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第9回 2005年後半回想 その2 |
今ごろになって昨年のことを書いているが、世の中はトリノ五輪が無事閉幕、すでに3月である。普段、スポーツ番組を熱心に観るわけではない私だが、オリンピックには不思議と興じてしまい、今回も結構マメにエアチェックした。終盤、荒川静香がフィギュアで見せた美しく舞うような演技の完璧さには、観ていて胸が熱くなった。スルツカヤ、コーエンを相手の大逆転、文句なしの金メダル獲得! 長野の挫折以来8年の長き道のり、その努力と不屈の精神は想像にあまりある。まさに継続は力なり、である。しっかり元気をもらったし、「静香」ちゃんが無敵なのは『ドラえもん』だけじゃない、と実感した。
そうそう、トリノといえば、NHK番組のオープニングを、砂アニメ作家のフェレンク・カーコが手がけているのにはビックリした。それと、聖火台の高さがコン・バトラーVの身長と同じだということも……。「そうか、イタリアの熱心なファンの画策だな」と勝手に納得した(んなわけねーだろ)。
閑話休題。
『かみなり坊や ピッカリ★ビー』DVD―BOXは、『ファイトだ!!ピュー太』『佐武と市 捕物控』に引き続き、青林堂ビジュアルとの仕事だった。『ピュー太』のようなカルト人気のある伝説的作品ではなく、かと言って『佐武と市』のようなメジャー原作&メジャー制作会社による有名作でもない本作は、これまでアニメ史的にも本格的に顧みられたことのないマイナーな存在だ。それが、セレクトではなく全話まるごとDVD化されるのだ。アニメ史研究者としての私はもちろん大歓迎だが、一方で、DVDという商品を扱う構成者・編集者としての自分は、少しでもアピールする要素を増やしたいと悩んだ。それにはまず、携わっているスタッフの全容を把握できることが不可欠だった。基本中の基本として、最低でも各話の脚本と演出のリスト、望むならオープニングとエンディングに焼き込まれているクレジットを、是非とも先に知りたいと思ったのである。
以前、私は『悟空の大冒険』のDVD―BOXで出崎統さんに取材をさせていただいた際、余談として『ピッカリ★ビー』の原画を描いたことがある、という掘り出し情報をお聞きしていた。そのときは、よもや自分がこんなに早く『ピッカリ★ビー』のスタッフ究明に関わるとは予想していなかった。もし出崎参加回が何話であるか明らかになれば、(私を含め)出崎ファンにとっては俄然、『ピッカリ★ビー』に対する興味が増大することになる。ほかにも、『ピュー太』の取材時には倉橋達治、竹内大三、ひこねのりおといった話題のアニメーター諸氏が『ピッカリ★ビー』の演出・作画への参加を証言された。彼らの担当話数の情報もまた、より広いアニメファン層の関心を呼ぶきっかけとしては有効と思われた。
『ピュー太』のとき、映像マスターとして使ったのは本放映プリントだった。にもかかわらずオープニング、エンディングの残存率は高く、欠けていたのは第1話のラスト部分と第20話のみ。毎日放送の保管しているフィルム素材は、それなりに状態がいいのでは? という安心感が私にはあったのだ。ところが、ほどなく私は、厳しい現実に直面することになるのだった。
[DVD情報]
『かみなり坊や ピッカリ★ビー』DVDBOX
発売元:青林堂ビジュアル
販売元:コロムビアミュージックエンタテインメント
価格:52500円(税込)
好評発売中
[Amazon]
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