『ピッカリ★ビー』のフィルムは驚くべきことに、各話ごとのオープニング、エンディングがほとんど欠落していたのだった。
私の手許に届いたミニDVのワークテープは、ポジフィルムからテレシネされたものである。その内容を見る限り、オープニングが頭についている話数は1本もなく、エンディングも全53本中、わずか13本のみに現存という状態だった。
もう少し具体的に書くと、13本のエンディングは第30回以降のシリーズ後半(3・4クール)に集中していた。そのなかには、別の回に間違って編集されているフィルムも7本含まれていた。幸い本作のエンディングは、次回予告画面とスタッフクレジット部分が一連の映像として構成されているため、そのフィルムが本来はどの話数につくべきなのかを判断するのは容易だった。また本放映当時、キー局の毎日放送が週ごとに作成した広報資料の記録(ただし初期1クール分のみ)も現存しており、そこに記載された脚本や演出、声の出演のデータも補強材料として役立った。というのも、3・4クールの『ピッカリ★ビー』は、Aパートのみが新作となり、Bパートには1・2クール分のリピートが入るスタイルになっていたからだ。エンディングには、リピート分の脚本や演出のスタッフ名もしっかり表示されるため、シリーズ初期の文字資料を片手に、テロップ内容との照合・吟味を行うことができたのだ。
入れ替え修正作業の結果、『ピッカリ★ビー』の放映プリントに関しては、第30〜34、36〜38、40、44〜47回のエンディングが健在であると判明した。
だが13本という数字は、全話数のちょうど4分の1である。上記の広報資料によって多少の上乗せができるとしても、スタッフワーク全体を把握するには情報が極端に不足していた。これが虫プロ作品のように、アフレコ台本や各話スタッフリストなどがあれば事態は好転するところだが、残念ながら毎日放送の社内には保管されていないとの回答。フィルムのクレジットだけが、最大にして唯一の希望となっていた。
エンディングに焼き込み式で各話クレジットが表示される作品は、1967年当時としては極めて珍しい。ほかには東映動画、東京ムービーの2社のみだったのではあるまいか。各話スタッフの参加実績と、何よりも人名表記を正確に知ることができるという点で、焼き込み式は本当にありがたい物証なのである。それだけに、ほかに39本ものエンディングが行方不明のままである現実に、私はいても立ってもいられなかった。前回書いたとおり、DVD商品の“ウリ”となる著名スタッフの参加状況を知りたいという願いがあったのは言うまでもないが、それ以上に、テロップマニアとしての私の血が騒いだのである。
やはりここは基本に立ち返り、ネガフィルムを調べるべきだ!
毎日放送の担当者は米谷博さんという方だった。テレビ本部事業局ソフトセンター副部長(現在は事業局ソフト企画部・部次長)という肩書きをお持ちなので、きっと社内でも偉くて、相当忙しい人に違いない。だが、そんなことはおかまいなく、私は無理なお願いをした。『ピッカリ★ビー』のネガフィルムの状態を確認してほしい。各話のフィルムにオープニングとエンディングがついているのなら、そのテロップ内容を是非、私にチェックさせてもらいたい。また、念には念を入れ、放映プリントの箱ももう1度調べていただきたい。箱のなかに、別ロールの形で、オープニングやエンディングが残っているかもしれないから……。
DVDのマスターとしては、新たにテレシネをする予算的余裕はない。仮にエンディングの映像が発見されても、それをソフトに追加収録することは難しかった。それでも私は、テロップに出会いたかった。表示内容を調べ、せめて解説書にだけでも記録したいと考えた。読者のために補足しておくと、毎日放送の本社は、私が住んでいる神奈川県からは遠く離れた大阪の地にある。さらに、古いアニメ作品を保管しているライブラリーはその本社から電車で数十分はかかる、千里丘という場所にあった。私と毎日放送との情報交換は、物理的な距離をおいて交わされていたわけだ。そうでなければ、私はすぐにでも現地に飛んでいきたい気分でいっぱいだった。
[DVD情報]
『かみなり坊や ピッカリ★ビー』DVDBOX
発売元:青林堂ビジュアル
販売元:コロムビアミュージックエンタテインメント
価格:52500円(税込)
好評発売中
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