっぽい事が好きなはずの中島さんが「子どもも観てるんだからさ!」と、いちばん大人な発言をしてね(笑)。その鶴の一声にみんな「そっか……」みたいな。
── 大塚さんは、下ネタに関してはわりとノリノリで書かれたんですか?
大塚 いや、逆にシナリオは真面目にしようと思ったんですよ。温泉回だけど、アホな回にはしたくなかった。アホネタも入っているけど、まだ出していない伏線みたいなものもありましたから。放映版には入ってなかったけど、本当は6話で初めて螺旋王の話が出てくるんですよね。
今石 TVではカットされちゃいましたね。
大塚 それから、獣人は昼しか活動できないという事になってたので、「じゃあ夜行性のヤツもいるという設定を出すか」とか。シモンのヨーコに対する気持ちとかも、ちゃんと盛り込もうと。だから6話がなくなると、話が繋がらなくなってしまうと思ったんです。
今石 実際、あれは苦しかったですね。
大塚 だから、そういう判断をする人達に対して怒ってたんですよ。単にホンを変えられたから頭にきたという事ではなくて、「もうちょっと作品の本質を見てくれよ」という事だったんです。どうでもいい回だったら、逆に「しょうがないか」っていう気にはなるけど。そういうつもりで作っていないのに……という思いもあって。確かにコンテでは、さらにギャグ調が強くなっていたけど。
今石 その印象で見られちゃったのかもしれないですね。
── 落ち着きのない感じがいいですよね。板垣伸さんならではというか。
今石 解放版の方にある、ダイヤルを回すとタオルが取れるというのは、完全にコンテで描き足したネタです。あれは全くシナリオにはなかった。確か、ガイナの台所で飯を食ってる時、板垣君が「こうしたいんだけど」と提案してきて、大笑いしながら「それいいね〜!」とか言ってたんですよ。そしたら「ホントに描いてきたか……」っていう(笑)。あのコンテも壮大な尺オーバーでしたね。
大塚 結構、そういうアイディアをコンテで足してるから。浣腸ネタとかね。
今石 そうですね。ケツに浣腸したら空高く飛んでいって、また戻ってきて。それで「俺のシリを突け!」みたいな展開になる。そこは板垣君ですね。
大塚 僕の方では、下ネタ的なアイディアに関しては、監督と中島さんから出たもの以外、こっちから足さないようにしようと思ってたんですよ。
今石 (笑)。これ以上は入れないように。
大塚 むしろ、もう少し活劇調にしたかったから。さっき言ったような、設定的に補足しなきゃいけない部分を足していく以外は、なるべく活劇っぽくしたいなと。だからヨーコもアクションするし。
今石 貴重なヨーコのアクションですよね。
大塚 うん。完成版にはあんまり残ってないけど、シナリオの段階だと、ヨーコはもう少し旅館の事を怪しんでるんですよね。ロシウは完全に懐疑派で、シモンとカミナ達は完全におバカなノリだけど、ヨーコは中間ぐらいの感じ。だから風呂に入る時も、髪の中に短銃を隠すシーンとかを入れてたんだけど、そのあたりは一切なくなって、ノリで押す感じになってましたね。あと、ロシウはあそこまで馬鹿な感じではなかったはずなんだけどね(笑)。初登場回と6話の本編では、随分かけ離れちゃって。
今石 同じ人とは思えない(笑)。
大塚 だけど、あの勢いはさすがだなあと思ったけどね。コンテ以降の仕事に関しては。
今石 自画自賛になっちゃうけど、コンテチェックで自分が足した部分なんだけど、最後にラガンがボーン! と飛び出して、下を見るとグレンがいて、ロシウが乗ってて手を振ってる。ウサギガンメンも全部倒されてて、一言「気合いで乗ったら動かせました」みたいな。あの何もかもが台なしになる瞬間(笑)。
大塚 あれはいいよねえ。
今石 あのコンテをきった時は「やったぞ!」という気持ちで、凄く満足しました(笑)。ああいう、くだらねえー! っていう事をいっぱいやりたかったんですよ。
大塚 作監が柴田(由香)というのも面白かったね。
今石 あれもまたカオスでしたね。最大級のセクハラ回を女性作監に振るという(笑)、ひどい事をやってました。最初のシリーズ構成の時から「ヨマコ先生の話は柴田に振ろう」と決めてたんだけど、なんやかんやでスケジュールが合わなくなってきて、「じゃあ今振っちゃえ」みたいな感じで6話を任せたんですよ。板垣君とも元テレコムコンビでいいんじゃないか、と。
大塚 結果的には、楽しそうに描いてたもんね。
── 逆に男性の作監だと濃すぎたかもしれませんね。
今石 そうなんですよ。カラッと描いてくれたのが、結果的によかったんですね。でも動き的には、板垣君も相当ラフを入れてるんじゃないかなあ。レイアウトでかなりコントロールしてるように見えます。確か、原画は新人が多かったですよね。
大塚 うん、社内の子ばかり。
今石 長谷川(ひとみ)は、1話が初でしたっけ。西垣(庄子)と渡辺(敬介)は、これが初原画じゃなかったかな。
大塚 あの2人は初かな。若い人中心でも「凄いな、ここまでやるんだな」と思った。
── 歴代GAINAXキャラが出ているのは、どなたのアイディアなんですか?
今石 錦織です。「バニーどうしようか?」って訊いたら、「もう全部ガイナキャラにしたらいいんじゃないですか」とか言って。
大塚 (笑)
今石 「どうせワルノリするんなら、それぐらいやりましょうよ!」と。僕はどっちでもよかったんだけど、そういう「お前どんだけガイナ好きなんだよ」みたいな感じは錦織っぽいなと思って(笑)、これは通しちゃおうと。若いライトなガイナファンには、ああいうのが逆に嬉しいんじゃないですか。
── そこもちゃんと話題になってましたからね。
今石 ええ。4、5、6話でどれだけバラけるかという事も狙っていたので、そういう意味で、6話はパロディ色もちょっと強めの回、アニオタっぽい悪ノリ回みたいな感じにするのもいいだろうと。それにしても、あのキャラ表は秀逸でしたね。6話のサブキャラ設定は芳垣(祐介)がやってるんですけど。もの凄くマニアックなチョイスで、「わざわざイコリーナさんですかー!」とか、「ナディアのお母さんはちょっと分かんないわー」とか(笑)。
── メカに関してはいかがですか。
今石 温泉ガンメンも相当こだわって作ったような気がするんだよなあ。
── 『千と千尋の神隠し』と『ハウルの動く城』の合体みたいになってましたね。
今石 うん。やっぱり、ガイナも(スタジオジブリの)近くに引っ越してきた事だし(笑)。
大塚 ちょっと似すぎじゃないか? とも思ったけどね。
今石 いやあ、でも中に入ったらバニーガールとか出てきて、もう何が何やら(笑)。そんな感じでごまかせるかな、と思ったんですけど。
真鍋 6話のガンメンって、コヤマシゲトさんが全部やってますよね。温泉ガンメンも、ウサギガンメンも。
今石 そうね。設定自体もコヤマさんが描いてる。吉成(曜)さんもラフをいっぱい描いていたけど。旅館が崩壊して、中からガンメンが出てくるという仕組みは、もっとリアルで壮大な設定をいっぱい考えていた気もするけど、完成版ではなんだかよく分からなくなっちゃった(笑)。
大塚 真面目にやってたら大変だったよね。
今石 えらい事です。そもそもあの建物が全部、温泉ガンメン1体に変わっちゃうので、全く構造が分からない(笑)。あんな部屋割りがあって廊下とかもあったのに、それが一体どこへ行ったのか謎のまま。ウサギガンメンも、これ1回しか出てこなかったけど、珍しく変形するガンメンだったんですよね。四つん這いの兎型から、人型に変形するんだけど、それも観てる人に気づいてもらえたかどうか。あんまり効果も上げぬままにやられて、終わっていきましたけど(笑)。
大塚 そういうのが多いね。
今石 多いっすねえ。
●第7話へつづく!!
●『天元突破グレンラガン』公式サイト
http://www.gurren-lagann.net/
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