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COLUMN
リスト制作委員会通信[リスト制作委員会]

第5回 『佐武と市 捕物控』の新事実?(前編)

 歴史的なテレビアニメ作品のDVD-BOXに関わっていると、常識と思っていた事実が覆されてしまうことがしばしばある。『佐武と市 捕物控』のキー局もその1つ。今回あらためて調べるまで、私はずっとこの作品がNET(現・テレビ朝日)から発信されていたと思いこんでいた。実際は“毎日放送”が正解だったのだ。
 私が誤認してきた理由は2つある。
 1つ目は、本作のオープニング、エンディングにはテレビ局名のクレジットが表示されないこと。通常のテレビアニメでは「製作」や「制作」のテロップ画面で、製作会社名や広告代理店名と一緒にテレビ局名も表示される場合が多いのだが、『佐武と市』では「石森プロ」または「スタジオゼロ」と製作会社名が示されるのみ。画面上から、根拠となるテレビ局名を導き出すことが出来なかったのだ。
 2つ目は、テレビアニメの史料をまとめた過去の出版物において、『佐武と市』のキー局を「NET」と記載したものが大半であったこと。私が普段、重要な基礎資料と認識している書籍のなかでは、「虫プロダクション資料集」(虫プロ/1977年)、「TVアニメの世界」(朝日ソノラマ/1977年)、「TVアニメ全集」(秋元文庫/1978年)、「THIS IS ANIMATION」(小学館/1982年)はいずれも「NET」。一方、「MBS」(=毎日放送)と書いていたのは「日本アニメーション映画史」(有文社/1977年)1冊のみだった。今から思えば、最も早くに発表された研究書が唯一、正しい記述をしていたことになる。にも拘わらず、私は後続の出版物の記述を参考にしてしまい、自身が編集した「TVアニメ25年史」(徳間書店/1988年)や「ポケットデータ2000」(徳間書店/2000年)でも、何の疑いもなく「NET」と書き記していた。我ながら、過去の浅慮が恥ずかしい限りである。
 今回、毎日放送がキー局だと判明したのは、当時のスタッフへの取材活動を通じてであった。まず、りんたろうさんや鈴木伸一さんのお話から『佐武と市』の企画元が大阪電通だと知らされ、「?」となった。「企画元が大阪ならば、キー局も在阪の可能性が出てくる。本当にNETで合っているのかな?」と疑問が湧いたのだ。次に黒川文男さんに取材すると、今度は私が何も聞かないうちに「この作品は毎日放送がキー局だったんですよ」と決定的な証言が返ってきた。当時、スタジオゼロの演出家だった黒川さんは、完成したプリントを毎日放送に納品したご記憶があるというのだった。早速、『ピュー太』のときにお世話になった多仁治さん(当時・毎日放送の編成副部長)にお電話すると、確かにキー局は毎日放送だというお答え。ただし、『おそ松くん』や『ピュー太』とは違い、毎日放送主導の企画ではなかった、との補足もいただいた。あくまでも大阪電通からの持ち込み企画だということだろう。
 ……と、まるで“新事実発覚”みたいに筆を進めてきたが、アニメーション研究における諸先輩のなかには「そんな常識も知らなかったのか?」「未熟者め!」と呆れられている方も少なくないと思う。本当、不勉強者だと反省しています。今後もご指導、ご鞭撻のほどを。
 さて、『佐武と市』のキー局に関する話題には、実は副産物がある。前述の黒川文男さんのお話のなかで知ったトピックスなのだが、こちらはもしかすると、かなり“新事実”に近いかも? そうであることを祈りつつ、話題は次回へ。

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▲左はDVDのジャケット。右は封入特典の原作マンガだ。
●商品データ
DVDBOX「佐武と市捕物控」(10枚組)
価格:44415円(税込)
発売日:2005年7月27日
封入特典:別冊解説書、原作マンガ
発売元:青林堂ビジュアル
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コロムビアミュージックエンタテインメント
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■第6回へ続く

(05.08.10)


 
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