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第8回 2005年後半回想 その1 |
最初にまずお詫びを。9月に第7回の原稿を書いてから、まるで冬眠に入ったみたいにブランクを空けてしまった。ごめんなさい。ちょっとだけ言い訳をすると、『アッコちゃん』第3期BOXと並行して8月に『かみなり坊やピッカリ・ビー』、その後は10月に『原始少年リュウ』と『ワンダービートS』、11月に『わんぱく探偵団』、12月に『さるとびエッちゃん』と連続してDVD―BOXの映像構成や解説書編集の仕事に携わっていたため、物理的にも精神的にもまったくゆとりがなかったのだ。しかも、やっとDVDの嵐を抜けたかと思うと、12月の中旬からは休む間もなく『アニメージュ』恒例の年間パーフェクトデータと東京国際アニメフェア投票用リストの作業へと突入、そのまま年を越すこととなった。やっと修羅場を抜け出して気づいてみると、はや2月も半ば。浦島太郎のようだが、言い訳ばかりもしていられない。「怠けすぎ」と小黒編集長には呆れられ、釘を刺され(当たり前だ!)、反省しつつ連載を再開することにする。とりあえずは、ここ数ヶ月の仕事内容をふり返りつつ記録していくことにしよう。
前回、『アッコちゃん』第3期BOXの解説書で「特別企画」と銘打ったインタビューの相手は、もちろん細田守さんのこと。『アッコちゃん』第3期といえば、この人の活躍を抜きには語れない。第2期解説書から引き続く関弘美・芝田浩樹インタビュー、キャラデザインの出口としおインタビューなどメインスタッフへの取材に加え、今回の解説書のハイライトは絶対に細田守特集で行くぞ! と数ヶ月前から堅く心に誓っていた。
実は私は、個人的にも細田演出作品の大ファンである。『ゲゲゲの 鬼太郎[第4作]』の第105話「迷宮・妖怪だるま王国」を観たとき以来、ずっとミーハーかつディープにその仕事の追っかけをしてきた。第113話「鬼太郎対三匹の刺客!」のころには、細田演出がいかにすごいか、周囲の仲間に布教をしていたほどだ。次の『アッコちゃん』になると、細田担当回がめぐってくるのを心待ちにしつつ、それだけを集めた特製ビデオを編集し、ますます布教活動に熱を入れた。ちょうど徳間書店で「GaZO」という雑誌が刊行されているころで、その巻末の編集後記を借りて、渡邊隆史編集長(当時)と細田談義をしたのも懐かしい思い出だ。
御本人に初めてお会いできたときはとても嬉しかった。『デジモン』の劇場2作目が完成した直後だっただろうか。冷静だが情熱的な人、というのがその第一印象。とても気さくな方で、こちらの突っ込んだ質問にも快く丁寧に答えて下さった。その誠実な人柄に、私のファン度はますます上がったのだった。さて、今回は数年ぶりの再会。しばらくお会いしない間に、細田さんはすっかりビッグネームとなっていたが、その気さくな人柄は以前と変わらず。何よりもそのことにホッと安心した。
『アッコちゃん』の細田演出回のなかでベスト1を上げるなら、第14話「チカ子の噂でワニワニ!?」であることに異論はないと思うが、細田さん本人にとっても、この1本には相当な愛着があるようだった。インタビューはこの第14話を中心に、第6、20、30話といった担当演出回にまつわる裏話、東映動画内でアニメーターから演出家へとなるまでの経緯など盛り沢山の話題で進行。その内容はDVD―BOXの解説書中に、紙幅の許す限り凝縮して掲載したつもり。それでも、いくつもの貴重なこぼれ話が、文字通り紙面からこぼれてしまった。そうそう、第14話といえば、細田演出回だけで繰り返し使用される、どこか懐かしげな下町風の街並が初めて登場したエピソードでもある。その情景の大半は、細田さんの絵コンテをもとに、原画の山下高明さんが独自の創意を盛りこんで描き起こしたレイアウトがベースとなっている。今回の解説書では、その緻密なレイアウトについても、なるべく多く紹介するように心がけた。
個人的には第14話の街並を最初に観たとき、狭く入り組んだ路地の描写や、坂や階段が多く、高低差が強調された舞台設計に、大林宣彦監督の尾道三部作を連想した。実際、細田さんがイメージしたのは日暮里か谷中あたりだったというが、奇しくも今回、細田さんの最新作が『時をかける少女』だと聞き、勝手に自分のなかで“魅力的な街並”の再登場を期待してしまっているのだが、果たして……。
[DVD情報]
『ひみつのアッコちゃん 第三期』 コンパクトBOX
発売元:東映アニメーション株式会社 株式会社コムストックオーガニゼーション
販売元:BIG TIME ENTERTAINMENT
価格/1:22000円、2:21000円(全て税込)
発売日/BOX1、2とも発売中
[Amazon]
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