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今こそ語ろう『天元突破グレンラガン』制作秘話!!
第24話 忘れるものか この一分一秒を
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第24話 忘れるものか この一分一秒を
脚本/砂山蔵澄
絵コンテ・演出/中山勝一
作画監督/桑名郁朗、久保田誓
作画監督補/雨宮哲
原画/伊藤嘉之、山田勝哉、馬場充子、林祐己、りょーちも、沓名健一、江畑諒真、川口隆、板垣敦、近藤源一郎、小田剛生、平松禎史、すしお、小松田大全、板垣伸、山口智、小竹歩、赤井俊文、益山亮司、榎本花子、後藤望、藤見もも子、正野扶小子、雨宮哲、鶴巻和哉、桑名郁朗
●人類の未来を守るため、そして愛するニアを救うため、シモン達はアンチスパイラルの母星を目指す。その行く手を遮る、銀河を埋め尽くすほどの敵艦隊。その数、無量大数! シモンが超銀河グレンラガンへの変型を試みる間、命知らずの戦士達は絶望的な戦場へと殴り込みをかける! 遥か宇宙の彼方で、大グレン団が文字どおりの死闘を繰り広げるバトルアクション編。次々と散っていくメンバーの壮烈な最期は、涙なしに見られない。14話でも活躍した久保田誓が再び作監を務め、『交響詩篇エウレカセブン』などで注目を集めた桑名郁朗・小松田大全コンビも参戦。
── かなり人死にの多い回ですが、シリーズ構成の段階からこのくらい死ぬ事は決まっていたんですか?
今石 そうですね。当初の予定どおりです。
── 死ぬ順番に法則性があったりとか?
今石 いや、特にないですけど(笑)。確か、シナリオではキッドが先に死ぬんじゃなかったかな。
大塚 ゾーシィと入れ替えたんだよね。
今石 そうそう。キッドとアイラックはセットだから、コンビで死なせたいと思って。
大塚 本当は、もう少しあの辺のサブキャラを前もって立てておければよかったんだけど……分量的な難しさがあって、なかなかできなかった。
今石 やむを得ないところでしたね。
大塚 24話も相当、コンテの時間がなかったよね。
今石 うん、この回のコンテがいちばんキツかった気がします。(中山)勝一さんに振る時はいつも時間がない、というパターンが定着してますね(苦笑)。
大塚 非常に申し訳ない……。
── どうしてそこまで遅れてしまうんですか?
今石 シナリオはあるんだけど、いろんな事情でコンテに入れないんですよね。例えば、元々コンテをやるはずの人ができなくなったりとか。
── 24話のコンテにかかっている時間は、実質どれくらいなんですか。
大塚 1週間ちょっとかな……2週間はなかった気がするんだけど。この時は、コンテ打ちをする2、3日前にシナリオをワーッと整理して、「これでお願いします」と言って出した記憶がある。中島さんがリライトした25話の上がりを見て「じゃあ24話も少し考え直さなきゃいけないな」と思って、手を入れたのかな。
今石 この回も、紹介するべきものが多すぎるんですよね。ガンメンがスペースガンメンにグレードアップしていて、それが実は超巨大で、中にガンメンが入れ子状に乗っている。それを冒頭で、台詞以外で説明しなくちゃいけない。だから「台詞を喋ってる背景で巨大ガンメンの説明をしてくれ」とか、無茶な注文をいっぱいしました。
── またまたデザインチェンジとメカ戦の嵐ですね。
今石 この頃、スペースガンメンの設定が間に合わなくて、レイアウトをやっている時にもまだできてなかったんですよ。ラフ設定しかないのにレイアウトを描いてもらってた(苦笑)。
大塚 「スペースガンメンのデザインもマイナーチェンジしよう」って言い出したのは、誰だっけ?
今石 僕です(笑)。もうやりたくてしょうがなくて、そんなの紹介する暇ないって分かってるのに、我慢できなかった。
大塚 シナリオ打ち合わせの時には、ただ単純に大きくするだけにしようって言ってたのに。
今石 僕もまあ、デザイン的には下駄を履かせるだけにしようとか、手脚が長くなるだけとか、見た目はそんなに変えないつもりだったんですよ。それで、コヤマ(シゲト)さんと吉成(曜)さんとで半分くらいに分けて、スペースガンメンのデザインを描いてもらった。コヤマさんはそれなりのアレンジで描いてきたんだけど、吉成さんの方がもう原形をとどめないぐらい変わっていて(笑)。中に入ってるのがどのガンメンかも分からない、全く新しいバケモノが生み出されていた。
一同 (笑)
大塚 ニューマシンだ。
今石 そう。「ものすごくカッコいいんですけど、これは誰にも描けないんで……」という事で、ちょっと戻してもらいました(笑)。
大塚 戻してもあんな感じなのか。
今石 いや、ツインボークンだけはあまりにカッコよかったので、そのまま残しちゃいましたけど(笑)。ゾーシィの乗ってたソーゾーシンとかは、少し元に戻してもらいました。多分、コヤマさんの描いたデザインにも結構アレンジが入っていたので、それを見て触発されたんでしょうね。「こんなに変えていいのか」って。
大塚 なるほど。
今石 そんなには変えてませんでしたよ、っていう(笑)。
── 作画に関してはいかがでしたか。
大塚 24話は、作画の期間はあったんだっけ?
今石 いや、作画期間はいつもと同じだと思います。アフレコのスケジュールも特にズレていなかったから。
大塚 そうか。25話を外に出してる事もあって、24話には人を割けたのかな。
今石 そうですね。ここでいきなり、全力モードでしたね。とにかくずーっとアクションだから! という事で、あらん限りの戦力を投入する感じだった。本当は久保田(誓)1人に作監を任せるつもりだったけど、現場が動き出す前ぐらいに、14話ほどにはスケジュールが取れない事が分かったので、桑名(郁朗)さんに入ってもらった。
大塚 助かったよね。
今石 桑名・小松田(大全)コンビには、後半からだいぶ助けてもらいましたね。桑名さんはここが『グレンラガン』初参加か。それまで原画も描いてないですもんね。
大塚 うん。
今石 桑名さんと小松田君には、随分前から声はかけていて、来てもらおうと思ってはいたんだけれども、なかなかタイミングが合わなかったんです。
── 小松田さんだけ、1話の原画に参加されてますよね。
今石 ええ。その時も、他の仕事がなければそのままずっと『グレン』をやってもらっていたと思うんですけど。
── 桑名さんはこれが初作監で初参加なのに、いきなりバッチリだったというもっぱらの評判ですが。
今石 いやー、桑名さんは凄かったです。思った以上に錦織のキャラ表とも相性がよくて。結構リアル系の人なのかと思いきや、いわゆる(Production)I.G系のリアルさじゃなくて、ちょっと劇画タッチのニュアンスが得意というか、好きというか。そんな事を再認識しましたね。デフォルメの仕方も面白いんですよ。顔の輪郭をザクッとほぼ直線に近いかたちでとっていたりとか、手が凄くデカかったりとか。そういうマンガ的なデフォルメがいいバランスで入ってる。桑名さんの描くゾーシィが、またカッコイイんですよね。
大塚 うんうん。
今石 鼻の影とかが微妙に安彦(良和)調になっていて。(『機動戦士ガンダム』の)スレッガーみたいな感じで(笑)。
── この回では、久保田作監だからミサイルカットを多くしよう、みたいな意図はあったんですか?
今石 ああ、ありましたね。スペース・ダヤッカイザーのデザインは下駄を履くだけだったのに、久保田作監ならミサイルも飛ばさないと悪いよなーと思って(笑)、アーマード・バルキリーみたいな装備を両腕につけて。最初のコンテでは巨大な敵ミサイルを落とすために大砲を撃つ、みたいな場面だったカットを、12コマぐらい尺を延ばしてミサイルに変えました。至近距離にある、やたらでっかい標的を落とすんだから、別にミサイルを一斉発射しなくてもいいんだけど(笑)。まあ、入れておこうと。
── 親心ですね。
今石 大体、久保田のところに訊きに行くんですよ。「スケジュールないけど、ミサイル増やしておこうか?」って言ったら、「ええ」と言うので(笑)。じゃあ入れるか、という事でいつも増やすんです。
── すしおさんの担当パートも凄かったですね。ジョーガンとバリンボーの最期、延々と続く爆発カット。
今石 あそこもビックリしましたね。あんなに描くとは思わなかった。平松(禎史)さんもすしおも、第4部に入ったあたりから「最後まで毎週、原画をやりたい」みたいな事を言っていて。平松さんには26話の作監を振っちゃったから無理だったんだけど、すしおは結局やってますよね。
大塚 うん。24話のあのカットは、すっしーがやりたいって言ったの?
今石 コンテを見て、ここをやりたいって自分から言ったんじゃないかな。久保っちが指名したのかもしれないけど。
── 鶴巻和哉さんはどこを描かれてるんですか?
今石 そうか、またここで鶴巻さんを呼び出しているのか……えーとね、意外と普通のところを振ってるんですよ。前半で、グラパール隊が出撃前に待機しているカット。止め画じゃん(笑)。
大塚 鶴巻さんの方から「手伝おうか」って言ってくれたんじゃなかったっけ。ちょうど『ヱヴァ(ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序)』が終わって。
今石 ああ、そうか。『ヱヴァ』が終わった頃だ。
── 鶴巻さんは17話でコンテを描いたあと『ヱヴァ』に入って、『ヱヴァ』が終わってから24話で原画を描いているんですね。
今石 そうですね。8月半ばか、8月末ぐらいの出来事かな。
── 板垣伸さんはどのシーンを?
今石 超銀河ダイグレンのワープシーンです。板垣君だから、ちょっと遊んでますよ(笑)。超銀河ダイグレンが思いっきり歯ぎしりした表情になってるとか、2回目のワープシーンでは艦内のシモン達の表情もギャグっぽくなってたりとか。平松さんも、ギミーとダリーのグラパールが敵にやられていくところを、きっちり描いてくれてます。超銀河ダイグレンが海に沈むところは小竹(歩)ですね。
── なるほど。
今石 久保田はアイキャッチにもこだわってたなあ。Bパート冒頭のアイキャッチは久保田が描いてるんですけど、『グレンラガン』のアイキャッチでは初めて透過光が入ってるんです(笑)。ずっとブラシしかなかったのに、透過光を入れてきて。こないだのDVDリテイクでも、まだタイミングを直してたな。
大塚 ああ、やってたね。「音に合わせたいから」って。
── アンチスパイラルが初登場するのもこの回ですね。声だけですが。
今石 そうか、ここが初か。この話数ではまだ、上川(隆也)さんも抑えめですね。一回、録り直してるんですけど。
── それはなぜ?
今石 上川さんは抜き録りで、24話から最終話まで1日で録ったんです。最初に24話から録り始めて、そのあと何話かやって、調子を掴んでもらってから、もう一回24話を録り直した。アンチスパイラルの声には「根拠のよく分からない説得力でねじ伏せてほしい」という強さを求めていたので、それは録り直したテイクの方がはっきりしたと思います。やっぱり、キャラを掴みながらアフレコせざるを得ないので、そういう事も起こりうるんです。
── 上川さんのキャスティングというのも、また意外でしたね。
今石 うん、まあ、意外ですよね。中島さんから聞いた時は、キョトンとしました(笑)。「いいけど、それは可能なんですか?」みたいな。
── 上川さんは楽しくアフレコに参加されていたんでしょうか。
今石 なんか、嫌だったみたいですよ。
── えっ!?
今石 『グレンラガン』最終回の内容を知るのが(笑)。
真鍋(広報) お仕事をお願いする以前からお客さんとして観ていたらしいんですよ。
── あ、そうなんですか。
今石 滅茶苦茶アニメファンですからね。
大塚 アニメが好きだと聞いてはいたけど、あんなに濃いとは……。だって(武田)康廣さんの事も知ってたんでしょ?
今石 うん。アフレコ現場でいろんな人に挨拶していて、武田さんの番になるといきなり直立して「あの『快傑のーてんき』の……!!」とか言い出して。
一同 (笑)
真鍋 一緒にいたマネージャーさんは、意味が分からないから呆然としてましたね(笑)。
●第25話へつづく!!
●『天元突破グレンラガン』公式サイト
http://www.gurren-lagann.net/
●商品情報
DVD「天元突破グレンラガン9」(最終巻)
第24話「忘れるものか この一分一秒を」を含む、24〜27話を収録
2008年3月26日発売
片面2層/16:9/カラー/リニアPCM/ステレオ
特典:オーディオコメンタリー2種〜キャストコメンタリー(24、25話:柿原徹也、井上麻里奈、伊藤静、中島かずき/26、27話:柿原徹也、小西克幸、福井裕佳梨、中島かずき)、スタッフコメンタリー(今石監督他、制作スタッフ)
価格:6300円(税込)
発売元:アニプレックス
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(08.03.14)
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